★2・3はどこまで通用するのか!?
「MARCHまでは日本史の一問一答は★2・3まで覚えていればある程度点が取れる」という意見があります。
たしかに、私たちが指導している生徒たちの合否を見ても、その傾向はかなり強いように感じられます。
しかし、この説は本当なのでしょうか。
実際にMARCHの問題をどの程度カバーしているかを検証している記事は非常に少ないです。
しかも”MARCH”とひとくくりにされますが、大学ごとに、あるいは学部ごとに見ますとかなり傾向が違います。
そこで今回は、過去問を検証し、一問一答の★2・3のカバー率を検証してみたいと思います。
検証の対象となる参考書・過去問
使用する参考書は「東進 日本史B 一問一答」です。
・青山学院大学(全学部)2020年
・立教大学(文系学部)2022年
今回は立教大学、青山学院大学を調査の対象とします。
また、一問一答では正答には至らない問題の対策も提示していきたいと思います。
検証の方法についての詳細・条件
・選択問題について、対象とする語句は回答の選択に必要なものを対象とする。
ーただし、“鎌倉時代”など極端に簡単な語彙は対象としない。また、択一の問題の検査対象語句は適宜調節する。
ーー例えば、4択の場合、すぐに正答にたどりつくものであれば検査対象は1つ、消去法で正答にたどりつくものであれば、その対象を3つとする。あるいは、すべての選択肢が掲載されていない語である場合は正答の語を「“掲載なし”が1つ」などとする。
・史料問題も対象とするが、史料の読み取りのみを問う問題は対象としない。
・小論述(100字以内)は、設問および解答文を構成する語句をその対象とする。
立教大学(文系入試)
まずは立教大学です。
従来からほかの大学よりも学部間の違いが少ない学部なので、文学部系代表として選ばせてもらいました。
カトリック系の大学で、池袋という立地のよさも相まって非常に高い人気を誇ります。特に異文化コミュニケーション学部は、明治大学の政治経済学部にならんでMARCHのトップの難易度に君臨します。
調査結果
問1
★★★ | 29 |
★★ | 10 |
★ | 6 |
★なし | 1 |
掲載なし | 1 |
合計 | 47 |
問2
★★★ | 25 |
★★ | 12 |
★ | 8 |
★なし | 1 |
掲載なし | 6 |
合計 | 53 |
解答に絡む、掲載なし語句の例:東京電燈会社・「細雪」など
「細雪」が掲載されていないのは、意外でした。
これは日本史で習う用語というよりも、国語の文学史で扱われる用語ですので、そこで学習するようにしましょう。
分析
正誤問題が多いため、調査対象となる語数が非常に多くなりました。
基本的な語句で問題が構成されているため、掲載なしの問題でも十分に答えにたどりつく印象です。
語句やその内容だけでは正答にたどりつかない…
適切に勉強することを要求している、特徴的な問題を紹介します。
問.鎌倉時代の交通・経済について正しいものを選べ
A.京都への輸送路では土倉という運送業者が活躍した
B.金融業者である借上らは荘園の代官にも任命された
C.銭の通用価値を公定するために撰銭令が出された
D.月に六度の市を開く六斎市が一般化した
この問題の答えはBの「金融業者である借上らは荘園の代官にも任命された」です。
しかし、多くの受験生がこの選択肢を選ぶことを躊躇するはずです。
”借上が荘園の代官に任命されたか”がわからないためです。
ですが、土倉・撰銭令・六斎市は室町時代の用語です。
時代が違うので、消去法でBを選択することができます。
つまり、語句の内容で判断するのではなく、この問題は用語の時期で判断する問題です。
このあとにも何度も同じことを問うてるため、立教大学は「語句の時代を把握している」ということを強く要求していると考えられます。
青山学院大学(全学部)
センター試験が終わり、共通テストが始まってから入試の形式が大幅に変わった大学の一つです。
従来からの「おしゃれな大学」というブランドイメージ、渋谷という好立地、さらに最近は駅伝の強豪校となったのもあり、MARCHの中でも高い人気があります。一方で特殊な入試形式に忌避感を表す受験生も少なくないため、従来と変わらない形式の全学部入試は多くの学部で非常に高い競争率をほこります。
調査結果
問1
★★★ | 5 |
★★ | 3 |
★ | 3 |
★なし | 6 |
掲載なし | 7 |
合計 | 22 |
問2
★★★ | 8 |
★★ | 6 |
★ | 6 |
★なし | 1 |
掲載なし | 1 |
合計 | 22 |
問3
★★★ | 9 |
★★ | 5 |
★ | |
★なし | |
掲載なし | 2 |
合計 | 16 |
解答に絡む、掲載なしの語句の例:綿貫観音山古墳、山王霊験記 など
分析
かなり厳しい結果となりました。
特に問1は用語のレベルがかなり高い問題ばかりです。
また語句そのものは★3で掲載されているものの、正答にたどり着くのがほとんど不可能な問題も多く出題されています。
加えて、一見、問3の近代史は語句レベルが低いように見えますが、解答不能な問題が多く含まれています。
さすがに検証を行った2020年の問題は難しすぎるので、得点の調整が行われたかもしれません。
"用語レベル"は低い問題も…
用語は簡単でも正答にたどりつくのが難しい問題の一例を挙げます。
近代史の「広田弘毅について正しいものを選べ」という問題です。
正解は「初めて外務大臣を務めた内閣は政党内閣ではなかった」なのですが、広田が初めて“外務大臣を務めたのが斎藤内閣”というのは、ほとんどの受験生がもつ知識ではありません。
このように“広田弘毅”という単語そのものは難しくないのですが、選択肢の内容が難しく、消去法も使いづらい問題が出題されています。
一問一答以外の教材で正解できる問題!
一方、一問一答には掲載がないものの、ほかの教材を使えば正答にたどりつく問題も少なからずありました。
例えば“ポッピンを吹く女”は一問一答にはないものの、資料集には必ず掲載されている絵画です。
同様に一遍上人絵伝が“福岡の市”であることも一問一答には載っていませんでしたが、資料集では定番です。
先ほどの立教大学でも、一問一答には書かれていないものの、地図がわかれば解ける問題がありました。
一問一答だけではなく、資料集を併用し、地図、絵画、建築などは逐一確認するのが合格を目指すうえで必要であることがわかります。
まとめ!
いかがでしたでしょうか。
大学によっては難度の高い語句を要求することや、資料集などの併用が必要性だと分かったと思います。
さらに、知識を有機的に結びつけることと、史料の知識も要求されています。
やみくもに一問一答をやりこみ、
仮にすべての語句を暗記したとしても合格には至らないのです。
自身の志望する大学の過去問を正しく観察し、
正しく対策ができるよう心掛けましょう。