ノート活用法
こんにちは、武田塾講師の石川です。
今回は自習ノートの活用法についての記事を書きたいと思います。
数学の勉強は誰でも、まずノートに自分の解答を書き出すことから始まると思います。
このノートは、みなさんが普段どのように学習をしているかを明瞭に物語ってくれるという意味で、
個別の問題に対する理解度を測るのみならず、自身の学習法全体の見直しに欠かせない媒体です。
このノートを活用するにあたって、塾生の中の大多数が、「どのように書けばいいのかわからない」、もしくは「継続してノート作成をすることができない」などの声に代表されるように、
ノート活用の一般的方法に対して関心が高いようです。ノートの重要性から鑑みれば当然といってよいでしょう。
ところがこのノート活用にもいくつか落とし穴があります。その典型例が「ノート作成そのものを目的としてしまうこと」でしょう。
このようなケースでは綿密なノート作成それ自体が目標になってしまうので、真の目標である「どうやってできないことをできるに変えるのか」を達成するために割く労力が不足してしまいます。
落とし穴の第二の例としては間違えた方法でノートを使い続けてしまうことです。
武田塾の塾生で特訓を受けていれば、担当講師の直接の確認が入るためこの問題は起こりにくいのですが、塾生でない方や、塾生であっても特訓を受けないコースに入っている方は、このような問題が潜在化してしまう危険があります。
以上のような現状を踏まえて、武田塾天王寺校のこのブログ上で、ノート活用の方法、またノート作成の実際例をシェアしていきたいと思います。
自習の効果を高めるステップをノート作成に取り込む
自習の効果とは、どれくらい「できない」をつぶせるかで決まります。
以前できなかったことが今できるようになっていれば、自習の効果が出ているということです。
このためには、「今できないこと」を明確に把握することが欠かせないステップとなります。
できないことが把握できたら、次にこれを克服するにはなにをできるようにすればいいかを突き止める段階に入ります。
これには解説を熟読したり、講師や先生に質問するなど、いくつかの解決方法が存在しますが、それが主題の記事ではないので、仮にそれが突き止められたとしましょう。
そのときは次の段階として、自分ができなかったことをできるようにするための「解きなおし」に入ります。この徹底が知識・技術の会得を確実なものにします。
以上の三段階は、要約すると
1 弱点の発見
2 弱点の解決法の究明
3 解きなおしによる定着
のようになるでしょう。
では第一のステップ「弱点の発見」をするにはどうすればいいのかというと、
ここにノートへの答案の作成という前段階が入ってくるのです。
このステップで自分の思考過程をいかに文字としてアウトプットするかで、その後の三段階の質が決まると言ってもいいでしょう。
以上のような一連の流れを手際よくこなすのに、ノートの活用は欠かせません。そこで次に、典型的なノートがどのように構成されているかをみていきます。
ノートの構成例
ノートを使って自習するうえでの注意点
ここでは数学の参考書を進めていく上でのノート活用の例を具体的に見ていきます。
まずノート作成をする上で注意しなければならない点をまとめておきます。
1 開始時間と終了時間
何時に始めて何時に数学の勉強を終えたかをノートの上端に明記しておきましょう。
これによってどれくらいの時間が数学に確保できているか定量化できると同時に、コンスタントに毎日自習時間を割けているかを判断できます。
2 答案
問題に対する自分の解答を書きます。ここではなるべく自分の考えを文字にして起こすところを意識しましょう。
このステップが後の答え合わせでの弱点究明に役立ちます。
3 できる問題・できない問題の仕分け
参考書の説明とていねいに比較し、できている問題にそれとわかるチェックをします。
4 修得すべき事項の列挙
解説と自分の答案を照らし合わせて、なにが原因でその問題が完答できなかったかを突き止めます。
ここで注意してほしいことは、よく解説を丸写しする人がいることです。
それは表面的には勉強をしている感じが出るかもしれませんが、できないことができるようになるには効果が薄いでしょう。
ここでしてほしいことは、「何ができればその問題を完答できるか」を探し出すことです。
そしてできれば自分なりの回答を端的にノートにメモしておきましょう。
完答できない問題でもその原因は実は局所的なものであることが多いのです。
つまり正答できなかったからといってその問題の全体が理解できていないのではなく、その問題を解くうえでの肝となるポイントがいくつか抜け落ちているだけなのです。
これさえおさえればあとは自動的に出てくる、そういう視点で自分の問題点を探れば、実力をつけるための必要最低限なエッセンスを抽出できます。
5 解きなおし
何ができていなかったかを突き止められたら、次にその日のうちに解きなおしをします。
前のステップで抽出したポイントを意識しながらもう一度答案を作成し、理解度を定着させます。
できれば直後のみでなく時間を空けて再び解きなおしをしましょう。
ここで注意する点は、必要以上の解きなおしをしないということです。自分ができていると判断できた部分は解きなおしをしても無駄な時間を使うだけです。確認が必要な部分のみを効率よく復習するためにも、答え合わせのときの弱点の分析が重要なのです。
正答でき、かつ改善の余地もない場合
まず完答できた場合についてです。ノート作成の例は以下のリンクをタップしてください。
問題出典:基礎問題精講IA, 問題127
解法に問題がなく、記述にも不備がない場合に該当します。
i) 自分の記述のここまでは合っている、という赤いチェック「」」に注意しましょう。これによってどこから問題点があるかが明瞭になり、間違いを発見しやすくなります。
ii) 記述に関しても、自分の考えを極力言葉にしましょう。こうすることで間違えたときも何が原因か分析が容易になります。
iii) 各小問ごとにできているというチェック印「レ」があります。これによってできている問題とできていない問題の仕分けを明瞭にしています。
iv) 問題を視覚的に整理するために、図などを活用している点は数学において重要な思考プロセスです。できれば真似していきましょう。
正答できたが、よりうまい解法がある場合
次によりうまい解法がある場合の作成例です。詳細は下のリンクをタップしてください。
問題出典:入試の核心(数学)標準編, 問題135
答案自体は問題はないのですが、答え合わせをした結果、ずっと簡単に問題の後半を処理することができたという状況です。
i) この場合も、答え合わせのあとに、何が改善できてどこまでが問題ないのかを赤色のメモで考察していることに注意してください。
ii) その日のうちに問題の解きなおしをしていることにも留意。このときはもちろん前にした反省を生かした答案作りをしています。
iii) 図を答案の一部に積極的に取り込んでいる点、増減表の書き方、また問題の途中で行き詰ったときどのように突破口を見出すかなど、問題考察に重要なメモも載せてありますので、問題が理解できる人は詳細を分析することをおすすめします。
部分的に誤答した場合
次は問題を部分的に誤答した点です。詳細は以下のリンクをタップしてください。
問題出典:基礎問題精講IIB, 問題95
問題の途中で解き方がわからず頓挫した例です。この例の場合は三次方程式が実数解をちょうど二つもつ条件が出てこずに失敗したものです。
i) 答え合わせをすることで、実は前の問題(94)のポイントでこの事項の説明がなされていたことに気付き修正したという流れです。このように、基礎問題精講は精講やポイントに問題への対応の一般的方法が載っているので、普段から十分この部分に目を通すことをすすめます。
ii) この例では、自分の中に浮かんだ質問をことばにし、先生に質問して得た回答を自分なりにまとめた部分も載せてあります。このように、質問をしてその場で理解しただけで終わらず、その後に自分なりに噛み砕いてまとめておくと定着効率があがります。
iii) 小問1の答え方に関して、答えそのものは合っていても整理して提示していなかった場合は「△」マークを小問に付しています。解説との比較をていねいにし、満点をとるのに支障がある部分はできるだけ排除しています。
iv) 小問2が破綻してしまっていても、そのあとの問題は2が解ければ解けるという部分まで考察しています。こうすることで、本当に自分に足りない部分だけを潰していくことが可能になります。
手が出なかった場合
最後は手が出なかった問題です。
問題出典:基礎問題精講IIB, 問題63
三角方程式に変数が二つある問題です。このように手が出なかった問題にどのように対処するかは個人差があると思います。ここでは解法の手順をまとめていくというスタイルを紹介します。
i) この問題の場合はどのようにして解けばよいかの一般的手順が解説に載っていません。そこでその部分を自分なりに抽出してメモしています。
ii) 同時に質問をして講師の回答をまとめた部分もあります。この例では講師の回答によってより一般的な問題への対処の仕方が得られたという例になっています。
iii) 解きなおしをするのはもちろんですが、この例では演習問題まで解いて自分の抽出した解法の手順がうまくいくことを確認しています。このように、問題の傾向が少し変わったあとでも同じように解けるのかをチェックするのに、演習問題の利用は重要です。
総括 自習の質は弱点の把握で決まる
以上、ノートの活用法について説明してきましたが、大切なことは、自分の弱点を把握しそれをつぶす努力をするということです。
それを効率化し、習慣化するのにノート活用が役に立つということなのです。
人によっては必ずしもノートの活用が性に合っていないということもあると思います。
その場合でも、上に述べた「弱点をつぶす」ことを心がけていれば、実力は着実に伸びていくでしょう。
今後の自習では普段よりもう少し、自分の弱いところの把握に時間をかけてみてください。学習の効果がそれによって飛躍的に上昇するはずです。
最後に
今年もたくさんの生徒が逆転合格を果たし、新たな一歩を踏み出しました。
受験を通して、生徒一人一人が自分と向き合い成長してくれた結果です。
そんな生徒達を応援し続けることが出来てとても嬉しく思います。
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