こんにちは、武田塾 神戸三宮校の副校舎長 川口(現 岡本校 校舎長)です。ここ最近は、システムエンジニアや農業に関する記事を書いてきました。もう読んでくれましたか?
様々な分野に広がる先端技術
農業の将来性に関して、科学技術の発展による生産性の向上といった話題を取り上げました。こういった取り組みは農業×ITを意味する造語で「アグリテック」と呼ばれたりします。
こういった「○○テック」という造語はいろんな業種に広がっています。
フィンテック (金融)
アグリテック (農業)
メドテック (医療)
エデュテック (教育)
コンテック (建設)
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などなど。
このように、センサー、ビッグデータ、機械学習(人工知能)、高速通信、仮想現実(VR)、といった先端テクノロジーが様々な業界を変えようとしています。今回はこのうち、建設業に焦点を当ててみたいと思います。まずは「コンテック」という観点で建設業を見た上で、関連する企業の紹介、神戸市近隣で建築学関係を学べる大学の紹介、を順に行なっていきます。
建設業の現状と将来性
建設業の現状
建設業の市場規模は自動車産業に次いで第2位の50兆円超です。かつて平成の初期には80兆円超といった時期もありました。現在は2020年東京オリンピック・パラリンピックの特需も落ち着いてきた頃でしょうか。建築系の学科や都市工学系の学科を考えている受験生にとっては、今後の動向が気になるところでしょう。
しかしこの建設業も、前回取り上げた農業と同様、労働者の減少が問題となっています。現在、技能労働者は約340万人いると言われますが、今後10年間で約110万人が高齢化等により離職する可能性があり、労働力不足が深刻です。先端テクノロジーの出番ですね!
建設業の将来性
さて、そのような問題を抱えた建設業に将来性はあるのでしょうか。今回は国策に注目してみましょう。国土交通省のホームページを見てみると、次のような取り組みを行っているようです。
国土交通省では、「ICTの全面的な活用(ICT土工)」等の施策を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図り、もって魅力ある建設現場を目指す取組であるi-Construction(アイ・コンストラクション)を進めています。(国土交通省のホームページより)
この「i-Construction」では、「全ての建設生産プロセスでICTや3次元データ等を活用し、2025年までに建設現場の生産性2割向上を目指す。」という目標を掲げているようです。
そもそも建設生産は、調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新といった工程に分けて行います。以前、システムエンジニアの仕事としてお伝えした内容と、すごく似ていますね。
まず初めの調査・測量の段階から全ての工程において、3次元データ等を導入していきます。つまり、ドローンやレーザースキャナといった装置で地形を測量し、コンピュータを使用して設計や製図をするシステムであるCADも3次元CADを使用して設計します。こうして今まで人の手で重機などを動かしていたものが、3次元データを用いたコンピュータ制御のICT建機などの新技術を活用できるようになっていきます。
建設業といえば3Kの「きつい」「危険」「汚い」というイメージがまだまだあるかと思います。しかし、こういった「ICT土工」が進めば、そのような3Kのイメージも変わってくるでしょう。
「ICT土工」をやっている企業
では「ICT土工」をやっている企業をピックアップして見ていきましょう。
株式会社シーティーエス
まずは、株式会社シーティーエスです。この会社は測量・計測機器の販売やレンタルを行う一方で、3D計測業務やデータ作成業務の代行も行っています。ドローンや3Dスキャナなどを用いて測量、検査を行う様子はまさに3Kのイメージを一新させます。
福井コンピュータホールディングス株式会社
次は、福井コンピュータホールディングス株式会社です。もともとCADの開発・販売が主な事業の会社です。近年は先端技術を取り入れながら、「TREND-ONE」という測量CADシステムで測量の支援事業や、「TREND-POINT」という3D点群処理システムで3次元データを活用した公共工事の支援事業などを行っています。
応用技術株式会社
最後に、応用技術株式会社です。こちらは本社が大阪にあります。CADのシステムや建築・土木のシステム開発や支援を行っているだけでなく、防災・減災や生活環境、自然環境のシミュレーションやコンサルタントなど幅広い分野で事業を行っています。
建築・デザイン系が学べる大学
兵庫県内で建築・デザイン系が学べる大学は、国立1校、公立1校、私立4校の計6校あります。ちなみに、建設業の仕事に就くにあたって、建築・デザイン系で学んだ経験は多分に活かせると思いますが、文系や他の学部・学科出身であっても問題ありません。文学部で哲学を専攻していて、大手ゼネコンに就職した知り合いもいます。
神戸市近隣(兵庫県)の建築学が学べる大学
- 神戸大学 工学部 建築学科・市民工学科 (六甲台第2キャンパス)
- 兵庫県立大学 環境人間学部 環境人間学科 環境デザイン系 (姫路環境人間キャンパス)
- 関西学院大学 総合政策学部 都市政策学科 (神戸三田キャンパス)
- 武庫川女子大学 生活環境学部 生活環境学科・建築学科 (上甲子園キャンパス)
- 大手前大学 メディア・芸術学部 建築コース (いたみ稲野キャンパス、さくら夙川キャンパス)
- 神戸芸術工科大学 芸術工学部 環境デザイン学科 (学園都市)
神戸大学 工学部 建築学科・市民工学科
六甲台第2キャンパス
兵庫県立大学 環境人間学部 環境人間学科 環境デザイン系
姫路環境人間キャンパス
関西学院大学 総合政策学部 都市政策学科
神戸三田キャンパス
建築学部を2021年4月設置構想中
武庫川女子大学 生活環境学部 生活環境学科・建築学科
上甲子園キャンパス
大手前大学 メディア・芸術学部 建築コース
1年次 いたみ稲野キャンパス
2~4年次 さくら夙川キャンパス
神戸芸術工科大学 芸術工学部 環境デザイン学科
学園都市
今更だけど建築学って何を学ぶの?
まず、建築学とひとことで言ってもいくつかの学問分野にまたがっていると思いますので、整理しておきましょう。
まず、みなさんが一番初めに思いつくのは工学系の建築工学、土木工学ではないでしょうか。建造物を構造や材料などの側面から研究したり、都市の道路、河川、上・下水道、港湾、交通、エネルギーなどのインフラを整備するための技術を研究します。
また、建築物や都市のデザインについて、芸術・文化的な観点から研究する場合もあるでしょう。あるいは、建築物や都市の制度や経済といった政治学、政策科学的なアプローチで研究したり、家政学の一つとして快適性や機能性・デザイン性を追求するような住居学もあります。
このように工学的、人文科学的、社会学的、家政学的と幅広く分布する建築学ですが、大学ではこれら単独で学ぶわけではなく、いくつかの分野にまたがった形で学んでいくことが多いようです。このように見ると、兵庫県内には一通りの選択肢は用意されているなと感じます。
実際どんなふうに学ぶの?
例えば、神戸大学では、工学部なので工学的な側面は強いものの、建築学科では「工学及び人文・社会・芸術の諸領域にまたがった教養・専門基礎教育」を取り入れていたり、市民工学科では「土木工学を基盤としつつ安全・安心で環境に調和した市民社会の創成のための基礎的な教育と研究」を行うことを掲げています。
上に挙げた他の大学も、基本的にはそれぞれの分野にベースを置いていますが、どの大学も複合的・総合的に学ぶことを掲げています。ベースとなる分野を決めつつも、最終的には総合的に学ぶという意識が大切だと思います。
まとめ
業界、企業、大学と順に見てみましたが、いかがでしたでしょうか。「3Kのイメージが強くて建設業に興味が持てなかったけど、案外おもしろそうだな~。」、「建築学って工学分野だと思っていたけど、実は広い分野にまたがっているんだ!」と少しでも気付きがあったなら幸いです。
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