みなさんこんにちは!武田塾佐賀校の本多です!
今回は2022年1月16日に行われた共通テスト生物の解説を行いたいと思います。
これは大問3の解説になります。
他の大問の解説はこちら
武田塾佐賀校 2022年度共通テスト生物 第1問の解き方と解説
武田塾佐賀校 2022年度共通テスト生物 第2問の解き方と解説
かなり丁寧に解説を行い、その周辺知識も確認しているので、
「なんとなく勘で書いたら当たっていた」という人にもぜひ読んでいただきたいと思います!
もくじ
問1 Hox遺伝子
この問題は知識問題になります。
そもそもHox遺伝子が何なのかということも含めて解説していこうと思います。
Hox遺伝子とは
Hox遺伝子とは、動物の体が形作られるときに働く遺伝子のことです。
ホックス遺伝子という調節遺伝子は、分節遺伝子によって形成された体節が、頭・胸・腹のどの部位になるかを決める。ホックス遺伝子に突然変異が起こると、体のある部位だけが別の部位に換わる突然変異体となる。 東京書籍 New Global |
似たような単語で、ホメオティック遺伝子があります。
ホメオティック遺伝子とは、ホメオティック突然変異を起こす遺伝子のことを言います。
結局、Hox遺伝子とホメオティック遺伝子の違いは何かというと
Hox遺伝子は形態形成に関係した遺伝子の総称であり、ホメオティック遺伝子はHox遺伝子の部分集合だと言えます。
そのため、問題でホメオティック遺伝子と答えるところを「Hox遺伝子」と答えても問題はありません。
選択肢a~dの解説
a 核に移動してDNAに結合するたんぱく質の遺伝子である。 |
Hox遺伝子は調節遺伝子の一種です。
Hox遺伝子がコードするたんぱく質は
リボソームで合成 →核内に移動 →DNAの転写調節領域に結合 →形態形成に関与する遺伝子の発現調節にはたらく |
という流れになります。
よってこの選択肢は正しいです。
b 連鎖している遺伝子群である。 |
Hox遺伝子は連鎖遺伝子群です。
よってこれは正しいです。
ちなみに、遺伝子の分野でよく聞く、この「連鎖」とは
生物の二つ以上のそれぞれ別の形質を支配する遺伝子が同一染色体上にあって、それらの形質または遺伝子が相伴って子孫に伝えられること
を言います。
c 母性効果遺伝子である。 |
母性効果遺伝子とは、母親の体内で合成され、卵内で働く遺伝子のことです。
Hox遺伝子はこれではないので間違いです。
高校生物で出てくる母性効果遺伝子は、ビコイド遺伝子、ナノス遺伝子ではないでしょうか。
これらそれぞれのmRNAの濃度勾配により、ショウジョウバエの体の前後軸が決定されます。
これら二つを覚えておきましょう。
d バージェス動物群はまだ持っていなかったと考えられる遺伝子である。 |
バージェス動物群は、古生代カンブリア紀に生息した動物群です。
これには旧口動物も新口動物も存在します。
上にあるように、Hox遺伝子は動物の体が形作られるときに働く遺伝子です。
これは旧口動物と新口動物が分岐する前から存在しています。
そのため、バージェス動物群もHox遺伝子は持っていたと考えられます。
よって、この選択肢は間違いです。
問2 外胚葉と中胚葉の相互作用
選択肢eについて
会話文のヒデオの言葉に「同じ鳥類でも、Hox遺伝子の発現の場所が異なることで翼が生える位置が変わる…」
というのがあります。
このことから、体のどこに肢芽を発生させるか決めているのはHox遺伝子だということが分かります。
また、実験3で
・前方の肢芽の側板由来の細胞から調節たんぱく質Xが合成されていること
・脇腹の中間に形成させた肢芽に調節たんぱく質Xを発現させると翼に分化したこと
この二つから側板由来の細胞(中胚葉)がHox遺伝子を発現していることが分かります。
選択肢fについて
実験1で、肢芽の表皮を除去すると肢芽の伸長が停止します。
このことから、肢芽の伸長を支えているのは表皮(外胚葉)だということが分かります。
また実験2で、肢芽を形成しないはずの脇腹の表皮の下に、肢芽の表皮から分泌されるたんぱく質Wを沁み込ませた微小なビーズを埋め込むと新たな肢芽が分化しました。
これら二つのことから、肢芽の形成を支えているのは表皮(外胚葉)だということが分かります。
選択肢gについて
実験3で、
・前方の肢芽の側板由来の細胞から調節たんぱく質Xが合成されていること
・脇腹の中間に形成させた肢芽に調節たんぱく質Xを発現させると翼に分化したこと
この二つのことから、体の前方の肢芽が翼を形成することを決めているのは側板由来の細胞(中胚葉)だと考えられる。
答え
以上のことから、正しい選択肢はeとfとなり、答えは④になります。
問3 適切な語彙選択
問3は何を確かめるための実験の会話は以下の通りです。
それを証明するためには、調節たんぱく質Xの遺伝子を、ニワトリのからだの( ア )の肢芽で( イ )、その部位で( ウ )が( エ )ことを確かめればいいんじゃないかな。 |
つまり、からだの前方の肢芽に翼が形成される仕組みに、調節たんぱく質Xは必要か否か
これを確かめるための実験についてです。
証明されるための実験
これを証明するには、
・調節たんぱく質Xのみがはたらいている時に翼が形成される
・調節たんぱく質Xが働いていないと翼が形成されない
このどちらかの結果が得られればいいわけです。
どちらの実験か
上のどちらかの実験を証明すればいいのですが
証明すべきは「調節たんぱく質Xが働いていないと翼が形成されない」になります。
なぜかというと、与えられた問題文に「調節たんぱく質Xのみ」などといった記述がないからです。
調節たんぱく質Xがからだの前方の肢芽で働かなければ、翼が得られない
という結果が得られればいいです。
つまり、文章の空欄に当てはまるのは
ニワトリのからだの( 前方 )の肢芽で( 働かないようにして )、その部位で( 翼 )が( できない )ことを確かめればいいんじゃないかな。 |
というようになります。
よって答えは②です。
問4 調査方法
細胞分裂
問題文より、細胞分裂が行われるということは、必ずDNAの合成も行われます。
DNAの入っていない細胞は存在しません。
つまり選択肢の中で、DNAの合成の際に必ず取り込まれるものを選べばいいということです。
この時点で、①メチオニンと④アセチルCoAはなくなります。
①メチオニンはアミノ酸の一種で、DNAの合成には必要ありません。
出てくるのはDNAからのたんぱく質合成の時です。
④アセチルCoAは呼吸で出てくる用語です。
呼吸のアミノ酸回路でピルビン酸が脱炭酸酵素の働きによって、アセチルCoAになります。
DNAの合成
たまにDNAの合成とタンパク質合成が混乱している人がいます。
先にDNA合成について説明した後に、補足としてタンパク質合成についても説明しようと思います。
DNAの合成は
二本鎖がほどける →鋳型鎖の塩基に対して相補的な塩基を持つヌクレオチドが結合する →DNAポリメラーゼによってヌクレオチド同士が結合して一本鎖になる |
といったシンプルな流れです。
これが半保存的複製ですね。
この問題では、ここについて問われるためRNAなどは関係がなく、答えは③になります。
タンパク質合成
タンパク質合成の流れは以下の通りです。
DNAの特定のらせん構造がほどける →そこにRNAポリメラーゼがプロモーター領域に結合する →鋳型DNA鎖に相補的なRNAの塩基が結合し(A、U、G、C)、RNAの一本鎖が出来る(転写) →スプライシングされ、mRNAとなる →リボソームはmRNAに相補的な塩基配列(アンチコドン)を持ったtRNAと結合させる →tRNAはそのアンチコドンごとに特定のアミノ酸と結合しており、アミノ酸同士が結合すると離れる →コドンがアミノ酸配列に置き換えられたタンパク質合成が合成される(翻訳) |
タンパク質合成はこのように、DNA合成に比べて複雑な過程があります。
まとめると
DNA ↓ 転写・スプライシング mRNA ↓ 翻訳 タンパク質 |
といった流れです。
選択肢②のウラシルを含むRNAのヌクレオチドは、上の転写のところで出てきます。
今回の問題ではタンパク質が合成されるわけではないので、この選択肢は間違いになります。
さいごに
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
この第3問は遺伝情報と発生に関する重要な問題が詰まっていました。
ぜひ、マスターしてほしいと思います!
この記事がこれからの受験生の役に立てば嬉しいです。
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