こんにちは、武田塾佐賀校の出口です。今回はいつも以上に難しい話。
この2週間で、共通テストを巡る動きに大きな変化がありました。
それは「2021年7月30日、【英語民間試験】が文部科学省から発表された」というニュース。
(※同時に記述式の導入断念も発表されています)
これから英検は入試に必要なくなるのでしょうか?
目次
1.そもそも「英語民間試験」とは何だったか
原因の一端は、2015年の文部科学省の会議にさかのぼります。
その会議では、いかに日本の高校・大学の英語教育がダメか、様々な点から論じられました。
国立大学の2次試験は、多くの大学が翻訳や日本語の論述を中心とした問題を出題しています。指導する側としては、(中略)、翻訳や論述のの勉強ばかりやるんです。試験の偏りが、偏った指導をすることに言い訳を与えているんです。(文部科学省, 2015, 太字強調は引用者、誤字は原文ママ)
大学入試がダメだから、高校で教える英語もダメ。
だから今までの大学入試をやめて、英検を大学入試にしよう!
英語の資格・検定試験、やはりノウハウが蓄積されているということで、活用すべきではないかということがまず大前提としてございますけれども(文部科学省, 2015, 太字強調は引用者)
こうして、大学入試に「英語民間試験」が取り入れられました。
大学入学者選抜においても、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能を適切に評価するため、(中略)資格・検定試験を活用する。(文部科学省, 2017, 強調・注釈は引用者)
しかし、2021年7月30日、この英語民間試験の導入の「断念」が発表されたのです。
この計画に何が起こったのでしょうか?
2.英語民間試験を断念した理由
以上述べたあまりにも多くの問題点があるので、英語民間試験の導入は、延期すべきではありませんか。政府の見解を示して下さい。(衆議院, 2019)
文科省が英検などの導入について、変更を行った理由。
語弊を恐れずに言えば、英検を始めとする「英語民間試験は、誰もが気軽に受けられるものではない」から。
その際,家庭環境や居住地域により,資格・検定試験等を受検することの負担が大きい入学志願者の受験機会の公平性・公正性の確保に当たっては,(以下略) (文部科学省, 2021c)
まず、英語民間試験は、費用がかかります。
受験が1回だけならいざしらず。
練習用に事前に1回、下の級を取るためにさらに1回、参考書も購入して……となると、
トータルで3万~10万は覚悟しておいたほうが良いでしょう。
受験料 | 受験地 | 主な目的 | |
英検(実用英語技能検定) |
10,700円 |
全都道府県 |
幅広い場面での英語力の確認 |
GTEC |
9,900円 | 全都道府県 | 実生活の場面での英語力の確認 |
IELTS |
25,380円 | 9~10地区 |
海外留学/研修/海外移住申請 |
TEAP |
15,000円 | 全都道府県 | 大学での生活や研究 |
TOEFL |
$245.00 | 10地区 | 留学 |
ケンブリッジ英語検定 |
\21,850 (First[B2レベル]) |
10地区 | 実生活 |
加えて、英語民間試験は場所や時間を選びます。
受験地に行くための、旅費や時間。
それらも加味すると、受験料以上の負担が生徒にあります。
(都市から離れれば離れるほど、負担は増大します)
3.文部科学省はあきらめていない
このような状況もあり、文部科学省は導入を「断念」しました。
しかし、「文部科学省は英語民間試験を受けなくてよい」と言っているのではありません。
例えば,学部等同一の募集単位において,資格・検定試験等の結果を利用しない募集区分の設定や,個別学力検査の成績と資格・検定試験等の結果のいずれか有利となる方を選択的に利用することなどの措置を講じることが望ましい。(文部科学省, 2021c)
あくまで「受けなくてもどうにかなる」仕組みを作るだけ。
現に、「英検○級で共通テスト○割換算」のように、資格試験利用を表明する大学が多数あります。
ですから、本記事のタイトル「英語民間試験断念、本当に大学入試に英検は必要ない?」に対するアンサーはこうなります。
「全ての大学で必須」とはならなくなっただけで、採用している大学は多数ある
取得できるなら、取得しておいた方が有利になる可能性は高い!
4.英語の資格試験、取る?取らない?
英検は、取れるなら取っておいた方が良いです。
しかし、取れないなら無理に目指す必要はありません。
資格試験(例:英検)を受けないほうが良いケースをいくつか挙げてみましょう。
① 大学受験で使わない 今年度受験予定で、志望校が英検などを使わない場合は、そもそも取る必要がありません。 8~9月で多くの大学が「自分の大学の入試で、英語の資格試験を取るメリットがあるか」を公表します。 この記事を読んでいる時点で、志望校の入試要項を読んだことのない場合は、 今すぐ一読することをおススメします。 ② スピーキング等、苦手な技能がある 「話す・聞く・書く・読む」すべてにおいて、ある程度出来ること。 これが英検を受験する際の前提条件になります。 例えば英検では、自由英作文を全く書けないと、不合格となります。 どこかに致命的な苦手があれば、英検対策よりも基礎基本を見直しましょう。 ③ 英語が苦手 英検はちょっとやそっとの対策では、良い結果は出ません。 膨大な数の単語を覚え、長文を素早く読めるようにして、ライティングの型を作って、リスニングを繰り返して……。 良い結果が出るか分からないなら、入試に必要な科目の基礎基本を見直したほうが、受験にはプラスに働くでしょう。 |
5.それでも英検を受けるなら
これまでもこれからも、大学受験において、英検などを受験するメリットが大きいのは事実。
短時間で対策が必要なら「武田塾」がおすすめです。
気になる方は無料の受験相談へ。
英検1級を所持する校舎長が、受験相談を担当します!
共通テストシリーズ(概論)
共通テストシリーズ(各教科)
【政治・経済】共通テストになって何が変わったの?【受験生必見】
【共通テスト】英語民間試験断念、本当に大学入試に英検は必要ない?【あと23週】
勉強法
【総集編】勉強の習慣の付け方 勉強の習慣化のコツってあるの?
【共通テスト】記憶の仕組みを活かした、効率の良い夏休みの勉強法【あと25週】
=================
参考・引用文献等
衆議院(2017)「英語民間試験は公平性が確保されていないため実施を延期すべきこと等に関する質問主意書」
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a200024.htm 2021年8月7日アクセス
文部科学省(2015)「英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会(第2回) 議事録」https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/106/gijiroku/002.htm 2021年8月7日アクセス
文部科学省(2017)「大学入学共通テスト実施方針」https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/10/24/1397731_001.pdf 2021年8月7日アクセス
文部科学省(2018)「【外国語編 英語編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説」https://www.mext.go.jp/content/1407073_09_1_2.pdf 2021年8月7日アクセス
文部科学省(2021a)「令和4年度大学入学者選抜実施要項について(通知)https://www.mext.go.jp/content/20210604-mxt_daigakuc02-000005144_1_1.pdf
文部科学省(2021b)「令和4年度大学入学者選抜実施要項について」p.5 URL: https://www.mext.go.jp/content/20210604-mxt_daigakuc02-000005144_1_1.pdf 2021年8月7日アクセス
文部科学省(2021c)「令和7年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告」URL:https://www.mext.go.jp/content/20210729-mxt_daigakuc02-000005144_3.pdf 2021年8月7日アクセス