こんにちは、武田塾中山校の朝重です。
来年度、つまり2022年度より、学習指導要領が改訂され、高校でも教育の新課程への変更が進んでいきます。
共通テストが始まり、高度な情報社会の中でリモートで社会が回っていく様子を目の当たりにしながら生きる我々にとって、新しい教育の形の意味を理解することは非常に重要です。
今回は、学習指導要領が具体的にどのように改訂されるのか、そしてそれに伴い、社会はどういう人材を求めているのか、という話をさせていただこうと思います。
ただ、結構長い内容になるので、このテーマは前編と後編に分けて投稿していくこととします。
本記事は前編ですね。前編では、学習指導要領が何なのか、そして改訂の基本的な方針と、一部科目(国語・社会)の具体的な改訂内容をお伝えします!
学習指導要領とは
そもそも、学習指導要領とは何なのかという話ですね。
すでにわかっているという方もいらっしゃるかとは思いますので、大まかな説明をしますと、
文部科学省から全国の学校に向けて出される、各学年・コースにおける最低限学ぶべき内容をまとめたもの
です。
つまり、全国の学生に最低限求められる能力の基準みたいなものです。
ちなみに、これって逆を言うと、厳しい言い方ではありますが、
「学習指導要領の内容についてこれない学生は人材として欲しくないよ」
という、国から我々に向けての宣言だったりします。
これは、実は今の日本の教育形態を考えると少々厄介な話です。
というのも、少し考えてみると、学校側で進級・卒業できない学生を作るのは大変なことなのです。
まともに進級できないとなると、例えば毎年の生徒数の上限が変わったりします。
また、クラスで団結した活動の多い大学以前の学校では、一つ学年の違う生徒がクラスに混じるとなると、チームワークの面で統率を取るのが難しくなったりもしますね。
それに、卒業できない生徒が多く出てくると、学校側も「卒業生がどういう進路を辿った」という実績をアピールしづらく、入学を検討する側も「卒業できないなら行かない方がいい」と考えてしまうかもしれません。
そうなると、留年する生徒が出てくるということは、学校にとっては非常に厄介なことではあるんですね。
なので、それを避けるために学校というのは生徒が学習指導要領をクリアしたと太鼓判を押すための救済措置を用意していたりします。
テストで赤点取ったら追試とか追加課題とか、そういう措置が救済措置の一例ですね。
「テストを見る限り指導要領についてこれてないけど、代わりにこの課題やったらついてこれたことにしてあげる」という訳です。
しかもこの課題、合格ラインがかなり低めに設定されていることが多いです。
結局のところ、よほどのへまをしない限りは大半の人が進級・卒業できる仕組みにしているんですね。
だから、あるいは本来の指導要領が求める能力を持っていなくても、学校側の都合でお墨付きは貰えてしまうことがあります。
しかし、社会の大人たちはそういう目で学生を見てくれません。
「留年しない=学習指導要領で求められることは出来ている」という前提で見てくるのです。
そうなると、大人から「こんなことも分からないのか」なんてひどいことを言われてしまうかもしれません。
だから、学習指導要領を理解するべきなのは学校の先生とかだけじゃなく、学生の皆さんも本来知るべきことなのです。
他でもなく皆さん自身のためにね。
そう言われるとこの記事読んでみようかなという気持ちになりませんか?なってくれていたら万々歳ですね。
新教育課程で具体的に何が変わる?
それでは、実際に新教育課程に切り替わることでどのような影響が出るのかを掘り下げていきましょう。
学習指導要領の方向性
まず、文部科学省が学習指導要領についてどのような計画をしているのかを見ていきます。
画像引用:新学習指導要領について-文部科学省
こちらの画像は、学習指導要領の変更に際して文部科学省が公開している資料の一部です。
こちらを見ると、学習指導要領は、新しい時代で働いていく上で必要となる知識・思考力・人間性を磨き上げるための過程ということのようです。
また、新指導内容が織り込まれる予定はあるようですが、学習内容の削減は行わないとのことなので、少し学生にとっては学習内容がハードなものに変わるかもしれません。
さて、知識に関してはまだわかりやすいですが、思考力と人間性って何だと思いますか?
これは、イメージが難しいかもしれませんが、仕事をするときに必要不可欠なスキルです。
これは僕個人の解釈なので、絶対的な意味という訳ではないのですが、個人的には
思考力:目標達成のために最も効率的な手段を考えだせる力
人間性:自分が目標達成に向けて足りていないスキルを自発的に補える力
という風に言うことが出来るんじゃないかと思います。
サッカーに例えて話をしましょう。
試合で勝ちたい!と思ったときに、自分たちの能力が最大限発揮できるフォーメーションや選手構成を考えるのが思考力で、戦術を練るためにデータが足りていないと思ったら試合を観察するというアクションを起こせるのが人間性です。
ちなみに知識っていうのは、この話題においてはすでに知っている情報の数みたいなものす。
要は思考力を養って知識を使い、人間性は知識を自ら集める力なわけです。
こういうことが出来る選手は評価が高いですよね。
チームメイトからも「この人に任せておけば戦術は何とかなる」という安心感を得られるでしょう。
そういう選手はきっと一軍として重宝されるし、能力値がとても高い人ならサッカーでお金を貰える選手・監督といった立場の人物になれるでしょう。
これは一般の仕事においても同じです。
「この人に任せておけばこの会社はうまく回る」と上司が思うからこそ、重要な仕事がその人に回り、お金も多くもらえるようになるのです。
当たり前かもしれませんが、お金ってそうやって稼ぐんです。
誰かにとってあなたが「お金を渡してでもその人に何かしてもらいたい」と思えるだけの結果を残せる能力があって初めて、あなたにお金が入るようになっているんです。
だから、今後しっかりお金を稼いで生きていくためには、こういった能力はすべて必要なんだよ、という話ですね。
そして、学校での勉強を通じて、国は皆さんにその能力を身に着けてほしいと思っているということです。
それでは、各科目で具体的にどのように内容が変化するかを説明していきましょう。
なお、前編・後編を通してご紹介するのは主要五科目のみであり、内容は文部科学省の公開している学習指導要領の説明資料(リンクはこちら)を参照しているものです。
令和7年度入試からは「情報」も受験科目に入ってくるのですが、「情報」に関するお話はまた別記事でさせていただきますので、本記事では割愛いたします。
教育課程の変化【国語編】
まずは国語です。
国語は科目の種類から大きく変わります。
現在の高校国語としての科目は
国語総合
国語表現
現代文A・B
古典A・B
となっていますが、新課程では
現代の国語
言語文化
論理国語
文学国語
国語表現
古典探究
という分け方になります。
この改正によって、どういった部分が大きく変わったのでしょうか?
これに関しては、先ほどご紹介した文部科学省の資料に次のように書かれていました。
高等学校の国語教育においては,教材の読み取りが指導の中心になることが多く,国語による主体的な表現等が重視された授業が十分行われていないこと,話合いや論述などの「話すこと・聞くこと」,「書くこと」の領域の学習が十分に行われていないこと,古典の学習について,日本人として大切にしてきた言語文化を積極的に享受して社会や自分との関わりの中でそれらを生かしていくという観点が弱く,学習意欲が高まらないことなどが課題として指摘されている。
ちょっと硬い言葉なのでわかりづらいですかね?
簡単にまとめると、
「国語の授業が教科書を読むだけのものになっていて、実際に日本語をうまく使って意見を述べる能力を身に付ける機会や、日本語の面白さ、歴史などに興味を持てるような内容になってないのが問題だ」
ってことです。
科目構成の変更も、こういった背景があってのことです。
「古典A・B」という二科目分に分けられていた内容は「古典探究」に統合され、「現代文」という区分の代わりに評論文を読み書きして自分の意見を育む「論理国語」、小説などの文学作品の読解力を上げる「文学国語」、コミュニケーションとしての国語力を育てる「国語表現」に科目が分かれました。
これまでと比べて、国語の中でも単元によって異なる「得られる能力」に合わせた構成になっているように感じます。
特に「論理国語」「文学国語」「国語表現」「古典探究」は選択科目なので、自分の興味がある分野を自由に選べるようになるみたいです。
旧課程と比べ、自発的に国語を勉強することが出来る形態は整うようです。
仕事によって日本語を何のために使うかは全く違うので、その人に合った日本語のスキルを高めやすくなるというのはとてもいいことですね。
教育課程の変化【社会編】
今回の最後は社会です。
まずは地理歴史についてですが、科目構成が変わります。
「地理A・B」は「地理総合」と「地理探究」という名前に変わります。内容的には大きくは変わらないのでは?という印象です。
歴史科目ですが、これまで「日本史A・B」「世界史A・B」という分け方だったのですが、新たに「歴史総合」「世界史探究」「日本史探究」という科目に変わります。
完全に日本史と世界史を分け、範囲を時代で区切る形式ではなく、日本と外国の近現代にまでわたる情勢を「歴史総合」で学び、日本史と世界史のどちらを掘り下げるかによって「日本史探究」「世界史探究」があるような形です。
「歴史総合」で日本と外国との関わり方がどのように変化していったのかを知ることで、他の国の人とコミュニケーションをする機会に、互いの文化や歴史に誤解がないようにする目的があるようです。
また、これまで暗記中心だった歴史科目ですが、「歴史総合」では「なぜこういう事件・出来事が起きたのか」という部分を生徒自身に考えさせるような教育も目指していくようです。
これについては、歴史を学ぶ意味を感じさせるという点で大きい効果があるんじゃないかなと思います。
「教科書の内容を暗記する科目」という見え方にならないように変わっていくことを期待していきたいですね。
次に公民です。
こちらでは、「現代社会」という科目が撤廃され、代わりに必修科目として「公共」が設置されるようです。
「公共」では、民主主義や法の支配などの理解に始まり、現代社会の課題を知った上で、「今後の社会をどう作るべきか」ということを議論する力を養うのが目的とのことです。
参政権が18歳である以上、高校のうちに現代社会の構造を理解できるような教育形態は必須になりますよね。
また、それを知らないと今後の社会で生きていくのが困難なんだよ、ということを実習で伝えていけるような教育も、きっと今後の社会では必要でしょう。
いずれにしろ、公民科目が必修になる分、学生からすれば大変かもしれませんが、これを学ぶ意味があるということを実感できれば、きっと楽しい科目になるでしょう。
まとめ
さて、前編はここまでです。
後編では、英語・数学・理科の教育課程の変化と、前編含めてのお話のまとめ、そしてそれと交えて「社会が求める人材」の話をします。
特に「社会が求める人材」の話はとても重要で、勉強しているすべての学生に心に刻んでほしい内容なので、是非最後までご覧ください!
では後編でお会いしましょう。
以上です。
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