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現代文の盲点:現代文力が高い人が無意識に実践している3つの習慣

現代文の盲点:現代文力が高い人が無意識に実践している3つの習慣

こんにちは!武田塾武蔵小杉校です。

今回は、現代文の勉強で見落とされがちな勉強方法を3つ取り上げてご紹介したいと思っています。

 

現代文の文章が難しくて読みづらいと感じている受験生には、まず①の習慣がオススメです。
難関大の文章でテーマに左右されてしまう受験生には、②がオススメです。
上級のかんがえかたですが、現代文で満点を取るためには③の考え方がオススメです。

 

少し原理的に、しっかり説明しますので、納得しながら勉強の参考にしてください!!

 

 

①難しい文章を自分の言葉で言い換える。

理解するとはどういうこと?

人間にとって何かを理解するとは自分の経験知識の体系に落とし込むことです

 

たとえば、これまで「みかん」しか食べてこなかった人が、「オレンジ」を初めて食べたときのことを考えてみましょう。これはオレンジって言うのか、みかんに似ているけれど、片仮名ってことは外国のみかんみたいなもので、みかんよりもちょっと酸っぱい食べ物だなとオレンジを認識しますよね。このとき、みかんに似ているという情報と片仮名で書くという情報を中心に、みかんとオレンジを比較することで、オレンジについて理解するわけです。このようにして、人間は自分が知っているものと比較関連付けをしながらものごとを理解していくわけです。

 

理解力を伸ばすために、自分の言葉に置き換えて練習する

現代文の文章を読むときも同じです。難しい文章であったとしても、ひとつひとつ自分が慣れ親しんでいる言葉に言い換えて議論を辿っていけるならば読めると言えるでしょう。

 

たとえば以下の文章を自分の言葉に言い換えながら読むことは出来ますか?

読書は一種の技術である。すべての技術には一般的規則があり、これを知っていることが肝要である。読書法についても古来いろいろ書かれてきた。しかし技術は一般的理論の単なる応用に過ぎぬものではない。技術においては一般的理論が主体化されねばならず、主体化されるということは個別化されるということである。これがその技術を身につけることであって、身についていない技術は技術と云うことができぬ。読書にとって習慣が重要であるというのも、読書が技術であることを意味している。技術は習慣的になることによって身につくのであり、習慣的になっていない技術は技術の意義を有しないであろう。(三木清「如何に読書すべきか」)

 

以下が、僕なりの言い換えです。ズレはあっても大枠はズレていないはずです。

 

読書はひとつの技術です。どんな技術にも、それぞれ基本的なルールがあって、そのルールを知っていることが大事です。読書の仕方についても昔からたくさん書かれてきました。ですが、技術というものはただ基本的なルールを応用しただけのものではありません。ここで言う技術というものは、基本的な仕組みを自分のものにしなくてはいけないもので、自分のものになる過程でそれぞれのバリエーションとして個性が生まれてくることになるのです。ですから、このようなプロセスを通ることが技術を使えるようになることなので、使えるようになっていない技術は技術と言うことは出来ません。読書を考えるときに日々繰り返すことが大事になってくるのも、読書が身に付けなければならない技術のひとつだからなのです。技術は繰り返すことで使えるようになるものなので、繰り返すことが出来ない技術は技術として役に立たないものになってしまっています。

 

どうでしょうか。あなたならばどのように言い換えるでしょうか。

 

もちろん言い換えてしまうと意味は少しずつズレます。だから言い換えをするときには、本文の大意と大きくズレないように注意して、どこまでなら言い換えても大丈夫かな、という線引きに敏感になることが重要です。そのような感覚を育てていけば、自分の読みが正確かつ柔軟になっていきますし、読むスピードもどんどん速くなっていき、どんな難しい文章でもとりあえずは読めるという自信に繋がります。

選択肢の言い換えにも強くなる!

また、副次的な効果もあります。現代文の選択肢は必ず本文を言い換えて表現されます。自分なりに言い換える習慣があると、どこまでの言い換えならば可能なのか線引きをする能力が上がっていくので、選択肢を見極めるためにも非常に重要な訓練となります。

現代文の勉強をしていて少し読みにくいなと感じた文章に関しては、復習でこのようなトレーニングを積むと現代文のコツが掴めるようになっていくでしょう

 

※自分の言葉という感覚がよく分からない人は、「自分よりも年下の子どもたちを想像して、誰でも分かる簡単な言葉に置き換えていく」ことを意識すると良いです。年下の他者を意識することで、自分の中で当たり前にしていてよく分かっていない箇所や、分かっているつもりになっているだけの箇所がある可能性を疑い、より丁寧な理解を心掛けることが出来るからです。

 

②スキーム力を育てる。

現代文の読解力を底上げするには議論の図式(スキーム)を理解する力を鍛える必要があります。スキームは、キーワードと対比構造によって組み立てられます。よく対比を捉えることが大事だと説明も無しに言われますが、その意味もきっちりと説明しましょう。

 

①言葉の定義を大切にせよ

現代文に出題される学術的な文章や評論文では、言葉に厳密な定義を与えて、その定義に当て嵌まるかどうかを考えながら、議論を展開していきます

 

たとえば先ほど言い換えをした文章では「技術」という言葉を言い換えませんでした。それは「技術」という言葉が文章中で「技術においては一般的理論が主体化されねばならず、主体化されるということは個別化されるということである」という特別な定義を与えられているキーワードだったからです。技術はお金で買ったりして一朝一夕で手に入れるようなものではなく、習慣化して自分のものにしなければいけないものであるという定義を与えて、読書もまた技術なのだから、習慣化して習得しなければいけないと論じていくわけです。

 

このような言葉(キーワード)はある種の道具です。よく使われる便利な道具もあれば、その場その場で作られる道具もあります。しかも、道具の使い方は筆者によって違うことがしばしばあるので文章ごとに定義を確認しながら柔軟に読んでいく必要があります。言葉の定義を大事にする習慣は、現代文に限らず、生きていく上で他人との間に齟齬を生まないためにも重要な習慣のひとつです。

 

②対比を使って整理する

言葉に定義を与えるときには対比が必要になります。対比はどこにでも現れますね。というのも言語の性質が常に対比を孕んでしまうからです。

 

AはBであると言ったとき、AはBでないものではないのです。たとえば猿は動物であると言ったとき、猿は動物では無いもの、たとえば植物ではないという意味を含んでいるわけですよね。このようにAはBであるといったとき、Bの境界線の中にあるものと外にあるものを、常に言葉は切り分けて対比していくわけです。

 

だからこそ、対比を用いて道具としての言葉の定義も行われますし、定義された言葉を使って何かを考えるときも、それに当てはまるものと当てはまらないものを対比して考えていくわけです。そのため対比関係に注目して議論を読むことは非常に重要な訓練となります。

③スキーム(考え方)をストックしていく

さらに応用的なお話までしておきます。

 

学術的な文章は、このように対比を駆使しながら、言葉を独特に定義して議論を展開していきます。そのようにして組み立てられる議論の図式をスキームと呼びましょう。実は、それぞれの学問分野には基本となるスキームがあるのでこれを自分のものとして吸収していくことが大事な訓練となります。もちろんそれぞれの議論は繊細でより多様化していくので、結局は一文ずつ丁寧に読むしかないのですが、基本となるスキームを応用していく発想が無ければいつまでも素人のままで上達はしないでしょう。

 

実は、あるレベルを超えた大学入試では受験生に一定以上の教養を求めているとしか思ないような問題が出されます。そうした問題は、似たような議論を読んだ経験が無いと、時間内に読み切って解くことは難しいのではと思います。このとき一番の壁となっているのがスキームを捉える能力です。日頃から様々な分野の本も読んで現代文が得意だった自分はそんなことを考えたことも無かったのですが、実際に多くの受験生が苦しんでいる姿を見て彼ら/彼女らには経験値が足りていないことに気付かされました。

 

こうした課題を解決するために提言したい勉強方法が、以下のようなノートを作ることです。ただ問題を解いて終わりにするのではなく、スキーム力そのものを鍛えるために有効な勉強と考えてください。

 

①タイトルと筆者をメモ
②キーワードとその説明をメモする
③議論を要約する
④ジャンルをメモしておく

 

今年度の早稲田大学文学部の問題を例にノートを作成すると以下のようになります。

<筆者とタイトル>
加藤尚武 「カレル・チェペック『ロボット』ヒトはその存在を失う前に存在理由を失う」

<キーワード>
隔離・・・パンデミックに対処する根本的な方法。穢れを隔離することで社会は安定する。
差別・・・穢れに触れる人を隔離し差別する構造が出来上がる。
代入型技術・・・人間が部品になり使われて廃棄される。

<議論>
パンデミックに人類は、隔離と差別で対処してきた。穢れを隔離し、それに触れる人々を差別することで。こうした仕事を含めて、あらゆる人間の仕事をロボットに置き換えることは許されるのか。技術的な発明は必ずしも創発的なものになるのではなく、代入型技術として人間が部品になり使われる状況を生み出す可能性がある。
ロボットは家族愛を形成する領域では禁止されるべきであるとカレル・チャペックの『ロボット』は示唆する。そもそもロボットが子供の成長に与える影響についての安全性を実験心理学の手法によって確かめることは原理的に出来ない。
現代では人間が外的な要因で絶滅する可能性よりも、自ら破滅を招く可能性の方が大きい。チェペックは人間の存在理由を自己犠牲の精神を持つ愛に見たが、それをロボットに預けて存在理由を喪失した人間が滅亡する物語を残している。そのように自死する可能性が高い人間は、自らの築いた文化を宇宙の他者に伝えるために最後までロボットを開発するのだろうか。


<ジャンル>
倫理学、技術論、環境論、差別


こうしたノートを蓄積してジャンルごとに見比べてください
そうすると、同じような議論が繰り返しなされていくことに気づくはずです。そのようにして複数の文章のスキームを読み比べていくことで、他の受験生を圧倒する応用力が身に付くはずです。

 

③出題者の問いに対して、言えることと言えないことの境界線を見定める。

言いたいことを読み取れと言われても・・・

少し現代文という科目について考えてみましょう。

現代文では筆者の主張を読み取ることが大事だと教わります。たしかにそれも大事な視点なのですが、それだけでは足りないことに注意してもらいたいです。

まず、主張を読み取るには、一般論が何なのかを読み取り、それと対比されたかたちで出てくる主張を読み取れと言われますが、実際の文章はたしかに対比を駆使してさまざまな議論がなされていても、対比されたどちらの立場が筆者の言いたいことなのかは不透明な文章が多のです。実際の文章は強い主張をなすためだけに書かれているわけではなく、世の中のことを分析(研究)することに主眼を置いているものも多いですし、どちらかの立場に決められない現実の豊かさがあることも踏まえておかなければなりません。安易な判断をせずに、考えられるだけ複雑に考えることが倫理的な態度だとも言えます。むしろこうした姿勢が一番重要だとすら思えます。

また、本の中の数ページだけを抜き出して現代文の問題が作られるわけですから、結論が出ていない場合だって多いのです。

現代文とは出題者との対話である

面白いことに、現代文の入試問題で出題された文章の筆者が実際に問題を解いてみると、選択肢問題を間違えることがしばしばあります。このことは単に問題が難しいこと以上に示唆的です。現代文の入試問題とは、筆者の言いたいことを読み取る問題ではなく、問題作成者の質問に適切に答えられるかということを試す問題になっているのではないでしょうか

残念なことに、読解力がある人だからこそ複数の選択肢が正解に見えたり、ひとつも正解が無いといった状態に陥ってしまうことがよくあります。そうしたひとが入試現代文で点数を取るには、自分の解釈を出題者の意図に沿って修正する能力が必要でしょう。いわば入試では、自分の考え方に固執せず、出題者との対話が出来るかを試されていると言った方が実情に合っていると思っています。

もちろん出題者と対話をするためには、文章そのものを客観的に検討する理論が欠かせないわけですし、そうやって考えていくと、現代文の点数を上げるには思った以上に複雑な理解力が必要になることを想像できますでしょうか。大事なことは何を言いたいかを考えることではなく、何が書かれてあるかを客観的に分析することだとも言えましょう。

複数の読み方を使い分ける

こうした前提に立って、問題を解く際のプロセスを提案してみます。

①文章全体を俯瞰して読んで議論の構造を客観的に整理する。
②問題で問われていることを明確化する。
③本文を読み直して選択肢の解釈が正当かどうかを検討する。

文章を読みながら解く派の人たちもいると思いますが、僕の場合は文章の言いたいことと出題意図が噛み合わずに混乱して間違えてしまうことが多いので、敢えて①でザックリと読んでから、②で出題者の問いを確認し、③で問題を解くためだけに出題者の視点から読み直すという方針で頭の使い方を切り替えています。どうしても自分は深読みをしてしまい自分の読み方に固執してしまう場合が多いので、一度意識的に自分の読みとは違う方向から検討する機会を設けることで、より精度を上げようとしています。

また、文章を読むスピードにも困っていないので、先に全体像を把握してから問題を解いていきます。難関大になればなるほど文章を最後まで読んでからでないと解けない経験もあり、この解き方で安定しました。誰にでも出来る方法ではないと思いますが、問題の意図を読み取るが重要であることはすべての人に共通する点だと思います。

 

出題者の観点から選択肢を分析する

このような実情から直感的に消去法を重視する受験生が多いのでしょう。

ところが、そこにも欠けている視点があります。部分的にこの言葉はあるか無いかで考えると、どれも本文に書いてあるので答えを決められない、もしくは部分的に本文に書いていないことなので答えから外したらそれが正解だったという経験は無いでしょうか。

こうしたときに重要なのは、やはり出題者と対話をしてその選択肢全体がどのような意味を持っているのかを考えるべきです。間違いの選択肢を文脈なしで読んだときに何を言っている選択肢なのかを考えてみると気付きを得やすいはずです

 

まとめ

基本となる勉強方法は参考書で言われているような論理的読解方法になる点は変わりません。しかし、その前提となる理解力そのものや、知識やスキームの蓄え方、どこまでなら解釈の幅を認められるかどうかを出題者と対話することなど、論理的な読解方法だけを考えていたら見落とされる考え方についてまとめてみました。いきなりすべてに取り組むことは出来なくても、ひとつひとつ出来るようにして、成績アップに取り組んでもらいたいと思います。

 

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