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分詞構文の訳し分け「英語は前から読め!」〜第3回質問ボックス〜

教務の三浦が、質問とその対応策を定期的に公開する企画です!


参考書の解説では物足りずに、疑問を持つことはいいことです。今回の質問はとてもいいですね。こういう着眼点が難関大志望にとっては必要です。

文法の訳し分けについて秘密を公開していきます!!

 

Q.  "He studied hard, becoming a lawyer." を「彼は一生懸命に勉強して、そして弁護士になった」と訳す理由が分かりません。参考書の解説には、文尾の分詞構文は「そして」と訳しましょうと書いていますが、どうしてそうなるのか納得出来ないです。
A.   他の場合にはどのような意味になるのかと比べて考えると、よく理解出来ると思います。

 

英文解釈の勉強は構文の分析だと思っている人は多いと思います。しかし、構文のカタチだけを見抜けても、結局文章が何を表現しているのかが読み取れなければ、解釈が出来るようになったとは言えないでしょう。そう思えば複雑な英文解釈の勉強ですが、センスに頼らずにきちんと英語を読めるようになるためには、きちんと方針を立てて勉強しなければいけません。


 

文法の訳し分け

分詞構文の位置で変わる意味

文法や解釈の勉強をするときは、参考書で分からないところを文法書で調べながら勉強する方がいいです。ところが『Evergreen』とかで調べても、この疑問は解けないんです。本当に英語を極めたいと思っているなら『ロイヤル英文法』くらい詳しい参考書を持っておいて、普通の文法書に載っていないときは更に詳しいもので調べられるようにしておきたいところです。

 

『ロイヤル英文法』には「分詞構文の位置」という項目があり、分詞構文の位置によって意味が変わることが解説されています。

 

1)時を表す場合「〜しているとき」
→文頭に置くことが多い
2)原因・理由を表す場合「〜しているので」
→文頭や文中がふつうだが、補足的な理由の説明として文尾に来ることがある。
3)付帯状況を表す場合「〜して」
→文尾が多いが、前に来る場合は主節の動作よりも前の動作を示す場合が基本。
4)条件・譲歩を表す場合「〜しているけれども」
→慣用表現以外は文頭

 

大前提として厳密なルールではないので、もちろん例外はあります。それでも、基本を抑えておくことで読解力をアップさせることが出来るでしょう。「こんなことまで理解しなければいけないのか」、「文法の勉強って大変だな」と思う人のために、なんでこうなるのかという考え方のコツまで整理しておきます。

 

情報伝達の順序を考えよう

4つのケースを比較すると、文頭に来る基本の意味が「時」「原因・理由」「条件・譲歩」となっていて、文尾に来るのが「付帯状況」だけになっていることが分かると思います。ここから、文尾に来るときだけが例外だから「そして」と訳せばいいと覚えてしまってもいいかもしれませんが、実はきちんとした考え方があるんです。

 

言語を使う上での伝わりやすさを考えてみましょう。まず「時」「原因・理由」「条件・譲歩」という意味が出てくるのは、主節の言いたいことよりも前に分詞構文で前置きをしているからだと思ってください。日本語で考えてみてもそうじゃないでしょうか?以下の例を見てください。

 

<時>
○「勉強をサボってスマホを触っていると、お母さんに怒られた」。
△「お母さんに怒られた、勉強をサボっているときに」。

<原因・理由>
○「お父さんに怒られたから、やる気が出なくなった」。
△「やる気が出なくなった、お父さんに怒られたから」。

<条件・譲歩>
○「やる気が出なくなったら、気晴らしをした方がいい」。
△「気晴らしをした方がいい、やる気が無くなったなら」。

 

逆にしたら気持ち悪いですよね?

 

英語は前から読め!

言語の基本的な感覚として、出来事が起こる順に語っていく方が情報の流れがスムーズで伝わりやすいことがあげられます。「Aという事件が起きて、Bの結果になった」という文を考えましょう。「理由」とか「条件」というのは、「結果」となる出来事よりも前にあること、つまり「前提」ですよね。「時」というのも「〜しているとき、(次に)・・・だった」といった感覚で使われることが多いのです。この前半部分に分詞構文を用いて、それぞれ「時」「原因・理由」「条件・譲歩」という役割をはっきりさせた意味を表現する習慣があるのです。

 

そうなれば、逆も簡単に分かります。逆になったときは「Aという事件が起きて、Bの結果になった」という表現の後半部分、結果の方を分詞構文で表現するわけです。ここまで来れば質問内容の「He studied hard, becoming a lawyer.」の意味が「彼は一生懸命に勉強して、そして弁護士になった」になることは明確に分かりますよね?

 

文章は前から読んでいくものです。基本は時系列に沿って表現する方が思考の流れにとっても自然です。文法には、そのような人間の認知過程が反映されているのです。

実践編:慶應過去問で応用する

試みに、慶應大学商学部の問題を解いてみましょう。以下の問題文に選択肢のかたちを適切に変えて入れてください。

 

問題文:Intensified globalization might (   ) in a relatively homogeneous world market, (   ) cultures to lose their identities.

選択肢:cause, interpret, mean, oppose, result

 

まず一個目は「result」が入ります。「result in (〜という結果になる)」という熟語を知っていれば簡単ですね。

 

直訳「強まったグローバル化は、相対的に同質な世界市場という結果に至る」

→意訳「グローバル化の動きが強まってくると、相対的に同質な世界市場が生まれて」

 

※(補足)たとえ知らなかったり、忘れたりしても"in"が来ているので、その前に自動詞の意味が来ることを考えて欲しいです。「結果」という名詞を自動詞化すれば「A result.」で「Aが結果として出てくる」という意味を推測出来ます。そして、「A result in B.」だと「A が結果としてBという状態になる」と派生していくわけですね。

 

二つめの問題は「causing」が答えです。まず、助動詞があるので、前半が主節になって、後ろが副詞節にならないといけないことが分かる人は多いでしょう。次に「cause A to do」(Aにdoさせる)というタイプの構文を見抜くことが必要ですが、このとき分子構文の意味の取り方まで分かっていれば、より「cause」を選びやすいのでは無いでしょうか?訳を考えてみてください。

 

「グローバル化が強まると、相対的に同質な世界市場が生まれて、(そして)文化がアイデンティを失うことになってしまう」。

 

「cause」の基本的な意味は「(ある結果)を引き起こす」です。前から出来事が順に起こっていく文体を分詞構文は作るんですよね。以下のように頭の中で因果関係を理解してみましょう

 

グローバル化の進展→同質的な世界市場→文化がアイデンティティを失う

このように前から因果関係が進行していくのでスッキリと理解できますよね。ここまで掴めていれば、「cause」を入れて最終的な結果を表現することに、確信を持てるでしょう。小さな意味の取り方の応用ですが、前から論理が流れていることを普段から意識出来ていればとても簡単に見える問題でした。

 

応用編:共通する他の文法項目

ちなみに「理由」「条件」「結果」などは他の文法項目でも出てきますよね。同じ考えが通用する代表的な文法項目をリスト化しておくので、使われ方を確認しておくと難関大対策に有効です。とりわけ、エッセイや小説ではこの考え方が無いと分からない場面が出てくるので要注意です。

 

・関係代名詞の非制限用法の訳し方。
・接続詞の応用的な用法。
・to不定詞の副詞的用法。

 

参考に、ひとつだけ紹介しますね。以下の文を訳せますか?

 

She studied and studied, until she collapesed.

 

「彼女は勉強をして勉強をして、ついに倒れてしまった」。こういうふうに意味を取るのですが、「彼女は倒れるまで勉強をした」と何が違うのかと思うかもしれません。事実そのものは同じでも、表現としてはニュアンスが変わってきます。上の例文では、倒れてしまったたことに強調があるわけです。

 

注目して欲しいのはカンマがあることで、辞書を引くと「〜, until S V.」「〜して、ついにS Vになった」という使い方があります。

 

実際にこのuntilの使い方は東大の下線部和訳にも出題されていて、この訳し方を知らないと上手く訳せなかった良問があります(単語帳のuntilの欄にはあまり載ってませんので、やはり辞書を引く勉強が大切です)。

 

The greater the spread of the terrace and the factory, the office and the suburb, the more the realities of the countryside receded, until a life governed by unceasing labour and the uncertainties of the weather was transformed into a dreamland of health and happiness.
(テラスハウスや工場、オフィスや郊外の風景が広がっていくと田舎の現実はますます後退し、ついに、終わりなき労働と不確かな天候に支配されていたはずの生活は、健康で幸せに満ちた夢の国の生活へとそのイメージを変えられてしまった

 

※文脈を省略しているのでかなり意訳をしてますがご勘弁を。

 

このように、前から意味を取っていく習慣を持って、どういう言葉の使い方があるのか、辞書を引きながら勉強することが最終的な英語学習には必要です。いつ辞書を引けばいいのか、その勘を養うためにも今回お話しした考え方が役に立つはずです。

 

まとめ

ひとつの文法項目に複数の意味がある場合、例文を見ながらどういうシュチュエーションで意味が変わるのかを具体化して理解することが文法学習の肝です。文法学習をただ文法問題を解くためだけに勉強するのではなく、生きた英語力を身に付けるために頑張って欲しいです。そうすると、難関大学の壁をきっちりと超えられるようになりますよ。

 

今回は、ひとつの質問から気合を入れて話を膨らませすぎましたが、より本質的に文法を勉強する必要性が伝わったと思います。前から読んでいくこと。これが言葉の理屈を理解するための重要な考え方のひとつであることが伝われば幸いです。

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