緊急対策!神奈川大学給費生古文!
教務の三浦が、質問とその対応策を定期的に公開する企画です!
生徒からの質問は勉強法に新しい発見をもたらしてくれます。質問にただ答えるだけではなく、勉強方法までしっかりと考えて伝えることをいつも大切にしています。
第二回目は古文の読み方編です。
Q. 神大給費の古文が思ったより難しいです。どうやって対策をしたらいいですか?
A. 見かけに惑わされないようにしましょう。文章は長いですが、読み方を整理すれば、設問は基本的な知識で解けるものが多いです。今までの勉強の成果を出せるようにアプローチを整理しましょう。
神奈川近郊の受験生にとって、12月の通過儀礼となっている神奈川大学の給費生入試。
勉強が出来ている人も出来ていない人も、意外と問題の癖が強く、苦戦してしまうかもしれません。でも、落ち着いて対処すれば、簡単に問題を解けるように作られています。本番前に古文の問題を解く手順を確認しておきましょう。
古文の読み方と解き方
古文は推理する科目
古文は英語のようにスラスラと全訳出来なくても良い科目です。そもそも昔の文章なので、わからないことが多くて当然なのです。
そのため、名探偵のように推理する力が重要な鍵になります。注やリード文、人間関係の整理、文法的な知識を頼りにして、選択肢を吟味しながら考えられるようになりましょう。文章の読み方については『富井の古文読解をはじめからていねいに』が体系的にまとめてくれているので、ぜひ参照して下さい。
今回は、上の前提を踏まえた上で、情報を整理しながら解く方法を神奈川大学給費制対策として例示したいと思います。
解くプロセス
①リード文を読んで「登場人物」と「登場人物の関係性」を整理する。
②注は必ず参照しながら読む。
③登場人物を四角で囲みながら場面の展開を抑えていく。
④設問がヒントになることが多いので、解きながら読み進める。
古文の読解では何よりも場面を理解することが大切です。文法ばかりやったのに読めない人、あるいは文法をやり直せば読めると信じている人、読み方を見直してみませんか?
実践例2018年国語大問一
神奈川大学の給費生入試では、敬語が重要な文章が出題がされがちです。敬語は人間関係を抑えるヒントになるので、練習しておきましょう。
前書き
設定の確認
次の文章は『歎異抄』の一節である。ここでは「本願ぼこり」に対する著者(唯円)の考えが、その師である親鸞の教えを交えつつ述べられている。
まず、著者(唯円)の考えが述べられている文章なので、唯円の視点から、唯円が語っていると思って文章を読む必要があります。また、師である親鸞の教えを交えつつ、とあるので著者の考えと師の教えを整理しながら読む必要がありそうです。
本文①
言いたいことが分からないので後回しにする部分
「弥陀の本願、不思議におはしませばとて、悪を畏れざるは、また、本願ぼこりとて、往生叶ふべからず」といふこと。
この条、本願を疑ひ、善悪の宿業を心得ざるなり。
この条とはカギ括弧で括られた文の内容ですね。この文の内容は、本願(仏の教え)を疑い、前世で行った善悪の行為が巡ってくることを理解していない、そんなことを唯円は言っています。正直、この段階ではカギ括弧の内容が誰の発言なのか何を言いたいのか全く分かりません。次に進みましょう。
本文②
「」は引用の可能性あり。
善き心の起こるも、宿善の催すゆゑなり。悪事の思はれ、せらるるも、悪業の計らふゆゑなり。故聖人の仰せには、「卯毛・羊毛の尖に居る塵ばかりも造る罪の、宿業にあらずといふことなしと知るべし」と候ひき。
善き心が生じるのも、前世の善き行いによるもので、悪いことをなそうとするのも前世の悪き行いによるものだと、そのように唯円は言います。ここで、故聖人の仰せ、つまり親鸞の教えが引用されます。塵のように小さな罪でも、宿業にならないことはないと心得ておけ、だいたいこういう意味ですね。
問二 二重否定を見抜くだけで解ける問題。
ここで、「あらずといふことなし」に傍線が引かれて問二が来ているのですが、選択肢を見れば二重否定を反映したものがひとつしかないので、文法的に解けてしまいます。
本文③
敬語から会話を整理する
次の一文です。敬語に注目して読んでください。
また、ある時、「唯円房は、我が言ふことをば信ずるか」と仰せの候ひし間、「さに候ふ」と申し候ひしかば、「さらば、言はむこと違ふまじきか」と、重ねて仰せの候ひし間、謹んで領状申して候ひしかば、「例へば、人、千人殺してむや。しからば、往生は一定すべし」と仰せの候ひし時、「仰せにては候へども、一人も、この身の器量にては、殺しつつべしとも覚えず候ふ」と申して候ひしかば、「さては、いかに、親鸞が言ふことを違ふまじきとは言ふぞ」と。
誰の発言かだけを敬語から分析してみましょう。
〜と(親鸞が)仰せの候ひし間、〜と(著者:唯円が)申し候ひしかば、〜と重ねて(親鸞が)仰せの候し間、謹んで領状(著者:唯円が)申し候ひしかば、〜と(親鸞が)仰せの候ひし時、〜と(著者:唯円が)申して候ひしかば、〜と(親鸞が言った←これは文の流れと発言内容から推測)。
仰せ(尊敬語)と申し(謙譲語)といったように、それぞれ偉い人の動作、偉い人に対して身分が低い人の動作として、親鸞と唯円が会話を交わしていることが分かると思います。
話のオチまで捉えて意味を考える
この関係性を分かった上で文章を読んでいくべきでしょう。会話が行われている場合は、それぞれの立場を抑えて読解することがコツです。どんな問答が繰り広げられているのか、それぞれの立場を考えてから問題を解きましょう。
結論から言えば、「師匠の言うことを守るよね?」「守ります!」。だったら「人を殺したらどうする?」「それは無理です!」。「だったら何で私の言ったことを守るなんて言えるの?」と、まぁ、歴史上の偉人ですけどどっかで聞いたことがあるような、ありがちな問答が繰り広げられているわけです。
正直なところ、古文は少し先まで読んでから、何度か辻褄が合うように読み返して分かることが多い科目です。いきなり問題を解こうとすると、直訳ではどれも正解に見えてしまいます。文脈を抑えられるまではしっかりと理解してから問題を解くようにしましょう。最低でも読点まではきっちりと読むほうが良いです!
※もともと日本語には明確に読点を打つ習慣が無かったので、問題文に出てくる読点は、現代の古文学者が意味の句切れで解釈をした上で読点を振ってくれているものです。そのことを頭に入れておいた方が読解上は有利ですね。そもそも『歎異抄』は漢文で書かれてるんですよ。
問題を解く
ここまでの関係性を踏まえると問題が3つほど解けます。
問三 直訳を信じよ
問三は「さに候ふ」とは具体的にどのようか?という問題です。
「唯円はわたしがこれから言うことを信じるか?」という親鸞の発言に対して、「その通りです」と唯円が返事しているシーンです。問題の「さに候ふ」とは具体的にどういうことか、というのは指示内容を辿れば一目瞭然です。答えは親鸞の発言に相当します。
4の選択肢が「唯円房が親鸞聖人の言うことを信じるということ」となっていますが、ここでは直訳で一致するものを選べば答えになる基本的な問題です。無駄な詮索はよして、逐語的に該当箇所が対応している選択肢を選びましょう。
問四 文法で消去法→残ったものをシーンから判断
問四は「言はむこと違ふまじきか」の解釈を選ぶ問題です。
1 お前が言ったことは間違っていないか
2 お前が言ったことを翻したりしないか
3 私がこれから言うことに背くつもりはないか
4 私が言うことは間違っていないと思うか
まず、「言はむ」の「む」が推量の助動詞なので、ここでは自分の言うにくっ付いて意志の意味になります。ここから1と2の選択肢が過去形の選択肢になっているので、間違いだと分かります。次に3と4の違いを吟味します。
直訳をしても「私が言うこと( )違うはずがないだろうか」となるのですが、( )の中に「が」を入れるか「に」を入れるかで解釈が変わってしまいます。それでも、後ろのやり取りを読んで、師匠が殺せと言ったら人を殺すのか?というくだりまでを抑えて考えれば、3が正解になることが分かります。焦らずに文法→シーンの整理を経て問題を解きましょう。
問五 文法だけで解けるけれど、シーンからも解けてしまう
問五は「殺してむや」の口語訳です。実は、文法だけで疑問と推量の意味が含まれている2の「殺してくれないか」が正解になることが分かります。それが分からなかったとしても、会話の流れを理解していれば、明らかに2を選べるサービス問題になっています。
結論
全部を解説するわけにはいかないので、ここで終わりです。ここからは、まとめたアプローチを使って、自分で過去問分析をしてみてください。自分でどう解くかを考えることが最も重要な勉強ですよ。
今回は神奈川大学の給費生直前に、古文の読み方と解き方のコツをまとめました。古文は「文法的に分析すること」と「シーンの分析」さえ出来るようになれば、知識問題以外、ほとんどの問題が解けます。そのコツの一端だけでも伝わっていれば幸いです。神大直前の基本的な対策としては以下のようになるでしょう。
①敬語などを使った読み方が出来ている場合
→過去問を分析して解き方の整理。
②読み方が出来ていない場合
→『富井の古文読解をはじめからていねいに』を見ながら過去問を分析する。
神奈川大学の給費生試験の問題は、一瞬戸惑うような見た目をしているかもしれませんが、丁寧に解けば問題はシンプルです。しっかりと対策をして合格を勝ち取ってもらいたいと思います。
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