大学入試古文基礎講座①~品詞分解編~
京都の予備校と言えば武田塾京都校!講師のS.Yです!
国公立大学前期日程の合格発表の季節となりました(どんな季節でしょうか)。塾には来年度の受験を目指した新しい生徒さんも続々と来てくれています。
今日から3回ほどにわたって、京都校のブログ記事でこれまであまり書かれていなかった古文について、最低限これだけはわかっておいてほしいという基礎の部分を、主にこれから本格的に受験勉強を始めようという人たちに向けて解説したいと思います。
今日はその第1回、「品詞分解」についてです。
品詞分解がなにかぐらいさすがに分かっているよとお思いかも知れませんが、その重要性について、しっかりと理解している受験生はあまり多くないのではないかと思います。
「品詞分解ができれば、古文の勉強はほとんど終わったようなものだ」といえば、少しは、その重大性を認識していただけるでしょうか。
はたして本当にそうなのか、これから説明していきます。
現代語訳とは
まず、「現代語訳とは」というところから始めましょう。
現代語訳とは、現代語でない言葉で書かれた文章を、現代語に訳すこと、です。あたりまえです。
今日は古文の話なので、「日本語の古文で書かれた文章を、現代日本語に訳すこと」ですね。漢文であれば、「漢文(中国語の古文や、それにならって日本で書かれた文章)を、現代日本語に訳すこと」となります。
本連載で、現代語訳と書いた場合には、「日本語の古文で書かれた文章を、現代日本語に訳すこと」のことを指していると思ってください。
中学で古文をやったときには、この現代語訳は問題文のあとについていました。めっちゃ簡単だったと思います。少なくとも中学を卒業し、大学受験を控える皆さんが今やるととても簡単に思うはずです。
大学受験の古文では、現代語訳は解答・解説のところにしかありません。日本語の古文そのものを読み解くことが求められているということでしょう。
現代日本語で思考し、思考結果を現代日本語で表現をするわたしたちとしては、日本語の古文をそのまま理解するということは困難であるため、日本語の古文で書かれた文章を理解するためには、現代日本語に置き換えるというステップを踏む必要があります。このステップこそが現代語訳であり、大学入試古文が受験生に課している課題なのです。
もし、大学入試古文の本文が現代日本語で書かれていたら、やはりとても簡単な問題だと思うはずです。
そうであるならば、大学入試古文の問題が解けるようになるかは、現代語訳ができるようになるかとほとんどイコールであると言えるでしょう。
では、現代語訳はどのようにすればできるようになるのか。現代語訳をするために必要な知識は、大きく分けて、古文常識・古文単語・品詞分解(古典文法)の3つだと思います。そして、その比率は、古文常識(5%)・古文単語(20%)・品詞分解(75%)ぐらいだと思っています。
この比率については、さすがに異論もあって結構です。古文常識はあればあるほど読みやすく、書かれた古文の文章の背景や言外の意味・ニュアンスを正確に把握するためには必須です。大学で古典文学を専攻していた先生の古文の授業を聞くのは、とても面白いです。古文常識を軽視するわけではありません。しかしながら、入試古文の問題に解答して正解する上では、ほとんど必要ありません。そこまでのレベルは求められていませんし、そもそも高校教育で担保できないレベルです。解答解説にもあまり書かれていません。古文単語を頭に入れておかないと古文は読めませんので必須ですが、単語帳に載っている古文単語はせいぜい300~600程度で、一つの文章で出てくる掲載語の数はそこまで多くありません。
そのようなわけで、以上の様な比重になると思うのです。このことは、以下で述べる品詞分解の性質と併せて考えると、より納得していただけると思います。
品詞分解とは
では、品詞分解とはなんでしょうか。
品詞分解とは、文を品詞ごとに分解することです。あたりまえです。
品詞というのは、動詞・形容詞・形容動詞・名詞・副詞・連体詞・接続詞・感動詞・助動詞・助詞といった、文を構成する最小の構成要素のことです。
英語の学習でも品詞は重要なので、知っている人も多いでしょう。もっとも、上に列挙した品詞は日本語のものなので、英語で習った品詞がなかったり、英語で習っていない品詞があったりします。
英語を日本語訳するのと違って、古文の場合には、日本語の古文を現代日本語にするというものなので、日本語の文法の枠組みをそのまま転用できます。なかでも、①使う品詞の種類が同じ、②語順がほとんど同じ、という2点は重要です。
なぜなら、この2点があることによって、「品詞分解をすれば、ほとんど現代語訳ができてしまう」という重要な結論が導かれるからです。
お気づきでしょうか。
「品詞分解ができれば、現代語訳が(ほとんど)できる」 「現代語訳ができれば、大学入試古文は(ほとんど)解ける」 ⇒「品詞分解ができれば、大学入試古文は(ほとんど)解ける(=古文の勉強はほとんど終わったようなものだ!!)」 |
ね?品詞分解、重要でしょ?
品詞分解の基本的なやり方
ここまで読み進めてこられた皆さんは、「品詞分解がやりたくてやりたくて仕方がない!!」というヘンタイさんに仕上がっていることと思います。
そこまででなくても、「品詞分解がなにかぐらいさすがに分かっているよ」という、いわゆる「バカの壁」(*)は乗り越えて、これから古文をやるにあたって品詞分解を重視しようという気分になっていると思います。
*ここでいう「バカの壁」は、養老孟子先生のベストセラー『バカの壁』のタイトルである「バカの壁」と同じ意味です。分からない方は、書店や古本屋で冒頭だけでも立ち読みすれば、お分かりいただけると思います。
では、どのようにすればよいか。古文の学習においてすべき品詞分解の手順は以下の通りです。
①品詞ごとに分解する。 ②それぞれの品詞名を書く。 ③品詞に応じた文法的説明を書く。 |
ちなみに、現代語訳は、以上の①~③に、以下の④~⑥を加えるだけです。
④分解したそれぞれの要素の横に、対応する意味を書く。 ⑤④で書いたものを、上からただ読む。 ⑥⑤の日本語がぎこちない場合は、主語や助詞を補ったり、表現をすこし変えたりして微修正する。 |
本当にこれだけです。以下で見てみましょう。
実際にやってみようのコーナー
以下の古文の問題を解いてみましょう。
文章:われこそよしと思ふらめ、人はまたさも思はぬもあるべし。 問:指示語が指す内容を明らかにしつつ、現代語訳せよ。 京都大学 2022年度 文系古文 問二(3) |
出典が京都大学なのは嫌がらせなどではありません。
京都大学の、しかも文系の(京大は理系も古文がある)、設問になるような文章の現代語訳であっても、しょせんは品詞分解をしたものを上から読んだだけに過ぎない、ということを分かっていただきたいために、今年出題された入試問題をひっぱってきました。
手順①品詞ごとに分解する われ/こそ/よし/と/思ふ/らめ、/人/は/また/さ/も/思は/ぬ/も/ある/べし |
手順②それぞれの品詞名を書く。(分かりにくくなると思うので、太字で書きます。) われ:名詞 こそ:助詞 よし:形容詞 と :助詞 思ふ:動詞 らめ:助動詞 人 :名詞 は :助詞 また:副詞 さ :代名詞 も :助詞 思は:動詞 ぬ :助動詞 も :助詞 ある:動詞 べし:助動詞 |
手順③品詞に応じた文法的説明を書く。(分かりにくいと思うので、青字で書きます。) われ:名詞 こそ:助詞、係助詞・強意 よし:形容詞、ク活用、「良し」、終止形 と :助詞、格助詞・引用 思ふ:動詞、ハ行四段活用、「思ふ」、終止形 らめ:助動詞、「らむ」、現在推量、已然形(こその係り結び) 人 :名詞 は :助詞、係助詞・他と区別 また:副詞 さ :代名詞 も :助詞、係助詞・類推 思は:動詞、ハ行四段活用、「思ふ」、未然形 ぬ :助動詞、「ず」、打消、連体形 も :助詞、係助詞・添加 ある:動詞、ラ行変格活用、「あり」、連体形 べし:助動詞、「べし」、推量、終止形 |
手順分解したそれぞれの要素の横に、対応する意味を書く。(分かりにくいと思うので、赤字で書きます。) われ:名詞、我、わたし、自分 こそ:助詞、係助詞・強意、訳出しない、こそ よし:形容詞、ク活用、「良し」、終止形、よい と :助詞、格助詞・引用、と 思ふ:動詞、ハ行四段活用、「思ふ」、終止形、思う らめ:助動詞、「らむ」、現在推量、已然形(こその係り結び)、ているだろう 人 :名詞、人、(特にここでは)他人 は :助詞、係助詞・他と区別、は また:副詞、また、それとは別に さ :代名詞、その、そのように も :助詞、係助詞・類推、も、さえも 思は:動詞、ハ行四段活用、「思ふ」、未然形、思わ ぬ :助動詞、「ず」、打消、連体形、ない も :助詞、係助詞・添加、も、もまた ある:動詞、ラ行変格活用、「あり」、連体形、ある べし:助動詞、「べし」、推量、終止形、だろう、に違いない |
手順⑤④で書いたものを、上からただ読む。 「自分良いと思うているだろう、他人はまたそのようにも思わないもまたあるに違いない。」 |
手順⑥⑤の日本語がぎこちない場合は、主語や助詞を補ったり、表現をすこし変えたりして微修正する。 「自分良い」→「自分は良い」* *「こそ」としてもよいが、訳出せずに、主語・題目語の助詞「は」を補った。 「思うているだろう、」→「思っているだろうが、」* *促音便にした。読点の前後の文章のつながりがぎこちないので、逆接の接続助詞「が」を補った。 「そのようにも」→「良いとも」* *設問の指示にも従って、「その」という指示語を明らかにした。 「思わないも」→「思わないことも」* *「思はぬ」の「ぬ」が連体形なので、「こと」という名詞が省略されていると読むべきであり、これを修正と捉えるか、連体形になっているからという文法的理解からくる当然の帰結と捉えるかによって、手順④の段階で出てくるか、手順⑥の段階で出てくるかが変わってくると思います。 結論:自分は良いと思っているだろうが、他人はまた良いとも思わないこともまたあるに違いない。 |
完成です。
河合塾さん、駿台さん、代ゼミさんの解答速報をそれぞれ見ておきましょう。
河合塾:手直しした本人はよいと思っているだろうけれど、人はまたよいとも思わないこともあるにちがいない。 駿台:古い和歌を直した本人は良いと思っているだろうけれども、他の人は同様に良いとも思わないこともあるに違いない。 代ゼミ:自分は改めた表現が良いと思っているのだろうが、他人が同じようによいと思わない場合もあるだろう。* |
本記事では前後文脈をはしょったため、「和歌の表現の手直し」という要素を出しようがありませんでしたが、そこを除けばほとんど同じようになっていることがお分かりになるかと思います。
*細かいことではありますが、重要だと思うので言及すると、代ゼミさんの現代語訳は、本記事・河合塾さん・駿台さんの訳と少しだけ違います。本記事含むそれ以外の現代語訳は、「自己満足にすぎない場合がある」の様な意味であるのに対し代ゼミさんの現代語訳は、「自分と他人の意見が食い違うことがある」の様な意味になっています。代ゼミさんの解答速報担当の方々は、「こそ」の意味を重視して、このような訳に決定されたのだと思います。本記事のやりかたでも、「こそ」を訳出していれば、「自分こそ良いと思っている」となって、代ゼミさんの現代語訳のニュアンスに近づきます。河合塾さん・駿台さんの解答速報担当の方々は、文章全体の流れを重視して、このような訳に決定されたのだと思います。「こそ」は古文としては訳出上の意味を持たないが、現代語の「こそ」として上手くハマる場合にだけ訳出すればよいという考え方に立つと、まずは文意を優先し、その後で現代語の「こそ」としてハマるかどうか、すなわち訳出するかどうかを考えることになるため、本記事では「自己満足にすぎない場合がある」の意味の方で解釈しています。代ゼミさんの現代語訳が間違いであると言っているわけではありません。しかし、文意とずれていると解釈されれば、採点基準によっては、減点される可能性があると思います。
品詞分解、重要でしょ?
次回以降は、品詞分解をする上で重要な、助動詞、助詞、その他品詞の重要事項について、コメントを付したいと思います。
さらばじゃ。
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