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現代文添削課題!! 解答・添削編|武田塾京都校

現代文添削課題!!~解答・添削編~

どうも!京都の予備校と言えば武田塾京都校!講師のS.Yです!

久々のアップです!

受験真っただ中ですね!

私大入試の日程も、前期日程に関しては一部大学を残してほとんど終わったのではないかと思います。

前回、「二次試験への切り替え」と題して、二次試験の論述を意識した現代文の添削課題をアップしました!

現代文添削課題!!~問題編~

これですね。「まだやってないよ」という方はぜひチャレンジしてから読んでみてください!

今回は、僕が国語を担当している生徒さんたちに実際に解いてもらい、もってきてくれた解答を見比べながら、解説していこうと思います!!

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目次

・出題の趣旨

・問1【漢字】

・問2【これはどうしてか。(50字)

・問3【本文全体の趣旨を踏まえて説明しなさい。(40字)

・問4【どういうことか説明しなさい。(40字)

・補問【要約】

 

 

出題の趣旨

今回の添削課題は、僕の担当する生徒さんの志望大学の出題を意識して、設問作成を行いました。

今回参加してくれた生徒さんたちは、以下の5人です。

Aさん:高校1年生 早稲田大学文化構想学部志望 問1~問4

Bさん:既卒生 同志社大学法学部志望 問1~補問(100字)

Cさん:既卒生 同志社大学社会学部志望 問1~補問(100字)

Dさん:既卒生 早稲田大学文学部志望 問1~補問(100字)

Eくん:現役生 一橋大学経済学部志望 問1~補問(300字)

志望大学もいろいろですが、併願先も含めて、さまざまな大学の出題傾向をミックスして作成しました。

まず、文章選びですが、著作権が切れているものが望ましいということで、青空文庫から寺田寅彦の文章を借りてきました。

以前、ぜひ読んでいただきたい文章がありまして。でも登場しましたが、今回の「化け物の進化」は、ここで紹介した「鉛をかじる虫」に次いで、僕の好きな文章です。

少し抽象度が高く、また時代が古いこともあって、言い回しや語彙に少し慣れないところがあったかと思います。京都大学などが出題しそうです。

そういう意味では、現代文論述をする上で大切な、「言い換え」の技術がかなり必要になる難しい問題になりました。

問1の漢字問題は、語彙力を養ってもらうことも念頭に置きつつ、一般的に難易度の高い読み問題を出題しました。

難易度の高い漢字問題といえば、立命館大学でしょうか。

問2の50字記述問題は、関西大学の論述問題を意識したものです。

問3、4の40字記述問題は、「説明しなさい」という出題形式も含めて、同志社大学の論述問題を意識したものです。

短い論述形式は、一橋大学でもよく出されます。

最後の要約問題ですが、一橋大学では300字要約が出題されますし、今回の文章もかなり要約に適したものだったので、付けておきました。

 

形式は、複数の関関同立大学を模していますが、いかんせん文章の抽象度と、傍線部分が難しいので、レベル的には東大・京大・一橋レベルではないかと思います。

では、添削・解説していきましょう!

 

問1【漢字】

問1 本文中に登場した以下の漢字の読みは何か。

「憧憬」「鼓吹」「戦慄」「箴言」「啓蒙」

「憧憬」「鼓吹」「箴言」あたりが難しいかなと思っていましたが、正答率は以下の通りでした。

「憧憬」4/5(=80%) 読み:しょうけい

「鼓吹」0/5(=0%) 読み:こすい

「戦慄」5/5(=100%) 読み:せんりつ

「箴言」1/5(=20%) 読み:しんげん

「啓蒙」5/5(=100%) 読み:けいもう

結構偏りましたね。 最高点:8点 最低点:4点 平均点6点

「憧憬」とは、「あこがれること」です。「ドウケイ」と読まれることもあります。

この「読まれることもある」というのを‶慣用読み”といいますが、慣用読みにも程度がさまざまあるので、気を付けておいた方がよいです。

というのも、①みんなが間違いすぎて、そちらが定着した、というレベルのもの。②間違える人が多いから、そちらも許容される、というレベルのもの。③有名な間違いではあるが、許容しない人が多いもの。…のように、(この分け方自体も程度問題ですが)程度がまちまちです。今回の場合は、「ショウケイ」と読んでおくのが望ましいレベルだと思います。青空文庫のルビは「ドウケイ」と振ってあったのですが、「ドウケイ」はそこまで浸透していないのではないかな?とおもって出題してみました。

武田塾生御用達(ごようたし)の、「漢字マスター1800+」に掲載されているので、解けた人が多かったようですね。

「鼓吹」とは、「意見や思想を盛んに主張し、相手に吹きこむこと。」です。「吹」という字は「吹奏楽」「吹田市」など「スイ」と音読みすること自体はなじみがあるはずですが、正答率は0%でした。

知らない言葉でも、とりあえず知っている読み方を当てましょうね。「こぶ」「こぶい」などの誤答が多かったです。漢字はノリで読まない(笑)。

「箴言」とは、「戒めとなる言葉」です。正答率がかなり低かったですが、実はこれ、武田塾生御用達の「マーク式基礎問題集」の中の文章に出てきているんです!

残念ながら、正解したのは1人。しかもその人は「マーク式基礎問題集」をやっていません。わからない言葉が出てきたら、調べるか、聞くかすべきである(←箴言)。

漢字力は、語彙力に直結します。日ごろの小さな努力の積み重ねが、のちの大きな差に繋がりますよ!

 

問2【これはどうしてか。(50字)

さて、論述に入っていきます。

傍線部は、「(1)「ゾッとする事」を知らないような豪傑が、かりに科学者になったとしたら、まずあまりたいした仕事はできそうにも思われない。 」で、

設問文は、「下線部(1)とあるが、これはどうしてか。(50字)」です。

現代文の解き方講座~1.読み方編~でも述べましたが、設問文にはたくさんの情報が含まれています。

そもそも解答を作るときに、設問文が聞きたいことに答えられていなければ、それは「解答」ではなく「独り言」です。これでは部分点もつきません。

ブログの該当箇所を引用しておきます。

1.設問文には大量の情報が隠れている

設問文にはたくさんの情報が隠されています(本当はむき出しなのですが、多くの人には隠れているように見えるらしい)。

とりあえず、検討すべき点を列挙してみましょう!

  • 設問の問い方の末尾(ex.分かりやすく述べよ、理由を述べよ、なぜか...)
  • 設問文の論理関係(ex.AがBとなるのはなぜか。AがBでないというのはどういうことか...)
  • 傍線部がなぜそこまで引かれているのか(あるいは、なぜそこまでしか引かれていないのか)
  • 傍線部の論理関係(設問文の論理関係におおきく同じ)
  • 傍線部のどこをどこまで説明すべきなのか。
  • 字数制限はどのようになっているか。

挙げだすとかなりあるのですが、主要なものはとりあえずこのくらいでしょうか。

傍線部は「ゾッとする事」を知らないような豪傑が、かりに②科学者になったとしたら、③まずあまりたいした仕事はできそうにも思われない。ですから、

「①が②になったとしたら、③である」について、「どうしてか」きかれているので、「ゾッとする事」を知らないような豪傑が科学者に向かない理由を答えます。その際、「「ゾッとする事」を知らないような豪傑」や「科学者にはどのような資質が求められるか」を述べたうえで、「豪傑の性格」≠「科学者に必要な資質」を導くのが理想です。

しかし、今回字数制限があるので、「書きたいことを全部書く」というのは難しいでしょう。

そこをどうするかが腕の見せ所となる問題でした。

以下では、みんなの答案を、A+ A B C の4段階で評価していきます。

Cは、部分点もなし

Bは、部分点は出せるが、半分未満

Aは、半分以上の部分点

A+は、満点もしくは満点に近い

です。採点は厳しくいきますが、現代文の論述問題で、模試を受ける時なんかに重要なのは、「部分点が貰える解答を出し続けること」です。1つの満点答案より、全部部分点がある、というほうが、次につながります。

現代文論述の最初の大きな壁は、「部分点が少しでもでる答案」を書くことだったりします。

生徒

答案

評価

Aさん

そのような科学者は科学知識に対する興味が欠けていて誰にも本当は分からない事も普遍の事実とするから。

C

Bさん

科学者の仕事は怪異に戦慄する心を持って、自然の不思議への憧憬を吹き込むことだから。

B

Cさん

だれにもわからないことを平凡な事のように簡単に説明して人々に新たな疑問を生み出させず進歩を止めるから。

C

Dさん

不可思議な世界への憧憬を失うと、科学知識に対する興味がなくなり、科学の進歩を止める恐れがあること。

C

Eくん

常識が通用しないような体験をしたことのない人は、自然に潜む化け物に対して神秘を感じないから。

B

 

どれも大きく外してはいない答案です。採点が甘ければ、それぞれ1段階ずつ上がるかもしれません。C答案といっても、それぐらいのレベルです。

少し関係のないことなんですが、答案を見比べると、「主語のある答案は読みやすい」ですね。これは意識した方がよいかもしれません。

Aさんの答案

「そのような科学者は」で始まっていますが、論述ではあまりこういうことはやりません。「豪傑みたいな」のことだろうとは読み取れますが、本問では、そこもできれば説明したいところです。

「憧憬」を「興味」に読み替えているのはGoodです(本文中にある言葉なのでたまたまなのかもしれませんが)。しかし、「科学知識に対する興味」ではなくて「得体のしれないもの、説明のつかないもの、常識が通用しないもの」に対する興味ですね。

「誰にも本当は分からない事」の部分については、「本当は」は「誰にも」にもかかるはずなので、「本当は誰にも分からない事」とする方が日本語としては良いですね。好みの問題かもしれませんが、字数の制約上やむを得ない場合を除いて、「事」は「こと」のほうがいいかもしれません。

「普遍の事実とする」は、なかなか言葉が浮いてしまっています。そして言い過ぎかもしれません。

Bさんの答案

解答の仕方としては、「②はこうだから」となっていますが、「①が②になったとしたら、③である」について、「どうしてか」と聞かれた時の解答としては、少し物足りません。「②が①と合わない」ということを示してほしいのです。

「②はこうだが、①にはそれができないから。」などがあれば、もっとよくなります。

「怪異に戦慄する心」「憧憬を吹き込むこと」はやはり言葉が浮いていますね。本文中の言葉ですが、言い換えるほうが落ち着きます。

解答のフォーマットは惜しいところまできていて、言いたいこともつたわっているので、B評価にしました。

Cさんの答案

すこし読みにくくなってしまいました。主語は豪傑なのだろうとはわかりますが、あったほうが良いですね。

豪傑は、そもそも不思議なものに「気付けない」ので、「だれにもわからないことを平凡な事のように簡単に説明」しません。

また、同様の理由で、「新たな疑問を生み出させず進歩を止める」は言葉が強すぎです。

Dさんの答案

こちらも読みにくくなってしまいました。理由説明なのに、「~こと。」で終わってしまっています。

「不可思議」は言葉が浮いていますね。「不思議」でよいです。

「不可思議な世界への憧憬を失う」と、「科学知識に対する興味がなくな」るという因果関係も不明です。

「新たな疑問を生み出させず進歩を止める」は言葉が強すぎです。

Eくんの答案

解答のフォーマットはとてもいいですね。AにするかBにするかで悩みました。

「常識が通用しないような体験」という言い換えもGoodです。

一つ残念なのは、「常識が通用しないような体験をしたことのない人」の「したことのない」の部分です。「「ゾッとする事」を知らないような豪傑」は、「体験してもゾッとしない人」なので、「したことのない」は不適切です。

これを理由にBにしました。

 

問3【本文全体の趣旨を踏まえて説明しなさい。(40字)

傍線部は、「(2)「科学に対する迷信」」で、

設問文は、「下線部(2)について、本文全体の趣旨を踏まえて説明しなさい。(40字)」です。

「科学に対する迷信」についての説明ですが、「あらゆる化け物に関する貴重な「事実」をすべて迷信という言葉で抹殺する事がすなわち科学の目的であり手がらででもあるかのような誤解を生ずるようになった。 」という前段を踏まえればよいように思えるかもしれませんが、文章全体の趣旨的にそれだけでは狭い気がするので、「本文全体の趣旨を踏まえて」という付帯条件を付けました。

 

生徒

答案

評価

Aさん

科学の進歩につれ化け物に対する世人の興味が不当性に希薄になり迷信とみなされた。

C

Bさん

科学の目的は化け物を捜し教える事だが、迷信として片付ける事になった。

C

Cさん

科学を簡単に説明して普遍的に捉えることが科学の目的であるという誤解が生じたこと。

B

Dさん

科学知識に対する興味を鼓舞してくれる化け物を、人間はそれを抹殺しようとすること。

C

Eくん

不可解な現象に対する非科学的な説明を迷信と決めつけることが科学の目的だと信じること。

A

少し差がついた問題でした。

傍線部の少し前に、「不幸にして科学の中等教科書は往々にしてそれ自身の本来の目的を裏切って被教育者の中に芽ばえつつある科学者の胚芽を殺す場合がありはしないかと思われる。 実は非常に不可思議で、だれにもほんとうにはわからない事をきわめてわかり切った平凡な事のようにあまりに簡単に説明して、それでそれ以上にはなんの疑問もないかのようにすっかり安心させてしまうような傾きがありはしないか。 そういう科学教育が普遍となりすべての生徒がそれをそのまま素直に受け入れたとしたら、世界の科学はおそらくそれきり進歩を止めてしまうに相違ない。 」とありますし、

文章の最後に、「伝聞するところによると現代物理学の第一人者であるデンマークのニエルス・ボーアは現代物理学の根本に横たわるある矛盾を論じた際に、この矛盾を解きうるまでにわれわれ人間の頭はまだ進んでいないだろうという意味の事を言ったそうである。 この尊敬すべき大家の謙遜な言葉は今の科学で何事でもわかるはずだと考えるような迷信者に対する箴言であると同時に、また私のいわゆる「化け物」の存在を許す認容の言葉であるかとも思う。 」とあり、「科学に対する迷信」とは、狭くは、「あらゆる化け物に関する貴重な「事実」をすべて迷信という言葉で抹殺する事がすなわち科学の目的であり手がらででもあるかのような誤解」であり、広くは、「今の科学で何事でもわかるはずだと考えるような迷信」なのです。

ポイントは、

・「迷信」を「誤解」や「間違った考え」などに言い換えられているか。

・迷信の内容が説明できているか。

・「本文全体の趣旨」が踏まえられているか。

 

Aさんの答案

「世人」はやめましょう(笑)。「人々」とかで十分です。「不当性に希薄になり」という表現は日本語として不適切です。「不当性」は名詞であり、「に」をつけて副詞化できません。「不当に」が正しいですね。「○○の不当性」などには使えます。

「迷信」は言い換えましょう。言葉の説明なので、「~こと」で終わるような解答が自然です。

Bさんの答案

「どのような迷信か」が聞きたいのに、それに対して答えられていませんよね。

「迷信」は言い換えましょう。言葉の説明なので、「~こと」で終わるような解答が自然です。

Cさんの答案

惜しい答案です。AにするかBにするかで迷いました。

「迷信」も「誤解」と言い換えられています。

本文全体の趣旨を踏まえて、傍線部の前半だけの狭い意味にとどまらず、より一般的に書けています。

しかし、2点惜しいところがあります。

1つは、「科学を」説明するとなっているところです。科学は科学を説明するのではなく、「化け物」「不思議なもの」を説明するのです。

もう1つは、「誤解が生じたこと」で終わっていることです。「~誤解」で終わるべきです。

Dさんの答案

日本語が変ですね。

「人間は、科学知識に対する興味を鼓舞してくれる化け物を抹殺しようとすること。」

「化け物は科学知識に対する興味を鼓舞してくれるのに、人間はそれを抹殺しようとすること。」

とするほうが日本語として自然です(後半は字数がオーバーしますが)。

仮にこのように言い換えたとして、これらは「迷信」について説明していませんね。内容が合っているかどうかということ以前に、聞かれたことに答えられていません。

Eくんの答案

フォーマット、言い換えともにGoodです。

全体の趣旨が踏まえられるともっとよかったですね。

 

問4【どういうことか説明しなさい。(40字)

傍線部は、「(3)神鳴りの正体を鬼だと思った先祖を笑う科学者が、百年後の科学者に同じように笑われないとだれが保証しうるであろう。 」で、

設問文は、「下線部(3)について、どういうことか説明しなさい。(40字)」です。

具体的に書かれた部分を、いかに一般化しながら、説明できるかが勝負です。

しかしながら、同志社大学の問題形式を意識するあまり、40字という短すぎる字数制限を課してしまいました。ちょっと反省。

生徒

答案

評価

Aさん

人間の進化と共に化け物は進化し、人間と化け物は永遠の進化の道程をたどっていく。

C

Bさん

昔の科学者が信じた事実も時代が変われば変化するということ。

B

Cさん

事実であった事がらは人間文化の進歩によって事実でなくなるかもしれないということ。

A

Dさん

化け物は消滅しないが形は変わるので、今の事実は、未来と違う可能性があること。

B

Eくん

現代の科学者にとって事実であることも、時が変われば迷信だと思われ得るということ。

A

これも差がつきましたかね。

傍線部の少し前に、「昔の化け物は昔の人にはちゃんとした事実であったのである。 一世紀以前の科学者に事実であった事がらが今では事実でなくなった例はいくらもある。 たとえば電気や光熱や物質に関するわれわれの考えでも昔と今とはまるで変わったと言ってもよい。 しかし昔の学者の信じた事実は昔の学者にはやはり事実であったのである。」とあります。

これを踏まえて、傍線部「神鳴りの正体を鬼だと思った先祖を笑う科学者が、百年後の科学者に同じように笑われないとだれが保証しうるであろう。 」を説明します。

ここで気にしてほしいのが、「事実」という言葉遣いです。本文中のこの「事実」という言葉の使い方、日常で使う、辞書的な意味での「事実」とは少し違うと思いませんか?

以前、現代文【小説】【随筆】とメタメッセージで、「文脈を背負った意味」について述べましたが、ここでも該当箇所を引用しておきます。

そこで、小説や随筆の文章を読むために重要な要素として紹介したいキーワードが、「メタメッセージ」です。

メタメッセージとは、「あるメッセージがもっている本来の意味をこえて、別の見方・立場からの意味を与えるメッセージ」のことを言います。

※「メタ」とか「メタ的な」といった言葉は現代文でもたびたび登場しますし、社会に出て知らないとめんどくさい言葉なので、知っておいてください。こういった抽象語は、辞書的な意味だけ読んでもピンとこないことが多いので、実際の使われ方から演繹的に意味を掴めるようにしておくのが肝要です。

「さっきまで土砂降りだったのに、気が付けば空はすっかり晴れ渡っていた。」という一文があったとします。

そのままの意味としては、「雨がやんだ」ということですが、この一文が、何かに思い悩んでいた主人公が、友人の言葉をきっかけに前を向いて進み始める、のような内容の文章の最後の一文だったとしたら、「雨がやんだ」というそのままの意味以上の意味を持つことがわかるでしょうか。

ここまでベタな心象風景はあまりないかもしれませんが(児童文学ぐらい?)、心象風景に関わらず、普通の言葉が、文脈を背負うことで、本来持つ意味を超えた内容を伝えることはよくあり、入試現代文ではそこがしばしば出題されます。

文や言葉は文脈を背負って意味を持つもので、そこで初めて意味が確定します。

ちなみに、ここでの「事実」は、「その時代において正しいとされていること」ですね。これができればA+です。

 

Aさんの答案

「~ということ」で終わりたいですね。「人間と化け物は永遠の進化の道程をたどっていく」というのも、問に対する解答になっていません。

Bさんの答案

「昔の科学者」と書かれていますが、傍線部は、「現在の科学者が未来において笑われる」という作りになっています。

「変化するということ。」で終わっていますが、傍線部は、「保証しうるであろう」となっているので、「可能性」を表現する言い回しにしておくべきです。

この2点が表現できていれば、A答案でした。

Cさんの答案

「人間文化の進歩」なんて言葉は現在では使いませんよね。本文冒頭には出てきていますが、「説明にふさわしい言葉」とはいえませんね。

「事実でなくなるかもしれないということ。」「かもしれない」はよく書けました。

「事実であった事がらは」ではなく「事実であった事がらも」の方がよいですね。

おまけでA答案です。

Dさんの答案

おまけでB答案です。

理由付けが違うというのが大きいですね。「化け物は消滅しないが形は変わるので、」とありますが、確かに別の文脈で本文中には出てきますが、ここでの理由付けとは異なります。

「今の事実は、未来と違う可能性があること。」というのがあるので、部分点は出ると思います。

Eくんの答案

「現代」「時が変われば」と「今→未来」も踏まえられていますし、「思われ得る」で可能性も出せています。

フォーマットも内容もきちんとしているので、文句なしのA答案だと思います。

「事実」の言い換えがあればA+にしましたが、受験では、難関国公立であっても、ここまで書ければ十分合格します。

 

あまりに字数制限が厳しかったので、罪滅ぼしとして、参考答案をあげておきます。

現在正しいとされていることも科学の進歩によって未来では誤りとなり得るということ。
現在正しいとされていることも科学の進歩により誤りとされる未来が来うるということ。

読点がなくて読みにくいですね!

50字ぐらいにしてより良い答案を書いてもらうべきでした!反省!!

 

補問【要約】

私大志望のBさん~Dさんには100字で、一橋大学志望のEくんには300字で要約に挑戦してもらいました。

字数に関係なく、要約においては、「絶対に書かなければならない核の部分を出す」ことが鉄則です。

まずそれを出してから、残りの字数でどこまでのことが書けるかを考えます。

その際には、その「核の部分」にいたるまでの論理の過程や理由付けができているかが重要です。

生徒

答案

評価

Bさん

科学者は怪異に戦慄する心持ちをもって、自然の不思議への憧憬をふきこむことが仕事であり、知識を繰り返し受け売りするだけでは科学は進歩しなくなる。

C

Cさん

人間文化の進歩の過程において「化け物」は活躍し環境の変化をもたらしてきた。しかし、科学の進歩によって科学を簡単に説明して「化け物」に対する興味が希薄になった。科学を進歩させるには化け物教育が必要だ。

B

Dさん

化け物は形を変えながら現代まで心的内容を同一にしながら存在してきた。しかし科学が進歩するとそれを抹殺することが科学の目的と誤解を生むようになり、筆者はその考えこそ誤りであると反論を促している。

C

Eくん

昔の人は自然界の不可解な現象を化け物の所業として説明した。その点で科学も宗教も、化け物の説明の仕方が異なるだけである。ところが、科学が進歩するにつれ化け物について語られることが少なくなってしまった。だれにもほんとうにはわからないような事をきわめてわかり切った平凡な事のように説明してしまうような皮相的科学教育が普及してしまったからである。あらゆる化け物を迷信として排除することが科学の目的であるかのような誤解さえ生まれてしまった。化け物の話に神秘を感じる事と同様の自然の不思議さへの憧れが科学者を生み出すことに必要不可欠であるとすれば、それを教る事が科学教育に求められる。

A

今回の要約で、「化け物」を出してもよいか迷うかもしれませんが、今回のような文章の場合、「化け物」を出さずに要約することはできません。

そして、今回の核となる部分は、「かつて人間が化け物に対して抱いていたような気持ちが、現代の科学を進歩させるうえで必要である」ということです。文言はこうである必要は全くありませんが、このようなことを書いて欲しいです。

 

Bさんの答案

短いですね。多分71字しかありません。基本は8割以上ないと採点されません。

そして、100字要約が求められている以上、それに大きく字数が足りていないと、1つ2つ大きな要素が足りていないということです。

「心持ちをもって」は表現としてくどいですね。

「化け物」もいません。

Cさんの答案

「人間文化の進歩」「科学の進歩によって科学を簡単に説明して」というのは前述の通り。

「「化け物」は活躍し環境の変化をもたらしてきた。」とありますが、「化け物」が「環境の変化をもたらした」とは書いてありません。時代ごと、地域ごとの化け物の姿の違いが、環境を反映していると書かれているだけです。

「科学を進歩させるには化け物教育が必要だ。」というのはGoodですね。

Dさんの答案

なにより、要約文中に「筆者は~と促している」とあるのがNot Goodです。要約は、文章の要旨を短くまとめるものであって、客観的に書くものではありません。

Eくんの答案

最後の部分が若干弱いですが一応A答案でしょう。

書き出しは、「昔の人は自然界の不可解な現象を化け物の所業として説明した。」となっていますが、僕が要約を書くとしても、この一文を引きます。

論理展開・論旨展開も意識的にされていて、要約の一応のお約束は踏まえられていると思います。

 

 

いかがでしたでしょうか。

普段見ることのない他の人の答案がみられて、少し学べるところ、気付くところがあったかもしれません。

今後の現代文論述に活かしてもらえれば幸いです。

 

さらばじゃ。

 

 


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