はじめに
現代文で受験生が落としがちになってしまう問題の種類はいったい何でしょうか?多くの人は評論問題か小説問題の二つに大きく分けて現
代文を考えていると思います。もちろん大半の点数は読解の問題に集中するので現代文を勉強する受験生にとっては最も時間をかける分
野でしょう。しかし、一言で現代文の問題と言っても漢字の知識や四字熟語の知識を問われる問題、テーマ別の背景にある知識
を問われる問題・作者と年代を問われる問題など様々です。その中でも意外と対策が行き届いておらず点を落としがちになってしまう
のが文学史の知識を求められる問題です。皆さんも現代文の問題を解いていたら文学史の問題に行き当たり、分からなかったという経験が
あるのではないでしょうか?そこで今回は文学史の中でも現代文において重要である近代文学史の紹介をしたいと思います。受験直前に少
しでも多く知識を詰め込み本番に臨むようにしましょう!
明治時代
まずは日本の近代文学が始まった明治時代を確認していきましょう!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー初期→明治時代初期は開国に伴って西洋文明が日本に入ってきた時期です。西洋文化の考え方は実用主義・功利主義です。その
ような考え方を受容していったのが福沢諭吉や西周などの啓蒙家です。しかし文学史にとって大事なのはこのような真面目な文学とは真逆
の作風を持つ戯作の文学と言えるでしょう。戯作文学は駄洒落やゴシップなどの俗文化に根差したものです。代表的な人物に仮名
垣魯文(かながきろぶん)などがいます。彼が書いた「安愚楽鍋(あぐらなべ)」は西洋文化に染まる日本人をうまく風刺したこと
で有名です。
☆覚えるべき重要人物☆
坪内逍遥(つぼうちしょうよう)・・・坪内逍遥は近代小説を語るうえでとても重要な人物です。逍遥にはこれまでの小説とは
一線を画す「小説を芸術作品にする」という目的がありました。しかし逍遥はそれを達成させるまでには至りませんでした。代表作品は
「小説神髄」です。
二葉亭四迷(ふたばていしめい)・・・二葉亭四迷は坪内逍遥の目的である小説を芸術作品にすることを実践した人物です。二葉亭四
迷は逍遥には批判的でしたが独自の時点で逍遥の目的を達成しました。代表作は「浮雲」です。
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中期→明治時代中期は書き言葉と話し言葉が一致しておらず、漢文体や口語体を織り交ぜながら新しい文章体が模索されていまし
た。また、このころになると作家同士の交友関係や取引・コミュニケーションをする場として文学に関わる人たちの独自のコ
ミュニティが作られるようになります。尾崎紅葉の硯友社などがその先駆けとして有名です。
☆覚えるべき重要人物☆
森鷗外(もりおうがい)・・・森鴎外は↑に記した新しい文章体を模索した一人でもあります。当時は雅文体(古文のような文章・主語
がなくてもいい)という文章体も主流でしたが西洋では必ず主語が求められるため、鴎外は英語に似た雅文体を作るなどの実験もしました。
代表作は「舞姫」です。
樋口一葉(ひぐちいちよう)・・・五千円札でも有名な樋口一葉は「現実と非現実」などをテーマに小説を書きました。これは明治時
代でも大きく注目されたテーマです。また、一葉は浪漫主義文学の拠点となった雑誌「文学界」に小説を発表したことでも有名です。代表
作は「たけくらべ」です。
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後期→明治時代後期は西洋から「自然主義」が入ってきて主流な考え方となります。自然主義は一言でいえば「正確に現実を書きと
る」ことです。しかし日本に導入されたときはどういうわけか「正直に現実を描く」ということに変わっていました。日本の自然主義の
主張は「無愛想・無解決・無条件」と言われ、まさに現実をありのまま書いていました。
☆覚えるべき重要人物☆
田山花袋(たやまかたい)・・・自然主義と言えばで名前が出てくる人です。代表作に「蒲団」があります。「蒲団は」、作家の主人
公が自分の女弟子に恋愛感情を抱いてしまい葛藤するという内容です。
島崎藤村(しまざきとうそん)・・・田山花袋の小説に感銘を受け小説にのめりこむ人です。代表作はいろいろありますが「破戒」が
有名です。
(↑文学史の問題演習ができる参考書① 「現代文読解力の開発講座」)
大正時代
大正時代では明治時代の終わりに主流となった自然主義派に反対した反自然主義派が活動を始めることが特徴的です。なので、反自然主義
派と残された自然主義派の関係が肝となってきます。以下では主要な反自然主義派とその代表人物や著作を見ていきましょう
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「耽美派」→耽美派は読んで字のごとく「美に耽る」ジャンルです。具体的には、道徳観や常識にとらわれず自分の世界観が
前面に出された作風になります。なので、人によって好みが分かれるジャンルでもあります。
☆覚えるべき重要人物☆
谷崎潤一郎(たにざきじゅんいちろう)・・・谷崎潤一郎は過激な作風から文壇の中でも異彩を放っていました。潤一郎の作品は虚構
性が強く現実離れしたものが多いです。代表作は「痴人の愛」などがあります。
永井荷風(ながいかふう)・・・永井荷風は、当時では珍しく海外への渡航経験もあり、留学の経験もあります。そのため、彼の作風も
海外での体験をもとにしたものも多いです。代表作は「地獄の花」などです。
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「白樺派」→白樺派は一言でいえば「白樺」という同人誌に載った人物たちのことです。同人誌とは自分の作品を発表したい人
たちが自分のお金で刊行する雑誌です。特徴として、自己肯定・個人主義・生命・人道主義です。これらは自然主義派の考えとは大き
く異なります。
☆覚えるべき重要人物☆
武者小路実篤(むしゃのこうじさねあつ)・・・武者小路実篤は恋愛調の作品が多いです。恋愛賛美・自己肯定などの姿勢から成
る作品が多いといえます。代表作は「お目出たきひと」などです。
志賀直哉(しがなおや)・・・志賀直哉の代表作である「和解」は彼の父親との長年にわたる確執との決着が描かれています
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「新思潮派」→新思潮派は「新思潮」という東大の作家志望の学生により刊行された雑誌を書いた人物たちです。新思潮派の作風は物
語を作りこんで徹底的にフィクションを構築するといったものです。
☆覚えるべき重要人物☆
芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ)・・・自然主義とは違い実際の生活とは距離を置いた作風にした。代表作は「羅城門」など。
(↑文学史の問題演習ができる参考書② 「近代文語文問題演習」)
昭和時代
昭和時代は関東大震災や第二次世界大戦・高度経済成長が起きた年でもあります。その中で多くの作家たちは独自の文学の形を作り上
げていくことになります。ここでは昭和時代の代表的な文学と作家を紹介していきます。
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「心境小説」→「人格を作り上げる」という価値観の元作られる。代表的な人物は志賀直哉(代表作 城の崎にて)など
「プロレタリア文学」→労働者階級の厳しい現実を描いた本。代表的な人物は小林多喜二(代表作 蟹工船)など
「新感覚派」→現実至上主義からの脱却を目指したもの。代表的な人物は川端康成(代表作 雪国)など
「無頼派」→戦後の混乱の中、様々な権力に反抗したことが特徴的。代表的な人物は太宰治(代表作 人間失格)など
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上記に紹介した文学と作家などは最低限抑えておくべきものです。この他にも代表的な人物や代表的な著作は多くあるので自分で調べてみる
ようにしましょう!
最後に
(↑文学史の問題演習ができる参考書③ 「文学史SPEED攻略10日間」)
今回は近代文学の大まかな流れや代表的な人物・著作を紹介しました。受験で使う知識としては最低限覚えるべき範囲なので入試や模試
で出てきた時でも落とさないようにしましょう!またさらに詳しく文学史を知りたい人は今回上げた著作を実際に読んでみたり時代背
景・作者の生い立ちなどを調べるともっと知識が深まります。文学史をしっかり覚えてさらに勉強の幅を広げていきましょう!
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