高校物理は入試のためだけじゃない!みなさんの日常は物理で溢れかえっています。
今回は特に身近な5つの事柄について、高校物理の視点から解説していきます。
目次
電子レンジ
電子レンジは食品を温めなおすのにとても重宝します。
みなさんはそんな電子レンジがどうやってモノを温めているか知っていますか?
仕組み
電子レンジは、電磁波(マイクロ波)を照射して水分子を振動させ、その摩擦熱で加熱させます。
つまり、水を含む食品は加熱させることができます。逆に言えば、水分子を含まないものはうまく加熱させることができません。
加熱原理
水分子(H2O)は、プラスの電荷をもった水素分子(H)2つと、マイナスの電荷をもった酸素分子(O)1つから構成される「極性分子」です。
外部電場がない場合は、トータルとして見ると電荷の偏りはありません。しかし、外部電場がある場合は、電荷の偏りを持ちます。
水分子にマイクロ波を当てると、電場の向きが交互に変化し、水分子の向きも交互に変化します。つまり振動します。
この振動により熱が発生するというわけです。
生卵を電子レンジに入れると?
爆発します。
プロセスは以下の通りです。
1.卵の内部の水分子が温まる。
2.外側が殻で覆われているので水蒸気の逃げ場がなく、高圧となる。
3.卵の内部が高圧により膨張しようとし、殻を突き破ってしまう。
4.内部の水蒸気が外にあふれだし爆発する。
電子レンジは大変便利ですが、このような危険もあります。
他にも電子レンジで温めると危険な食材・モノはたくさんあります。
電子レンジの仕組みを正しく理解したうえで正しい使い方をしましょう。
冷蔵庫
みなさんは冷蔵庫がどうやってモノを冷やしているか知っていますか?
アイロンやドライヤーみたいに電気を使って熱を作り出すのは容易に考えられますが、冷蔵庫は電気を使ってどのように冷やすのでしょうか。
仕組みと冷媒
冷蔵庫には、冷媒が入ったパイプが張り巡らされています。そして、冷媒は冷蔵庫の外と中をぐるぐると回っています。
冷媒は冷蔵庫の中では液体、冷蔵庫の外では気体になっています。
冷却過程
1.冷蔵庫の中の熱を奪って液体の冷媒が気体になります。
2.冷媒はパイプ途中の圧縮機に集められます。
3.気体になった冷媒が圧縮されると液体に変わります。
4.気体が圧縮されて液体になると、冷媒の温度が上がり、外に熱を捨てます。
熱を奪う?熱を捨てる?あまりピンとこない人が多いと思います。以下で解説します。
気化すると熱が奪われる
アルコール消毒をした際にひんやりとするのは既知の出来事かと思います。これは液体であるアルコールが蒸発するときにまわりの熱を奪うために起こる現象です。
つまり、気化するときにまわりの熱が奪われるわけですね。
このように液体の物質が気体になるときに周囲から吸収する熱のことを気化熱といいます。
気体を圧縮すると温度が上がる
気体に圧力を加えると液体になり温度が上がります。
理想気体を考えたとき、ボイル・シャルルの法則(PV=nRT)からも、圧力を上げると温度が上がり、圧力を下げると温度が下がることがわかります。
空の色
みなさんは空がなぜ青いのか知っていますか?また、時間帯によって赤色やオレンジ色にもなりますよね。
そんな不思議な空の色について解説します。
空が青色の理由
空が青い理由を説明する前に大前提として、光は波長によって色が違うという性質があります。
波長が短い光は青色や紫色、波長が長い光は赤色に見えます。
実際、一般的に言う光は、いくつもの光が組み合わさっていて、それぞれの光にはそれぞれの波長を持っています。
この光を波長の成分で分解したものを「スペクトル」といいます。
太陽光を地球の空気層に入射した時を考えてみます。
太陽光は空気中の酸素分子や窒素分子と衝突し、向きが変わります。これを「散乱」と言います。
波長が短いほど「散乱」は強くなるため、青い光が赤い光よりずっと強く散乱されます。
そのため、空が青く見えるのです。
ちなみにもっと波長の短い紫が見えないのは人間の目が紫を感じにくいためです。
夕焼けがオレンジ色の理由
朝焼けや夕焼けはなんでオレンジ色に見えるんでしょうか。
これも光の性質で説明できます。
朝と夕方の空がオレンジ色になるのは、太陽の光が突き抜ける大気層の距離と道筋に関係があります。
通過する大気層の距離が長くなるので、青い光は「散乱」されきってしまい、逆に「散乱」されにくい赤色やオレンジ色が強調されて人間の目に届くためです。
光を学ぶ学部
光に興味を持たれた方はぜひ工学部に進学し、「光学」という学問に触れてみてください。
また、光の波動性に着目した「電磁気学」と粒子性に着目した「量子力学」があります。
とても奥深く、楽しい学問ですよ!ぜひ勉強してみてください。
共振と橋の落下
みなさんは共振という言葉を聞いたことがありますか?
吹奏楽部の人はよく耳にする言葉かもしれませんね。共振は正しく理解していなければ大きな事故に繋がることがあります。
共振とは
弦や管などには、サイズに応じて振動しやすい固有振動数が存在します。
この固有振動数に合わせた外力を加えると、小さな力でも大きく揺れます。この現象を共振と言います。
難しく見えますが、みなさんも小学生か中学生のころ、共振現象を理科の実験で見たことありますよ!
身の回りの共振現象
二つのおんさを用意して、一方だけをたたいて音を出すと、他方もわずかに振れて音を出します。
(しかし、振動数の異なるおんさでは、そのような共振現象はみられないですよ)
「なぁーんだ。おんさの実験ね。あ、つまり共振現象って音なの?」と聞こえてきそうですが、半分正解で半分不正解。
共振現象は音でも観測することができますが、音ではなく波動現象なのです。
共振現象(波動現象)
実は波動現象である地震でも共振による被害が出ることがあります。
数十秒周期の長い周期で揺れる震動は「長周期地震動」とよばれますが、この周期は超高層ビルの固有振動数と一致しやすいのです。
震源地から遠く離れた場所で、ビルが大きく揺れるのは、共振現象の現れということですね。
共振によるつり橋の落下
実は共振によって大きな災害になることがあります。
有名な例として1850年4月に起きたフランスのアンジェにあったバス・シェーヌ橋の大惨事があります。
478人の軍隊が足を踏みそろえて橋を行進したところ、橋が共振を引き起こして落下。226名が死亡したという痛ましい惨事です。
この後、橋は設計段階で改良を重ねられていきましたが、1940年11月には、アメリカ・ワシントン州のタコマ橋が落下する事故は起きています。
風速60m/sまで耐えられるように設計されたつり橋でしたが、当日の風速はわずか19m/sだったそうです。
雷
みなさんは夏の夕方ごろによく雷が発生していたという印象がありませんか?
雷が発生するのは積乱雲という雲が関わっていることが多いです。
発生のメカニズム
急激な上昇気流で発生した積乱雲の中では、水蒸気同士がこすれあうことによって、電気が発生します。
この時、小さな氷の粒が正電荷に、大きな氷の粒が負電荷になります。
(どうして大きな氷の粒が負電荷になるのかは、まだ解明されていないそうです)
大きな粒のほうが重たいので、雲の下のほうに移動し、小さな粒は上昇気流によって雲の上のほうに移動します。
そのため、雲の下のほうでは負の電荷が、雲の上のほうでは正の電荷が集まります。
また、雲底に集まった負電荷によって、大地では正電荷が誘導されます。これを「静電誘導」といいます。
そして、負に帯電している雲の下部分と、正に帯電している地表の電位差により空中放電します。
つまり雷の正体とは、上記過程により雲と地表の間で放電する現象といえます。
雷の威力
雷は空気中では3万[V/cm]で放電が開始します。
1回の落雷で放電量は数万~数十万[A]、電圧は1~10億[V]、電力換算で平均約9000億[W]にも及びます。
エネルギーに換算すると約9億[J]であり、これは家庭用エアコンを240時間連続運転することができます。
しかし、落雷の発生時間は1/1000秒程度でしかありません。ほんの一瞬ですね。
武田塾小牧校とは