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理系のための英文法再入門 第6講 受動態 (2) ― 受動態に関する実戦的なお話 ―

皆さんこんにちは。武田塾春日井校の森山です。またまた間隔がずいぶん空いてしまいましたが、「理系のための英文法再入門」第5回目・6回目は「受動態」を取りあげています。その2回目に当たる今回は、「受動態」に関するもう少し実戦的なお話をしたいと思います。

理系のための 英文法再入門 受動態

各種の文型の能動態の文を元にした受動態の文

 「受動態」と聞くと、元の文(能動態)の目的語を主語とした be 動詞 + 過去分詞 の文型を思い浮かべる方が多いと思います。ですが「受動態」というのは本来、文型の名前ではありません。「態(タイ)」の読みが「体(タイ)」に通じるためもあるのでしょう。受動態の文とは、元の能動態の文の目的語を主語として、その主語(元の文の目的語)が「~される(た)」という受け身の意味を表す表現形式です。第5講「受動態(1)」でも述べたように、動詞の過去分詞は「完了相」と「受動を表す態(受動態)」を持ちます。そして過去分詞は動詞の変化形(もはや動詞ではない)で、形容詞の文法規則に従います。ただし、もとの動詞が持っていた目的語や補語をとるという性質は継承されます-これ重要。そこで、「受動を表す態」を持つ形容詞である過去分詞を be 動詞の補語として用い、受け身の意味を表したものがいわゆる「(be 動詞 + 過去分詞 の形の)受動態」であると言うことができます。

 「元の文(能動態)の目的語を主語とする」と言うことですので、目的語(O)を持つ能動態の文はいずれも受動態の文になり得ます。具体的には、第3文型(SVO)、第4文型(SVO1O2)、第5文型(SVOC)がそれに当たります。

 中学校や高等学校で「受動態」を学習するときには、もっぱら第3文型を元にした書き換えばかりやらされるので、第4文型や第5文型を元にした受動態の文でつまずく人が目に付きます。このとき重要なのが、上記下線部の「もとの動詞が持っていた目的語や補語をとるという性質は継承される」という、過去分詞の持つ性質です(長いので以下「性質A」と呼ぶことにします)。以下、具体的に見ていきましょう、

 

・第3文型を元にした受動態の文

 [能動態] Thomas Edison invented the gramophone.  (トーマス・エジソンが蓄音器を発明した)

 [受動態] The gramophone was invented by Thomas Edison.

         (蓄音器はトーマス・エジソンによって発明された)

教科書で見るようなごく一般的な受動態の文です。能動態の文と受動態の文を比較すると、能動態の文は単に事実を述べているのに対し、受動態の文では発明者のエジソンがやや強調されている語感があります。(この点に関しては、少し先の「なぜ受動態を使うのか」で詳しく述べます)

ダウンロード

・第4文型を元にした受動態の文

 [能動態] Kenshin gave Shingen salt.  (上杉謙信が武田信玄に塩を贈った)

 [受動態] Shingen was given salt by Kenshin.  (武田信玄は上杉謙信から塩を贈られた)

第4文型の文の O1(間接目的語)を主語とした受動態の文です。was given の後ろには「性質A」に従って、元の文の O2(直接目的語)である salt を置き、by Kenshin で贈り主(元の文の主語)を表しています。第4文型は O1 O2 と2つの目的語をとりますが、多くの場合 O1 は「人」、O2 は「もの」を指しており、O1 を主語とする受動態の方が一般的で、O2を主語とする受動態はあまり見かけません。O2を主語とすると、「性質A」がそのままの形では使えず、Salt was given to Shingen by (from) Kenshin. とせざるを得ないからでしょう。ただし、この例文の場合、「塩」とその贈り主に注目が集まっている場合(もしくはこの例文でなくても、O1 の人にあまり注意が当たっていない場合も)には、

The salt was given by Kenshin. のような受動態の文が考えられます。

 

・第5文型を元にした受動態の文

 [能動態] Kenshiro named his dog Tanjiro.  (ケンシロウは彼の犬を炭治郎と名付けた)

 [受動態] The dog was named Tanjiro (by Kenshiro).

  (その犬は(ケンシロウから)炭治郎と名付けられた)

第5文型の文に含まれる目的語は一つだけですから、それを主語とした受動態の文になります。
was named の後ろには「性質A」に従って、元の文の C (目的格補語)である Tanjiro を置き、by Kenshiro で名付け親(元の文の主語)を表しています。

 

be 動詞 + 過去分詞 だけが受動態ではない

 「受動態」とは、「受動を表す態」を持つ形容詞である過去分詞を be 動詞の補語として用い、受け身の意味を表したものがいわゆる「(be 動詞 + 過去分詞 の形の)受動態」であると上に述べました。

 できあがった受動態の文を「5文型」にあてはめて考えてみると、第2文型(SVC)ということになります。この文型をとる動詞(自動詞)はbe 動詞だけではありません。形容詞を補語として取り得る自動詞ならば、be 動詞でなくても「受動を表す態(受動態)」を持つ過去分詞を補語として受動態の文を作ることができそうです。

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 ・The window remained broken.  (窓は壊れたままだった)

 ・This fish seems grilled well.  (この魚はよく焼けているようだ)

 ・He got astonished.  (彼はびっくりした) ← この場合の get (got) は自動詞。

 ・The door is kept opened.  (扉は開いたままにされている)

 ・She has become well known.  (彼女は今や有名人だ)

 ・Stay sheated, please.  (座ったままでいてください) ← 受動態の命令文です。

(sheated をただの形容詞と考えると、普通の命令文です。)

 

なぜ受動態を使うのか?

 能動態でも受動態でもほぼ同じ意味内容を表すことができます。それにもかかわらずこれら二つの表現形式が存在する(いずれの形も生き残っている)のはなぜでしょうか。それは、文脈や会話の流れによって、そのときそのときにふさわしい(必然性のある)表現が選択されるからです。それでは受動態を使用する理由・目的を列記していきましょう。

  • 行為者(能動態の文の主語)が不明な場合

    「誰かに鞄を盗まれた」などという場合には、盗んだ犯人が誰かはわかりません。そこで、
     A mail coach was attacked between A-Town and B-Town.
                   (A町とB町との間で郵便馬車が襲われた - 西部劇映画のお話)
     My bag was stolen while I was away from the table. (テーブルを離れた隙に鞄を盗まれた)
    などとなります。第2の例の場合、I had my bag stolen ~ の形をとることもできます。 これは受動態の文ではありませんが、my bag stolen のように過去分詞が後ろから名詞を修飾する場合、過去分詞は受動の意味(受動態)を持っていることがほとんどです。

  • 行為者を明確にしたくない(行為者の責任を強調したくない)場合

    のび太君はたまたま、しずかちゃんが誤って窓ガラスを割ってしまったところを目撃してしまいました。これを先生に報告するのに、しずかちゃんがやったとは言いたくありません。そこで、先生には
     The window is broken. (窓が壊れています)
    と報告します。当然、by Sizuka などという余計なことは言いません。もしガラスを割ってしまったのがジャイアン(熊田君)だったら、のび太君はきっと Kumada-kun has broken the window. と報告することでしょう。これを更に The window has been broken by Kumada-kun. とすれば、さらにジャイアンの責任を強調する表現になります。前置詞 by を付けることで行為者が強調されています。

  • 行為者がわかりきっている場合

     Japanese is spoken in Japan. (日本では日本語が話されている)
    日本に住んで日本語を話しているのは大部分が日本人ですから、これは当然ですね。

  • 行為者に焦点が当たっていない(誰がやった[やっている]かはどうでもよい)場合

    行為者が誰かはどうでもよく、受動態の主語(動作を受ける主体)にまつわる話題に焦点を当てたい場合です。
     Ball-point pens are used throughout the world. (ボールペンは世界中で使われている)
    最初の節の O2 を主語とする受動態の例で挙げた、上杉謙信と塩の例も、この場合の一種であると考えることができます。

  • images
  • 能動態にすると主語が長くなりすぎる場合

     English is learned by millions of people who want to communicate globally. 
           (英語は国際的にコミュニケーションを図りたい何百万人もの人によって学ばれている)
    この文は能動態でも書くことができます。ですが、
     Millions of people who want to communicate globally learn English.
    では頭でっかちのバランスの悪い文になってしまいます。

  • 主語に焦点を当て続ける

     Naoko was walking along a river and a stranger talked to her. 
                    (奈保子が川沿いに散歩をしていると知らない人が話しかけてきた)
    この文には Naoko と a stranger という2つの異なる主語があります。常に Naoko に焦点を当てた話をしたいのであれば、後半の文に受動態をもちいて
     Naoko was walking along a river and was talked to by a stranger. 
    とすることによって、奈保子に焦点を当て続けることができます。

  • 英語では受動態でないと表現しづらい場合

    日本語では「おどろく」「よろこぶ」「関心がある」「熱中する」「満足する」などを表現する場合、左記のように能動表現をとるのが普通です。これに対し、英語では上記のような内容を表す適当な自動詞がないため、他動詞を受動態で用いて表現するのが普通です。
     I was surprised at this result. (この結果にはおどろいた)
     Naoko was so delighted to find her favorite cake remaining.
                 (奈保子は大好きなケーキが残っているのを見つけて大喜びした)
     Steve Jobs was interested in Zen.  (スティーブ・ジョブズは禅に興味を持っていた)
     He is absorbed in developing an effective utilization of the material. 
                (彼はその素材の効率的な利用法を開発することに夢中になっている)
     Are you satisfied with your current position?  (あなたは現在の地位に満足していますか)

  • images (1)

受動態とともに使われる前置詞(行為者を示すばかりではない)

 受動態の文において、動作主を示す場合には by ~ が一般的に用いられますが、行為者をとくに明らかにする必要がない場合にはby ~ が省略されることも一般的です。また、動詞によっては by 以外の前置詞がしばしば慣用的に用いられます。これは行為者というよりは、手段・材料や原因・理由などを表すことが多く、副詞的な要素が強いと言ってよいでしょう。この動詞と前置詞の組合せ(前置詞の選択)は、主にその前置詞の持つ「基本的イメージや語感」によっていることが多いようです。また、同じ動詞であっても取り合わせる前置詞によって全く意味が変わってしまう場合も数多く見られます。さらに、一つの受動態の文の中に複数の前置詞句が用いられる場合もあります。これらの前置詞句はすべて副詞句となります。

 

前置詞の持つ基本的イメージ

 まず、よく用いられる前置詞が持つ基本的なイメージや語感を整理しておきましょう。

 at : 何か(物、事、場所、など)を指さすイメージです。

be disappointed at :           ~に失望している

be excited at :                    ~に興奮している

be surprised at :                ~におどろく

be shocked at :                     ~に衝撃を受ける

 

 with : 何か(人、物、ある程度長く続く感情、など)と一緒にいるイメージです。

   まず、人がくるパターン

be acquainted with :           ~と知り合いだ

be crowded with :                ~で混雑している

   ある程度長く続く感情がくるパターン

be delighted with :              ~で喜んでいる

be pleased with :                 ~で喜んでいる

be satisfied with :               ~に満足している

   物がくるパターン

be concerned with :             ~と関係がある

⇒be concerned about :    ~について心配している

⇒be worried about :        ~について心配している

be covered with :                 ~で覆われている

be filled with :                     ~でいっぱいだ  be full of :       ~でいっぱいだ

 

 in : 何かの中に包み込まれているイメージがあります。

     このため受動態では、人を包み込むような状況を示します

be absorbed in :                   ~に夢中になっている

be caught in :                       ~にあう

⇒I was caught in a sudden shower.  (急などしゃぶりにあった)

be engaged in :                    ~に従事している、~に夢中だ

be injured in :                      ~でけがをする

⇒I was injured in a car accident.  (自動車事故でけがをした)

be killed in :                         ~で死ぬ

⇒My grandfather was killed in WW.  (私の祖父は第二次世界大戦で戦死した)

be interested in: ~に興味がある

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 to :方向を指し示すイメージがあります。 このため受動態では、動作の行き着く先を示します。

be accustomed to 名詞/Ving :          ~に慣れている(状態)

be used to 名詞/Ving :                      ~に慣れている(状態)

get/become accustomed to 名詞/Ving :  ~に慣れる(動き)

get/become used to 名詞/Ving :        ~に慣れる(動き)

be devoted to 名詞/Ving :                 ~に専念している

 

of from

 of も from も多様な意味・用法があります。

 まず of ですが、A of B のコアイメージは「所属(B)からの分離」です。具体的には、
1. B の A                                              2. Bでできている (構成要素・物質)
3. B について                                         4. B という A  (同格)
5. B 出身の(起源)、B が原因で(結果)                 6. B を、B から (分離)

 で、受動態と組み合わせて使われるのは主に 2. の「構成要素・物質」です。

 つぎに from ですが、from ~ のコアイメージは「(~が)出発点」です。具体的には、
1. 出発点 (~から)                               2. 原料 (~からできている)
3. 原因 (~が理由で)                           4. 分離 (~から離れて)
5. 区別 (~から、~と)                          6. 防止 (~から遠ざける、~させないようにする)

 ですが、受動態の過去分詞を形容詞だと考えてしまえば、ほぼすべての組合せが成立します。

 受動態で問題になるのは、of の「構成要素・物質」と from の「原料」の使い分けでしょう。

    This desk is made of wood. (この机は木でできている)

    Sake is made from rice. (酒は米から作られる)

  大雑把に言って、対象物を目で見てその素材が認識できる場合は of 、対象物からその原料が想像しづらい場合は from を使うと考えて良いでしょう。

 

known のバリエーション

 know(過去分詞は known)は前置詞との取り合わせで意味が変わる動詞の代表格です。

・A be known to B: AはBによって知られている (toは方向)

Japanese animation is known to people all over the world.

(日本のアニメは世界中の人々に知られている)

to には方向のイメージがあります。このため、「日本のアニメ」という情報が、
「世界中の人々に」向かって届けられているというイメージです。

・A be known as B: AはBとして知られている (asはイコール)

Albert Schweitzer was also known as an organ player.

(アルベルト・シュヴァイツァーは、オルガン奏者としても知られていた。)

as には「イコール(=)」のイメージがあります。このため、「アルベル・シュヴァイツァー」が、
イコール「オルガン奏者」として認識されるというイメージです。

・A be known by B: AはBによってわかる (byは「~によって」)

A tree is known by its fruit.  (木はその実を見れば分かる → 子を見れば親がわかる)

「A be known by B」という表現は「AはBによって知られている(Bが知っている)」の意味で使用されることもありますが、一般的には、「AはBによってわかる(B を見ればわかる)」の意味で使用されます。

・A be known for B: AはBが理由で知られている (for は理由)

Japan is known for the long history.  (日本はその長い歴史で知られている。)

前置詞 for には「理由」のイメージがあります。文語的で少し硬い表現になりますが、for には等位接続詞としての用法があり、

  I am really tired, for I have been working for 18 hours.

(私はすごく疲れています。というのは、もう18時間も働きっぱなしだからです)
のように使われます( ,(コンマ) のすぐ後ろの for が等位接続詞です)。ここから前置詞 for にも「理由」のイメージがあるのでしょう。

images (2)

前置詞句(副詞句)てんこ盛り

 最後に一つの受動態の文に複数の前置詞句(副詞句)が用いられている例をご紹介します。

The cloth is woven of the finest silk by experienced weavers with hand looms in China.

  (この布地は、中国で〔場所〕、熟練した織工が〔行為者〕、最良質の生糸を用い〔材料〕、手ばたで〔道具〕織ったものである)

 

 

第6回は以上です。今回も長くなってしまいましたが、最後までお付き合い頂き、まことに有り難うございました。

 

【参考文献】

  • 澤井康裕 著 英文法再入門                                                              中公新書
                  (今回はこの本の第4講の内容を中心に記事を作りました。)
  • 石黒昭博 監修 総合英語 Forest (フォレスト)                                    桐原書店
                  (仮定法や受動態の種類・使い方・注意点などがよくまとまっています。)

今回の話題でも、多くのウェブサイトを参考にしました。個別の名前を挙げることはやめておきますが、興味のある方は適当なキーワード(受動態、前置詞など)を入れて探して、ご自身の目的に合うものを見つけてください。

 

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