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【サンプル問題実況解説から紐解く】歴史総合科目って何すればいいの!?いますぐ対策を始めよう!【上越 塾 個別指導 大学受験】

2024年もよろしくお願いいたします、上越校文系講師の町です。

私大入試も佳境を超え、週末には国公立大学入試前期日程が控えています。

2年生の諸君は1年後の自分の状況をイメージできているでしょうか?

1年後、2025年の大学入学共通テスト及び各大学の個別試験から「歴史総合」科目が課されることは周知の通りと思います。端的に言えば、日本史と世界史の近現代史を横断的に学ぶ科目、ということになります。

25年度以降の大学入試に臨むことになる現在の高2生以下の学生さんはすでに学校でも歴史総合科目を学んでいることと思います。

どうでしょう?科目特性、つかんでますか?

共通テスト、私大入試、高得点狙えるか不安じゃないですか?

ということで、そんなあなたの不安を取り除きたい!

今日は当局が公表している大学入学共通テストにおけるサンプル問題「歴史総合」を解きながら、対策を一緒に考えていきたいと思います。

 

また、浪人生のみなさんは学校で学ばなかった歴史総合科目の対策が新たに必須になってくるところ、この記事では、日本史選択でこれまで真剣に勉強していれば浪人生も歴史総合科目に臆することはない!と勇気を持ってもらえる記事にしたいと思います(もちろん、最低限は新しい科目としての歴史総合を勉強してくださいね)

なお、当該サンプル問題は入試センター当局も弁明しているように、その趣旨はあくまで「具体的なイメージの共有のために作成したもの」であり、当該サンプル問題は歴史総合の「教科書の検定中に作成した問題であるため」「教科書と照合するもの」ではなく、「問題構成は未確定であり、今後、検討されるもの」であるため、実際の問題セットをイメージしたものではないという点に留意いただきたいと思います。

また、本記事内での解説でも、著作権法32条1項に基づき問題文の画像を引用しながら進めていきますが、学習上のメモの便宜などを考慮すれば、読者各自で当該サンプル問題を出力し、手元に準備した状態で読み進めていただくことをお勧めします

さらに、以前センター試験から共通テストに移行する際に、英語のサンプル問題と実際の1年目の本試験を比較したのですが、サンプル問題からかなり難易度が上がっていたことから、歴史総合の本試験も、当該サンプル問題に比して難易度はかなり上がるものと認識していただければと思います。選択肢の数が増えたり、読ませる量が増えたり、知識レベルが単純に上がったり、さまざまなパターンが想定されます。本記事では、サンプル問題を通じてどういう対策をする必要があるかをメインに述べていきたいので、その点への留意もお願いします。

ちなみに、私は受験生時代に日本史Bを選択しており、世界史はほとんどわかりません。こういう人間をなくすために導入された科目だと思っています。なので、日本史探求選択者目線の解説にはなってしまうことをご了承ください。

なお、歴史総合の共通テストにおける出題方法について、試作問題を参照するに、世界史探求選択者と日本史探求選択者とで同じ「歴史総合」科目にもかかわらず異なる問題が出題されるものと理解しています。

そうだとすれば、日本史探求選択者が解く歴史総合の問題は日本史の理解・知識を軸にその延長という位置付けで解いてOKということになる(世界史探求選択者にとっても同じことが言える)ため、本記事でも日本史探求選択者目線で進めていきたいと思います。

 

 

歴史総合サンプル問題

第1問

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まずは東西冷戦についての問題です。

世界史日本史どちらにおいても重要な現代史のテーマですよね。

先生と生徒の会話からの出題です。

問1で問われているのは資料1「自由への跳躍」という写真について。

これは組み合わせの問題ですね。空所補充と図を選ぶ問題。

空所補充の選択肢を見ていただきたいんですが、まずこの写真が有名なものなのか私は知りません。

ですが、この問題は文脈の問題です。すなわち現代文の問題です。この写真は「二つの体制の間の競争の中で、亡命を受け入れた側にこそ政治や思想・表現の自由があると主張するために使われて有名になった」と先生のセリフにあるわけです。皆さんの学習した内容で、「二つの体制」と言えばなんですか?まあ東西冷戦と書かれているのですから、社会主義陣営(東側)と資本主義陣営(西側)の対立です。どちらの体制に「政治や思想・表現の自由がある」と思いますか?西ですよね?そっちへ逃げたい。

ということで正解は「い」です。

次に地図上で欧州の国々が東西に色分けされていますが、日本史選択の皆さんも、世界地図特にヨーロッパやアジアの地図はある程度頭に入れておいていてくださいよ!?

東側の代表格であるソ連と西側のイギリスやフランスが同じ色なのはおかしいですよね。ということで、正解は「I」。

「い」と「I」の組み合わせで正解は3となります。これは簡単でしたね。

 

 

問2

自由に関する代表的な演説や文書が並んでいます。この辺りは大人になれば一般教養の範疇なのですが、学生の皆さんにおいてもそうであってほしいです。

資料4はキング牧師ですよね、I HAVE A DREAM。資料5は日本史探求選択者なら知っててほしい、平塚らいてうが雑誌『青踏』で発表した宣言文ですよね。1911年と書いてますが、年号でわからなくても、文中に「女性の自由解放」などがあるところから、世界史探求選択者でも、中学の時やったかもなあとなんとなく思い出せそうです。

おそらく歴史総合の授業で習っているとは思いますが。

資料6はフランス人権宣言ですね。資料7はピンときませんでしたが、この流れでインドとなるとガンジーでしょうか、と当たりがつきました。授業で習っている人は一瞬でわかると思います。「行動か死か」というキーワードですね。

問2はこれらの資料で使われている「自由」の意味の解釈として誤っているものを選べ、という問題。

資料4は人種差別の撤廃という意味で、資料5は性差別の克服、資料7は植民地支配からの独立、とわかりますよね。資料六のフランス人権宣言は人間の自由という、より広範な自由を指しています。そうだとすれば、1が正解となります。一党独裁体制の打倒という意味で使われているものはありませんね。

 

問3

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資料2は日本史探求選択者なら一瞬でわかる、レッドパージです。年号も1950年ですし。世界史探求選択でもわかると思います。

これは共産主義者を公職から排除するものでした。イにはいるのは「え」ですね。

そして、その背景として適当でないもの。これも年表が頭に入っていれば秒殺です。Cだけ60年代の話なんですよね。というわけで「C」が違う。

よって「え」と「C」の組み合わせで正解は7。

 

問4

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下線部C、東西冷戦では実際に戦争は起きなかったのか、について資料3の表に関するメモ。共通テストっぽいですね〜。

メモ中の中身はベトナム戦争ですよね、北爆とかありますし。この時期と地域なんですが、まず地域はアジアで、本格化した時期は60年代中盤からですよね?bの時期。なので「か」の組み合わせ。

そして、空所エに入る文章ですが、PKO協力法は湾岸戦争を受けてのものでしたよね、90年代。Xが正解。

よって正解の選択肢は「か」と「X」の組み合わせ、3です。

 

問5

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アメリカ、日本、ソ連ロシアの一人当たりGDPの問題。国内総生産。よく使われる指標ですが、ちなみに、GDPと1人あたりGDPとは全く違う指標になります。それがよくわかるのが、2022年の日本のGDPはアメリカ、中国に次いで世界第3位であるところ、日本の一人当たりGDPはなんと32位になります。GDPは国の景気を図る指標ですが、一人当たりGDPは国の平均的な豊かさを図る指標です。

すなわち一人当たりGDPが成長しているということは、一人ひとりがより豊かになっていることを意味しています(公益社団法人日本経済研究センター・コラム「齋藤潤の経済バーズアイ (第19回)一人当たりGDPの成長ではなぜいけないか(2013/10/21)より)。

日本は2013年から27位近辺で落ち着いているのですが、その前、2012年は14位。2011年18位、2010年18位、2009年17位。ですが2008年は24位なんです。この4年間だけ高い。ただ2000年には2位だったんですよね。そこをピークに、5、6、11、14、16、21、24と順調に順位を落としていった。その後持ち直した2009年からの4年間は民主党が政権を取っていた時期なんですよね。それとなんの関係があるのかはわかりませんが。

話を戻すと、社会主義国というのは基本的に1人あたりGDPは伸びません。GDP2位の中国も1人当たりGDPだと70位とかになりますから。まあ政治経済の知識かもしれませんね。ただこの問題ではアメリカが明示されているので、アメリカに近いグラフが日本だと考えるのは自然だと思います。なのでⅣのグラフは日本となり、選択肢は「2か3に絞られます。ですが、2の天安門事件は中国ではないですか?なので3が正解になります。

 

第2問

続いて第2問は、授業を受けている学生が歴史的事実をもとに議論をするという、共通テストの他の科目にも見られるまさに共通テストあるあるのスタイルですね。

Aのセクションではオスマン帝国憲法と大日本帝国憲法を並べています。

 

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問1は、両者の特徴について書かれたカードの空所補充ですが、日本史選択者であれば、まず大日本帝国憲法をみましょう。ロンドンで開かれた国際会議、と聞いてピンとくるもの、なんですか?ロンドン海軍軍縮会議ですよね?

あれは1930年台の出来事でしたよね。で、選択肢を見ていただくと、「勅許を得ないまま通商を取り決めた」とありますが、なんのことかわかります?このフレーズだけで井伊直弼のことだとわかればひとまず最低限はクリアです。大日本帝国憲法が作られたのはいつですか?1889年ですよね?井伊直弼は幕末です。しかもこの会議が軍縮会議だとわかれば通商のことは触れられないはず。そうだとすれば、3と4が消えますね。

で、軍縮会議とわかればおそらく「政府が兵力量を取り決めた」というのが濃厚になると当たりがつくはずです。

ではウが11条か7条のどちらかですが、みていくと、7条は帝国議会での権限について、11条は陸海軍の統帥権についてです。どちらが天皇の大権っぽいですかね?11条っぽいですよね。そして、統帥って言葉でピンときましたよね?統帥権干犯問題というのがありました、覚えてますか?

浜口雄幸内閣の時ですよね?ロンドン海軍軍縮会議も浜口内閣。ならばウの空所は11条がはいる。

そしたらオスマン帝国憲法のことを仮に知らなくても、5番を選ぶしかないわけです。

 

次、問2

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問1と同じく両憲法についての分析です。ひとまず日本の事情から見ていきましょう、カの空所。これは公議政体の説明として正しいものを選ぶ問題です。まあこの言葉の意味を厳密に知らなくても、漢字からの連想、また幕末以来、日本は立憲国家・議会政治の道に進んでいったのですから、「広く意見を集めて政治を行うべきとする」が入ります。自由民権運動とはまさにこれを実現させるための運動だったわけで明治初期の1番のホットワードでしょう。日本史というより現代文の問題です、これは。こういう文脈から解く問題は英語や数学でも見られるので共通テストの傾向でもありますね。

なので、知識だけで解こうとせず、文脈など総合的に判断して選択肢を絞っていくと、正解に辿り着けるというわけです。

ではオスマン帝国憲法の空所を見てみると、「□から議会制の立憲国家に変わることで非ムスリムをつなぎ止め〜」とあります。これも現代文の問題です。非ムスリムを繋ぎ止められないような内容が空所に入ることはわかりますか?議会制の立憲国家に変わったことで非ムスリムをつなぎ止める。ムスリムは宗教信者、非ムスリムはそうでない人。制度が変わることで信者ではない人をつなぎ止める必要があった。だから、変わる前はつなぎ止められないような内容。選択肢見ていくと、「イスラームの規範に基づく国家」が正解でしょう。それは信者しか繋ぎ止められないですよ。「政教分離に基づく世俗国家」は変化後の国のあり方ですからね。

 

次、問3は清の憲法を出してきました。

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比較対象ですね。カード3によると、大日本帝国憲法と共通する内容や表現が多いということですが、この経緯についての考察として空所キに入るものはどれか。1番は文化大革命による批判を反映とありますが、文化大革命は1960年代の話です。資料にもあるように清の欽定憲法大綱は1908年のもの。タイムトラベルしないと言及できません。2番は日本史選択だとあまり手を出したくない選択肢なのでパス(もちろん歴史総合をしっかり学んでいる諸君は解けると思いますが)。3番は大日本帝国憲法を制定する際に参考にしたと書かれていますが、1889年なので1908年より前ですね?ありえない。4番は、日露戦争で勝利した日本のものを参考に作ったと書いてありますが、日露戦争は1905年に終わってますから、1908年は時期的にも近いですよね、また、内容にも誤りはない。ちなみに、2番は知らなくても、皇帝の地位や議会の解散権・統帥権など、軍備や工業に西洋の技術を導入するのとはあまり関係がなさそうですよね。ということで4番。

続いてセクションBでは日本とドイツにおける教育の目的について分析しています。

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問4は2つの資料について書かれた事実として正しいものを選ぶというもの。

まずヴェルサイユ条約はいつ結ばれましたか?第1次世界大戦が終わった時期なので1910年代です。資料4は1800年代のことですから、なので「い」が正解。新体制運動は昭和の話ではないですかね?教育勅語は1890年ですから時期的に「え」が正解。共通意図ですが、読めばわかる通り、自分の国のことを言ってるんですから、国際強調の意図はなさそうですよね。「a」が正解。その組み合わせの8番が正解です。

問5は義務教育の普及についてのグラフ。

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資料7の学制は1872年に出されて、その時点で男女関係なくみんなが必ず学校に通って学ぶという方針が出されていた、国民皆学です。そうだとすれば、一条さんのパネルは誤りであることがわかります。2番と4番が消えます。1番と3番が残ったので、どちらかのパネルのみが正しいことになりますが、3番はおそらく誤ってるところはないんですよ。一方、「欧米では多くの国で女性の選挙権が与えられるようになり」というのは歴史総合で必ずやるところだと思いますが、アメリカ、イギリス、フランスなどで女性参政権が認められたのはいずれも20世紀に入ってからなので、事実と異なります。なので3番が正解です。この問題はちょっとだけ悩むところかもしれません。

 

問6はまとめの問題ですね。いわば要約問題。これ本当に社会科目なのでしょうか?スクリーンショット 2024-02-21 16.33.08

憲法による統治と教育について分析しているという大問だったわけですよね?大量消費社会は関係ないでしょう。国民国家の形成過程ですよ、「I」が正解。で、国民国家の形成過程を追究するための資料としては国籍の資格を定めた法律の条文しかないでしょう、「ii」が正解。この組み合わせの2番が正解です。

出題意図がわからないくらい、社会科目っぽさがありませんね。笑

 

サンプル問題総括

ここまで見てきましたが、どうですか?確かにちょっとクセはありますが、基本的に共通テスト全般の傾向に沿った出題ではなかったですか?また、浪人生で、学校で歴史総合を勉強していないというみなさんも、日本史または世界史をしっかりやっていればなんとなく解けてしまうものだという実感は湧きませんでしょうか?しかもそこまで細かい知識を必要としない、むしろ大きな流れの理解と、あとは現代文の力です。

サンプル問題第1問は、割と著名な、一般教養でも解けるような出題でした(まあサンプル問題なので)。

本番では初見の資料も出てくることと思います。

しかし、その資料には必ず、みなさんが学んできた内容がヒントとして出ているはずです、というか必ず出ています。なので、そのヒントに気づけるかが分かれ目になるのですが、「社会主義国では1人あたりGDPは伸びない」とか、歴史の範疇ではないですが「消費税を増やすと逆に全体的な税収は下がる」みたいな、常識として使いたい定義・理論みたいなものも導入して行けたらかなり楽な戦いになると思います(もちろん、これより難易度は上がるのでしょうけど)。

 

第2問は各国の同時期の憲法の比較。共通テストっぽいですね〜。これもまず資料の年号から正解を導けるもの、そして現代文的な空所補充問題。

あとは資料の年号から解けるものも多々あるということですね。本当に歴史科目なのか・・・。

なので、対策としては、

・まず歴史総合科目としてそれぞれのテーマを対比的に押さえること

・それらの科目と選択している探求科目とのつながり探求科目の延長として歴史総合を捉えて立体的横断的な理解

・細かい知識よりも大まかな流れを掴むことに重点をおいた学習をする

むしろこの勉強法は、日本史探求あるいは世界史探求単体の学習においても理解を助ける勉強法なので、歴史総合科目を逆に利用して、各探求科目の理解を深めていっていただければなと思います。

 

では、次回は試作問題「歴史総合、日本史探求」の歴史総合分野を解きながら分析していきたいと思います。

ありがとうございました。

 

 

 

 

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