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【大学女子枠】女子枠は必要か?東京工業大学で検証しました

皆様こんにちは!武田塾ひたち野うしく校です。

前回の記事では、東京工業大学の「女子枠」に焦点を当て、その導入の背景には女性が少ない理工系分野での活躍推進があることを紹介しました。

しかし「女子枠は男性に対する差別だ」という批判もあることは事実です。

そこで今回は、東京工業大学における「女性枠」の必要性について考察したいと思います。

 

女子枠 入試概要

試験実施方式と募集人数

◯総合選抜型(理学院、工学院、物質理工学院、情報理工学院、環境・社会理工学院)

◯学校推薦型選抜(生命理工学院)

  一般選抜(前期日程) 総合型・学校推薦型
2023年4月入学のための入試 930名 一般枠 98名
2024年4月入学のための入試

852名

(2023年入学者より78名down↓

一般枠118名

(2023年入学者より20名up↑

女子枠58名

(2023年入学者より58名up↑

2025年4月入学のための入試

801名

(2023年入学者より129名down↓

一般枠84名

(2023年入学者より14名down↓

女子枠143名

(2023年入学者より143名up↑

 

学院別 募集人数

学科

総合型選抜

一般枠

総合型選抜

女子枠

学校推薦型選抜

一般枠

学校推薦型選抜

女子枠

理学院 15名 8名
工学院 70名
物質理工学院 20名 20名
情報理工学院 6名 14名
生命理工学院 15名 15名 15名
環境・社会理工学院 20名 9名
全学合計 61名 128名 23名 15名

※一般枠との併願は可能だが、両方合格した場合は女子枠での入学となる。

 

東京工業大学 学部別男女比率(2023年)

東京工業大学の学部別男女比率を調べました。

なお東京工業大学の場合、2年生から専門の専攻に振り分けとなるため、今回は2年生から4年生までの学部生人数を調査しました。

《理学院》

  2年(男) 2年(女) 女子率 3年(男) 3年(女) 女子率 4年(男) 4年(女) 女子率
数学系 30 2 6.3% 27 1 3.6% 41 1 2.4%
物理学系 56 6 9.7% 63 3 4.5% 84 5 5.6%
化学系 28 5 15.2% 30 3 9.1% 42 3 6.7%
地球惑星科学系 20 5 20.0% 20 2 9.1% 46 1 2.1%
合計 134 18 11.8% 140 9 6.0% 213 10 4.5%

数学系、物理学系、地球惑星科学系は女子率が低く、特に数学系は学年に1~2名となっています。

 

《工学院》

  2年(男) 2年(女) 女子率 3年(男) 3年(女) 女子率 4年(男) 4年(女) 女子率
機械系 119 14 10.5% 126 5 3.8% 157 8 4.8%
システム制御系 46 2 4.2% 44 6 12.0% 44 8 15.4%
電気電子系 88 6 6.4% 92 5 5.2% 117 10 7.9%
情報通信系 45 4 8.2% 50 3 5.7% 48 5 9.4%
経営工学系 54 8 12.9% 54 7 11.5% 60 15 20.0%
合計 352 34 8.8% 366 26 6.6% 426 46 9.7%

機械系の2,3年生は5%以下、電気電子系と情報通信系は10%以下となっています。

 

《物質理工学院》

  2年(男) 2年(女) 女子率 3年(男) 3年(女) 女子率 4年(男) 4年(女) 女子率
材料系 81 12 12.9% 79 17 17.7% 104 12 10.3%
応用化学系 76 11 12.6% 77 14 15.4% 82 17 17.2%
合計 157 23 12.8% 156 31 16.6% 186 29 13.5%

どの学年も15%前後となっています。

 

《情報理工学院》

  2年(男) 2年(女) 女子率 3年(男) 3年(女) 女子率 4年(男) 4年(女) 女子率
数理・計算科学系 32 1 3.0% 34 4 10.5% 45 5 10.0%
情報工学系 59 2 3.3% 57 9 13.6% 78 7 8.2%
合計 91 3 3.2% 91 13 12.5% 123 12 8.9%

2年生は3%台ですが、その他の学年は10%前後となっています。

 

《生命理工学院》

  2年(男) 2年(女) 女子率 3年(男) 3年(女) 女子率 4年(男) 4年(女) 女子率
生命理工学系 108 35 24.5% 110 43 28.1% 141 45 24.2%
合計 108 35 24.5% 110 43 28.1% 141 45 24.2%

他の学院と比べると、25%前後と比較的高いです。

 

《環境・社会理工学院》

  2年(男) 2年(女) 女子率 3年(男) 3年(女) 女子率 4年(男) 4年(女) 女子率
建築学系 28 20 41.7% 39 19 32.8% 39 25 39.1%
土木・環境工学系 23 9 28.1% 23 9 28.1% 34 9 20.9%
融合理工学系 37 11 22.9% 37 16 30.2% 47 12 20.3%
合計 88 40 31.3% 99 44 30.8% 120 46 27.7%

建築学系は40%前後、土木環境工学系、融合理工学系も20%~30%となっており女子率は高いです。

 

(系別)2-4学年 女子率 

《理学院》 女子率 《工学院》 女子率 《物質理工学院》  
数学系 3.9% 機械系 6.3% 材料系 13.4%
物理系 6.5% システム制御系 10.7% 応用科学系 15.2%
化学系 9.9% 電気電子系 6.6%    
地球惑星科学系 8.5% 情報通信系 7.7%    
    経営工学系 15.2%    
全体 7.1% 全体 8.5% 全体 14.3%

 

《情報理工学院》 女子率 《生命理工学院》 女子率 《環境・社会理工学院》  
数理・計算科学系 8.3% 生命理工学系 25.5% 建築学系 37.6%
情報工学系 8.5%     土木・環境工学系 25.2%
        融合理工学系 24.4%
全体 8.4% 全体 25.5% 全体 29.7%

全学院(2~4年)女子率 14.1%

 

女子率が高い学院 生命理工学院、環境・社会理工学院
女子率が低い学院 理学院、工学院、情報理工学院

女子率の低い学院は理学院、工学院、情報理工学院で10%以下となりました。反対に20%以上は生命理工学院と環境・社会理工学院でした。女子が1クラスに1~2名というのは、ちょっとツライですよね。

また、多いとされる学院でも30%前後です。全体では14.1%となり、およそ女子は7人に1人の割合となります。

 

女子枠の必要性は?

東京工業大学では、女子の割合が全体の15%以下という状況ですので、確かに女子の数は少ないと感じられるでしょう。しかし「女子枠があるから理系に進もう」というのは、ちょっと短絡的ではないかと思います。

 

理系に進学する女子が少ない理由

そもそも、「なぜ理系に女性が少ないのか」という点を考えてみました。

小中学校の段階では、男女間で理系科目における差はほとんどありません。

しかし高校になると、女子が「文系に進もう」という意識を持つ傾向が見られます。

(1)理系(物理・化学)選択の女子が少ないことを懸念

進学校では理系の女子の割合が高いですが、それ学校でよりも低い偏差値の高校になると物理・化学選択科目をする女子が極端に少ないくなります。例えば、高校の時点で理系(物理・化学)クラスに女子が3~4名だとすると、「このような状況下で楽しい高校生活が送れるのか?」「自分が理系を学ぶことができるのか?」と不安を感じ、友人が多くいる文系を選択する人も出てきます。

(2)教師・家族の意見

多様性が重要視される現代においても、まだ「女の子なんだから理系に行かなくても」といった意見が存在します。また教師が何気なく言った「女子は数学が苦手だ」「理工系は長時間研究に没頭する必要があるから大変」といった言葉が女子生徒の進路選択に影響を与えることがあります。また「女性が理系に進むと婚期が遅れる」という考え方をする家族がいれば、理系進学に難色を示すでしょう。(さらに「女性は大学に行かなくてもいい」という意見も存在するほどです。)

自分が理系に進みたいと考えていても、家族や教師からそうした意見を受けると、考えを変えてしまう人もいるでしょう。

 

理系が男ばかりだと何が問題?

次に、理系が男ばかりだと何が問題なのかを考えてみました。

東京工業大学に入学するには高い学力が求められますが、その多くは中高一貫校からの入学者です。しかも、中高一貫校のトップは男子校が多いため、入学者の中には男性が優勢になります。

結果として、中高一貫校出身者は大学でも男性が多い環境に身を置くことになります。そして、就職後も男性が多い研究所などに就職することが一般的です。つまり、中学から社会人に至るまで、女性と接する機会が少ない状況が続きます。

 

まとめ

東京工業大学の女性枠設置の目的として、「学修環境を多様性に富んだ理想的なものに近づけるため」や「より多くの女性科学者・技術者を社会の様々な分野に輩出するため」と説明されています。さらに、「これを起点に波紋が広がり、当大学に限らず社会全体に、真に多様性を受容する環境が育つことを期待する」とも述べています。

同じような背景や経験を持つ人が集まると、類似した発想しか生まれません。しかし、様々な背景や経験を持つ人が集まり、多様な意見に触れることで、将来的なイノベーションの創出につながる可能性があります。今後の日本の発展のためにも「女子枠」設置は必要なのではないかと思われます。

なお、本記事の内容は現時点(2024年5月)のものであり、内容について変更等が生じる可能性があります。

出願に際しては、必ず当該年度の募集要項により最終確認を行っていただきますようお願いいたします。
 
【参考資料】
東京工業大学HP

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