皆様こんにちは!武田塾ひたち野うしく校です。
前回に引き続き、今日は高校時代にできる大学生の就職活動についてお話します。
「理系は文系よりも就職がいい」ということを聞いたことはありますか?
確かに
・文系を選択する人のほうが多い→競争率が高い
・理系なら文系の職種も応募可能
・理系限定職には文系は応募できない(専門的知識が求められるため)
という傾向があるようです。
ただ、一言で「理系」と言ってもその幅は広く、学部学科の選択を誤るとなりたい職種に就けないことも考えられます。
理系学部の職種
まずは理系に進んだ場合の主な職種をご紹介いたします。
①研究職
②開発職
③生産技術職・品質管理職
④技術営業職
①研究職とは
専門性が高く、理系大学院出身者のみの応募となっている企業がほとんどです。大学院時代に身につけた知識や技術が必要とされ、就職活動においても自身の学会発表経験や論文を提出しその内容で判断されることが多いようです。
②開発職とは
研究結果を元に新しい製品を開発する仕事です。開発職は「商品開発」「技術開発」に分けられます。
商品開発:製品やサービスを生み出す
技術開発:製品やサービスを生み出すシステムを開発する仕事
③生産技術職・品質管理職とは
製品が仕上がるまでの工程を設計する仕事です。また生産性を高め、高品質でローコストな製品を製造するために常に改善し提案します。
生産ラインでのトラブルはコスト管理や材料調達など様々です。単に数字に強いだけではなく、他部署と密に連携するというコミュニケーション能力も問われます。
④技術営業職とは
セールスエンジニアと言われることもあります。技術面の専門知識を用いて顧客の課題に向き合うことが主な仕事です。メーカーの技術営業職は、商品の設計、材質など、技術的な説明を行います。また時には営業職に同行してクレームの応対を行ったり、顧客の工場や現場で製品の設置や修理を行うこともあります。
大学卒か大学院卒か~東京理科大学の場合~
卒業後の進路は人によって様々です。難関大学にいくほど大学院に進む方が多い傾向にあり、東京理科大学でもさらなる研究を続けたいとの思いから48.2%の方が大学院に進むようです。
しかしこの48.2%というのは東京理科大全体の統計であって、学部学科によって大きく違います。
今日は東京理科大学GUIDE BOOK 2022を参考に、理系の就職状況について詳しく検証したいと思います。
学科別大学院進学率
(「2020年度 学部・学科別大学院進学率」より抜粋)
大学院進学率の高い学科から順番に並べました。
薬学部 生命創薬学科 96.1% 工学部 工業化学科 90.8% 理工学部 先端科学科80.0% |
理工学部 応用生物科学 76.9% 工学部 機械工学科 70.2% 理学部 化学科 70.2% 工学部 建築学科 64.4% 工学部 電気工学科 63.4% |
理学部 物理学科 58.6% |
工学部 情報工学科 39.3% 理学部 数学科33.6% 理工学部 土木工学科 30.6% 理工学部 経営工学科 28.3% 理学部 応用数学科 24.8% |
薬学部 薬学科2.1% |
進学率が高いのは、
薬学部 生命創薬学科
工学部 工業化学科
理工学部 先端科学科
あたりですね。化学系の学科は8割以上が大学院に行っているようです。
逆に低いのは
理学部 数学科
理工学部 土木工学科
理工学部 経営工学科
理学部 応用数学科
経営学部 経営学科
薬学部 薬学科
です。薬学科が低いのは、そもそも学部で6年間在籍しているという理由が考えられます。
大学卒だとそもそも希望する業種に就職するのが難しいケースも
学部卒業生と大学院(修士)修了生の進路状況を一部抜粋し比較しました。
(左:学部卒、右:大学院卒)
<理学部 物理学科> 進学(58.6%) 情報通信業(13.1%) 機械器具(5.1%) 教育・学習支援業(5.1%) |
<理学研究科 物理学専攻> 進学(18.2%) 機械器具(25.0%) 情報通信業(15.9%)
|
<工学部 機械工学科> 進学(70.2%) 機械器具(12.4%) 情報通信業(5.8%) |
<工学研究科 機械工学専攻> 進学(2.0%) 機械器具(50.9%) 建設業(11.7%) |
<工学部 電気化学科> 進学(63.4%) 情報通信業(13.1%) 機械器具(5.7%)
|
<工学研究科 電気工学専攻> 情報通信業(40.5%) 機械器具(25.0%) 電子部品(7.1%) 電気・ガス・水道・熱供給業(7.1%) |
<理工学部 数学科> 進学(24.5%) 情報通信業(21.5%) 教育・学習支援業(19.6%) |
<理工学研究科 数学専攻> 情報通信業(25.0%) 教育・学習支援業(12.5%) 金融・保険業(12.5%) |
<経営学部 経営学科> 進学(3.2%) 情報通信業(29.3%) 金融・保険業(18.8%) |
<経営学研究所 経営学専攻> 情報通信業(80.0%) 機械器具(20.0%)
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<理工学部 先端科学科> 進学(80.0%) 情報通信業(3.7%) 卸売・小売業(3.7%) |
<理工学研究所 先端化学専攻> 化学工業(37.1%) 機械器具(19.2%)
|
<理工学部 応用生物科学科> 進学(76.9%) 情報通信業(4.7%) 公務員(2.7%) 機械器具(2.7%) |
<理工学研究所 応用生物科学専攻> 化学工業(28.3%) 情報通信業(15.2%)
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希望通りの業種に就職している学科
理学部 物理学科
工学部 機械工学科
工学部 電気化学科
理工学部 数学科
経営学部 経営学科
(※ただし、希望通りの職種で就職しているのかは不明です。本当は開発職で就職したかったのに技術営業になってしまった、ということも考えられます)
希望とは違う業種に就職した学科
理工学部 先端科学科
理工学部 応用生物科学科
これらの学部卒で就職をされた方の業種は、情報通信業が第1位になっています。
もちろん、情報通信業は今とても人気のある職種なので、化学や生物を学んでもそちらに就職したいと考えたのかもしれませんが、そうでないとすると「化学や生物では就職が厳しかった」と考えられるでしょう。
大学院に進む率が80%を超える先端化学科などでは、入学当初から「学部卒では大手化学メーカーに入りにくい」と教授に言われ、早いうちから大学院進学を意識させているようです。
大学院卒の就職先と学部卒の業種が一致=学部卒でも行きたい業種に行っている
ざっくりとした分析ではありますが、その傾向はあるようです。
大学院に行った場合のほうが希望する業種に就いていると考えると、それと一致している学科は希望通りの業種に就いたのではないかと推察できます。
大学院に行く率が低い学科ほど、大学卒で行きたい業種に行っている
経営学科や数学科など、そもそも大学院にあまり進学しない学科の学生は、大学院卒の就職先とほぼ一致しています。その主な業種は情報通信業ですが、企業側も学部卒・大学院卒の隔てなくどんどん採用するということでしょう。
「ものづくり」の分野で活躍するには大学院修了生
大学院に進学する目的は、研究能力を磨き、高い専門性を身につけることです。特に下の表の業界では、専門性の高い職種(研究職・開発職)に大学院修了性が多く採用されています。高度な専門性を身につければ、おのずと就職の選択肢が増えていきます。
2018年3月~2020年3月卒業 修了生データ(博士後期課程を除く)
電気・情報通信機械器具
ソニー、パナソニック、三菱電機、シャープ、日立製作所、富士ゼロックスなど
職種 | 学部卒業 | 大学院修了 |
研究職 | 0 | 44 |
開発職 | 31 | 151 |
はん用機械器具
キヤノン、リコー、ダイキン工業、川崎重工、住友重機工業、クボタなど
職種 | 学部卒業 | 大学院修了 |
研究職 | 5 | 40 |
開発職 | 34 | 125 |
輸送用機械器具
トヨタ、ホンダ、デンソー、日産自動車、日野自動車、マツダなど
職種 | 学部卒業 | 大学院修了 |
研究職 | 4 | 39 |
開発職 | 50 | 107 |
化学工業
花王、日立化成、大正製薬、ライオン、第一三共、住友化学、日本ジェネリック、アステラス製薬、富士フィルム、資生堂、旭化成、ヤンセンファーマなど
職種 | 学部卒業 | 大学院修了 |
研究職 | 20 | 271 |
開発職 | 29 | 88 |
このように、だれもが知っている大企業の研究職・開発職に就職するには、大学院に行って専門的な知識を身につけ、学会などで研究発表をするという実績がないと厳しいようです。
まとめ
自分が将来どのような職種に就きたいのかで、大学院に進むかどうか色々と変わってきます。
もし「研究職・開発職に就きたい」と考えているようなら、大学院進学を視野に入れておき、早い段階でご両親に相談しておくことをおススメいたします。
今回は大学院進学率の高い東京理科大で調べましたが、この結果と、大学院進学率の低い大学とではまた状況が異なってくると思いますので、ご自身が目指す大学がどのようになっているのか、一度パンフレットなどでご確認されたほうがよいかと思います。
今、目の前の受験勉強も大変かと思いますが、将来に繋がる大切なことなので、ぜひ勉強の合間にでもちょっと将来のことについて考えてみてください!