近年、AI(人工知能)などの普及によりプログラミングなど科学技術教育の重要性が再確認されたことで、「STEAM教育」という教育方法に注目が集まっています。
STEAM教育は2000年代初頭にアメリカを中心に広まった教育モデルで、今後21世紀で必要な知識を養うことができるとされています。
今回はこの「STEAM教育」について、似た言葉である「STEM教育」との違いや国内・海外での取り組みを詳しく解説していきます。
今後あたりまえになるかもしれない教育方法なので、ぜひご覧ください。
「STEAM教育」とは?
STEAM教育(スティーム教育)とは
S:Science(科学)
T:Technology(技術)
E:Engineering(工学)
A:Art(芸術)
M:Mathematics(数学)
という5つの教育分野を重要視した教育手法・方針のことを言います。
具体的には、数学や科学技術によって問題解決能力を養ったり、工学や芸術で創造性を育んだりすることを目的としているのがこのSTEAM教育です。
基本的には理数系を中心としているものの、文理に関係なく今後の変化の激しい社会の中で活躍するための人材を育てる教育方法として現在注目されています。
「STEM教育」との違いは?
よく似た言葉として「STEM教育」という言葉もあります。
STEM教育(ステム教育)はSTEAM教育のもととなった教育手法で、芸術(Art)を除いた科学、技術、工学、数学の4つの分野で成り立っています。
STEM教育は2000年代に入りアメリカで科学技術の重要性が見直されたことから、そうした技術者を育てるための教育方針として定められたのが始まりです。
オバマ前大統領が演説の中でSTEM教育の重要性を取り上げたことでも有名になりました。
「STEAM教育」と「STEM教育」の違いは「芸術(Art)」が入っているかどうかのみであり、近年ではより創造性を高めるために芸術を加えたSTEAM教育の方が主流になりつつあります。
ちなみに、芸術(Art)の代わりに応用数学(Applied Mathematics)を加えてSTEAM教育とすることもあります。
こちらはあまり使われることがありませんので、基本的にはSTEM教育に芸術を加えた方のSTEAM教育だと考えておけば問題ありません。
なぜSTEAM教育が重要視されているのか
STEAM教育のもととなったSTEM教育は2000年代初めから存在しており、オバマ大統領の演説で注目を集めるなどアメリカでは以前から重要視されていました。
その後STEAM教育はアメリカだけでなく世界中に広まり、現在では日本でもやっと認知されるようになってきました。
そうした流れを後押ししているのがIT技術の発展、特にAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)といった最新技術の普及です。
現在ではAI技術を搭載した機器があたりまえになりはじめ、今ある仕事のほとんどはAIに奪われてしまうという予測もされています。
このような科学技術中心の変化の激しい社会で活躍できる人材を育成できる教育方法として、STEAM教育が注目されているのです。
国内でのSTEAM教育の取り組み
日本でも近年やっとSTEAM教育が広まりつつありますが、海外に比べるとまだまだ認知度は低く遅れを取っているのが現状です。
現在は文部科学省や経済産業省が中心となって、高校教育などにSTEAM教育を普及させようとしています。
Society 5.0に向けて文部科学省が推進
日本では、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を融合させた社会」として「Society 5.0」というコンセプトの実現を目指しています。
しかし日本は情報技術に関する研究や教育では世界に遅れを取っており、IT関連の技術者が不足していると言われています。
更にGoogleやAmazonといった巨大IT企業も存在しないため、日本は情報化する世界の中で非常に厳しい立場にあるというのが現状です。
そうした現状を解決すべく、高度な専門技術を身に着けた人材を生み出すための教育方針として、STEAM教育が推進されています。
代表例はプログラミング教育の導入
日本におけるSTEAM教育の取り組みの代表例とも言えるのが、やはり公教育におけるプログラミング教育の導入でしょう。
2020年からは小学校でプログラミング教育が必修となったため、ご存知の方は多いかと思います。
やはりプログラミングはAIやIoTといった情報技術の基礎となるため、プログラミング教育は今後必須の科目となっていくことでしょう。
小学校だけでなく高校教育においてもプログラミング教育を取り入れる動きがあり、データサイエンスの基礎となる確率・統計などの分野と合わせて導入される予定です。
また、公教育だけでなく民間のプログラミングスクールなども盛んで、小学生向けのロボットプログラミング教室なども開かれています。
日本のSTEAM教育の課題
しかし、日本のSTEAM教育はいくつか課題も残されています。
まず、プログラミング教育をするためには十分な学習教材やパソコン・タブレット、インターネット環境などのICT環境が必要となります。
現在ではまだまだ学校においてこれらの環境が普及しているとは言えず、プログラミング環境の整備が急がれています。
加えて、教育者の確保も重要な課題です。
プログラミングを教えられる教育者の確保が難しく、小学校のプログラミング必修化においては「教えられるか不安」という声も多かったそうです。
このように日本でのSTEAM教育の環境は十分に整っているとは言えず、これからの発展に期待したいところです。
出典:Society 5.0 に向けた人材育成
初等中等教育における情報教育等の推進
海外でのSTEAM教育の取り組み
海外、特にアメリカでは以前からSTEAM教育に力を入れてきたこともあって、STEAM教育は国家戦略として推進されています。
日本よりもSTEAM教育への認知度が高いためか、様々な機関がSTEAM教育の推進を行っているのが特徴です。
例えば、あのNASAもSTEAM教育関連のプログラムに協力しています。
他には、FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグがSTEAM教育を取り入れたaltschoolという学校の設立に1億ドルを出資するなど、様々な形でSTEAM教育を広める活動が行われています。
シンガポールや中国でもSTEAM教育が盛ん
アメリカの他には、シンガポールも国を挙げてSTEAM教育を推進しています。
シンガポールにはサイエンスセンターという政府が運営するSTEAM教育の組織が存在しています。
このサイエンスセンターではプログラミングやロボット工学を中心に、専門家が高度な授業を行っています。
また、近年IT分野での成長が著しい中国でもSTEAM教育が取り入れられ、主に人工知能関連の教育に役立てられています。
STEAM教育まとめ
STEAM教育は科学、技術、工学、数学を中心としたSTEM教育に芸術を加えた教育方針のことです。
近年の変化の激しい情報化社会に対応できる人材を育成できる教育方法として、国内・海外を問わず積極的に取り入れられるようになりました。
いかがでしたでしょうか。
日本でも文部科学省を中心に推進されはじめているため、STEAM教育は今後様々な場所で見かけるようになるかもしれませんね。