アクティブラーニングとは、もともとアメリカで普及されていた指導方法で、学習者が能動的に学ぶことができるような指導方法のことを指します。
2010年以降から日本でも注目され始めました。
今回はアクティブラーニングの主な学習方法や事例についてご紹介します。
アクティブラーニングとは
大まかにいうと「能動的な学びをする授業」を行うことをアクティブラーニングと言いますが、文部科学省の定めたアクティブラーニングとは少し異なります。
文部省の定めたアクティブラーニングとは「教科等の本質的な学びを踏まえた主体的・対話的で深い学びの視点からの学習・指導方法の改善」のことを言います。
文部科学省は平成29年に公示した「新しい学習指導要領の考え方」にもこのアクティブラーニングを取り入れた指導方法を推進しています。
実際にこのアクティブラーニングは幼稚園を始め、小・中・高等学校など多くの教諭機関で取り入れられています。
アクティブラーニングの目的
アクティブラーニングを推進し、その時代や社会に合わせた指導方法や学習方法で指導をすることで、社会に合った人物の育成が目的となっています。
従って、今の社会で求められている能力や性質を養うことができる内容になっています。
ディスカッションや体験、コミュニケーションを通して学習内容の習得度の上昇と、コミュニケーション能力や、プレゼンテーション能力、思考力、判断力、表現力等の向上を図ります。
アクティブラーニングの学習方法・具体例
主な学習方法としてはディスカッションやコミュニケーションをメインに行います。
アクティブラーニングの具体的な学習方法や指導方法は主に7つあります。
7つの学習方法についてご紹介します。
Think-pair-share
アクティブラーニングの学習方法の中の1つが「Think-pair-share」です。
この方法はグループワークや発言が苦手な生徒でも比較的容易に取り組むことのできる学習方法です。
1、テーマを提示する
2、1人でそのテーマについて考える(Think)
3、ペア(2人組)になる(Pair)
4、お互いに意見交換をする(Share)
5、4~6人のグループで意見交換する
以上のような段階で進められていくのがThink-pair-shareです。
4段階目でお互いの意見を交換して1つの意見を作ります。
このペアワークは短時間で何度も組み合わせを変えて取り組むことができるため難易度は低く、取り込みやすいといえます。
ラウンド・ロビン
ラウンド・ロビンはブレインストーミングの簡易版のようなものです。
ブレインストーミングなので1つのアイデアをその場で深めたり、批判したり、質問したり、評価してはいけません。
「単語」「短い言葉」「熟語」以上の3つで意見を述べます。
1、4~6人程度で1つのグループを作り、テーマ(議題・問題)を提示します。
2、学習者が全員、意見を言い終わるまで続けます。
必要に応じて意見の記録者を作っておくのもいいでしょう。
ラウンド・ロビンは意見や討論の深さよりも、活気とスピードで意見を出し合うことが目的なので、複雑なテーマよりは、簡潔なテーマのほうが有用です。
ジグソー法
ジグソー法は人種差別のせいで学習水準にも差が出てしまったことを解消しようと、アメリカで考えられた学習方法です。
このジグソー法は1つのグループでそれぞれの問題についての意見をお互いに教えあうというグループワークです。
自分のグループで自分の担当する問題を把握し、自分と同じ課題を持つ他のグループの人とグループを作り学びを深めます。
最初のグループに戻って自分の担当した課題について発表しあいます。
1、学習するテーマ(問題)と、そのテーマを更に4~6個に細分化したテーマを提示します。
2、グループ内で各メンバーが担当するテーマを決めて、一度グループを解散させます。
3、細分化したテーマ別にグループを作成し、専門家グループというものを作ります。
4、それぞれの専門家グループで話し合いをして、理解を深め、説明の方法も考えます。
5、一番最初のグループに戻り、自分の担当したテーマを発表しあいます。
この方法は、しっかりと自分の担当したテーマについて理解を深めていないと成立しないグループワークになっています。
最後にクラス全体で発表や討論を行うことでよい理解が深まるでしょう。
Learning Through Discussion
約60分を1つのターンとして行う予習型のグループワークです。
学習者はテーマに沿って事前に理解を深め、予習用の資料内容を理化しながら、ノートを作成します。
予習内容と自分自身や他の意見を関連付けて理解を深めてから、グループワークにて話し合いが行われます。
1、導入(3分)
2、予習課題の内容理解を深めるための軽い説明(20分)
3、テーマと自身、他の知識との関連付け(30分)
4、学習課題の評価、今回の活動の評価(10分)
カッコ内の時間配分は目安です。
以上のようにして、あらかじめ学習してきた内容を軸にグループワークが行われます。
マイクロ・ディベート
通常のディベートよりも短時間で気軽にやることのできるディベートをマイクロ・ディべートと言います。
通常のディベートであれば数時間要してしまうものの、マイクロ・ディベートであれば60分以内で行うことができます。
1、指導者が論題を提示します。
2、各自で肯定・否定どちらかの意見に分かれ、根拠となる理由を5つ以上書き出します。
3、自分の意見とは反対の意見を選んだ場合の理由も5つ以上考えます。
4、3人組を作って、肯定派・否定派・ジャッジの3つの役割をそれぞれができるように3回のディベートを行います。
5、肯定側の意見・否定側の意見をそれぞれ2分程度で述べます。
6、それぞれの反論は1分程度で述べます。
7、自由討論を2,3分行います。
8、判定をした後に、振り返りを3分程度行います。
以上の流れを3回行うと60分もかからずにディベートをすることが可能になります。
最後に、ディベートのまとめとして反論の想定を含めたレポートを2,000字程度で書いて終了です。
ピア・レスポンス
ピア・レスポンスはレポートやプレゼンテーションを準備する段階でお互いに意見を出しあい、改善のヒントを得ることを目的としたグループワークです。
お互いの視点を体験し、考えたうえでフィードバックをしたり、アイデアを述べたりするため、表現力の向上が期待できます。
方法は簡単です。
1、2人1組のペアになり、一人が自分のアウトラインを説明し、もう一人は聞き手になります。
2、聞き手は、相手のアウトラインをしっかり理解、把握します。
3、聞き手は相手のアウトラインのいいところ、直した方がいいと思ったところを伝えます。
4、役割を交代し、同じことを行います。
5、フィードバックを考慮して改善し、このグループワークは終了です。
多人数双方向型授業
多人数双方向型授業は教員と生徒、また、学生間のコミュニケーションを重視し、授業中の意見交換やディスカッションをメインとしたグループワークです。
このグループワークは20回程度の授業を要する大がかりな取り組みになってきます。
1、まず課題別にグループをつくり、5回程度の授業を用いて、自分の課題について個人で調べたり、学びます。
2、10回程度の授業を用いて、各グループがそれぞれ研究内容を発表し合います。
ここで聴講しているグループは自分の担当外の内容を要約し、レポートを作成します。
3、聴講している人は、あらかじめ作成したレポートに、発表で聞いた内容を加えて提出します。
4、発表する際は、最後に質疑応答の時間を設けます。
5、最後に総括レポートを作成し、提出したら終了です。
気軽に取り組めるものから、大がかりなものまで、人数や時間に応じて取り入れることができます。
アクティブラーニングの事例
幼稚園を始め、小学校、中学校、高等学校、大学などでの導入例のあるアクティブラーニングです。
実際に導入した大学の例をご紹介します。
長崎大学
長崎大学では情報セキュリティにまつわる社会問題をテーマにアクティブラーニングが行われました。
15回の授業を10回の座学と5回のグループワークに分けて行われました。
1、グループを作成し、グループ内で討論をします。
2、グループ単位で結論をワークシートにまとめます。
3、最終回の授業で、今までまとめたワークシートをもとにプレゼンテーションとディスカッションを行います。
最終的なまとめは大学のシステムにアップして受講者全員が閲覧できるように設定しました。
大学の場合、国数英理社などの5教科とは違いテーマや課題の設定が比較的しやすく、学習者の興味も引きやすいため、アクティブラーニング用のテーマを設定するのが容易です。
また、長崎大学の場合インプットとアウトプットのバランスがよかったため知識の定着に加え、表現力や問題解決力も養うことができた、という結果でした。
アクティブラーニングまとめ
受動的ではなく、能動的な学習方法でありプレゼンテーション能力向上が期待できるアクティブラーニングについて、その学習内容や事例についてご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。
近年は、学校だけでなく、塾でもこのアクティブラーニングを導入しているところも増えている傾向にあります。
大学受験の方式も変わり、日々変化をし続ける社会。
そんな現社会の「求める人材」になるための能力などを養うことのできるアクティブラーニングは、今後広がってもおかしくありません。
皆さんも一度、アクティブラーニングを体験してみてはいかがでしょうか。