さまざまな事情で高校へ進学せず、現在の最終学歴が「中卒」になっている人は意外と少なくありません。
今は中卒でも、将来を考えて大学受験したい、大学を卒業したいという方でも大学を受験することはできるのでしょうか?
実は、中卒でも大学受験ができる方法がいくつか存在します。
今回は、いくつかある方法の中から、主に「高卒認定試験」についての情報を詳しくご紹介していきたいと思います。
高卒認定試験以外で大学受験する方法や、高卒資格、大検に関しても解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
中卒から大学受験をする方法
さっそく、中卒から大学受験をする方法をご紹介します。
中卒の人が大学を受験する方法は以下の4つです。
- ①高卒認定資格の取得
- ②入学資格審査へ合格
- ③定時制・通信制高校を卒業
- ④通信制大学の特修生・履修生制度を利用
それでは順番に解説していきましょう。
①高卒認定資格を取得する
まずは、高卒認定資格を取得するという方法。中卒から大学受験に挑戦する人の多くがこの方法を取っています。
高卒認定資格とは「高卒者と同程度の学力である」ということを認める国家資格で、文部科学省が実施する「高卒認定試験」に合格することで取得できます。
2023年8月3日・4日に実施された令和5年度第1回卒業程度認定試験では、8,290人が出願し、3,948人が試験に合格しています。
参考:文部科学省「令和5年度第1回高等学校卒業程度認定試験実施結果」
このうち、中卒者は397人で全体の約9.8%を占め、中卒からでも高認試験に合格できることがわかります。
最もメジャーかつ最短で大学受験できるこの高卒認定資格試験の方法については、このあとの章で詳しく解説していきます。
②入学資格審査に合格する
高卒認定資格を取得する以外にも、大学が実施する入学資格審査に合格するという方法もあります。
高卒者や大卒者と同程度の学力を有しているかを大学側が判断するための審査で、合格できれば大学受験ができます。
個別の入学資格審査は、基本的に各大学の規定に従って行われます。
東京大学であれば、提出書類などをもとに高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められるものについて、大学受験を許可しています。
参考:東京大学「個別入学資格審査 | 東京大学」
横浜国立大学では、18歳以上で専門学校など学校教育法第1条の学校(1条校)以外の学校で3年以上の学習歴があり、74単位相当以上の単位を取得していることなどが条件となります。
参考:横浜国立大学「入学資格個別審査(学部入試) - 入試・入学 - 横浜国立大学」
このように、各大学で条件は異なるため、志望大学の情報は事前に確認しておきましょう。
③定時制・通信制高校を卒業する
中卒者でも入学可能な定時制や通信制の高校を卒業すれば、大学受験をすることができます。
朝から夕方にかけて勉強を行う全日制高校とは異なり、主に夕方以降の時間帯に勉強を行うのが定時制高校です。
東京都であれば、都立飛鳥高等学校や都立浅草高等学校、都立江戸川高等学校など数多くの定時制高校が存在します。
通信制高校は基本的に学校に通う必要がなく、郵送やパソコンなどを活用して単位を取得していくスタイルの学校です。
通信制高校の中には、3つ以上の都道府県の生徒を募集対象とする広域通信制高校もあり、茨城県太子町にあるルネサンス高等学校や、北海道深川市にあるクラーク記念国際高等学校、沖縄県うるま市に本校を置くN高等学校などがあります。
定時制・通信制ともに、さまざまな事情で全日制高校を卒業していない人たちが集まるため、年齢もバラバラで働きながら通う生徒も少なくありません。
④通信制大学の特修生・履修生制度を利用する
通信制高校があるように、実は大学にも通信教育課程が設けられている場合があります。
学びのスタイルは概ね通信制高校と同様です。
一般的な通学制大学と同じく、受験するためには高卒資格が必要ですが、中卒者や高校中退者に対して入学を許可するための特修生・履修生制度というものがあります。
特修生・履修生制度を活用している大学として、京都芸術大学芸術学部の通信教育部、近畿大学の通信教育部(法学部法律学科)、サイバー大学、東京通信大学、明星大学通信教育課程などがあります。
しかし、通信制大学自体が少ない上に特修生・履修生制度がある大学となるとかなり限られるので、気になる大学については事前にチェックしておきましょう。
高卒認定試験について
ここからは、中卒から大学受験をするための最もメジャーな方法である高卒認定試験について詳しく解説していきます。
高卒認定試験自体は16歳以上で高校を卒業していなければ誰でも受験が可能です。
高校生も受験は可能ですが、全日制高校に通学している場合は学長の許可がなければ受験できません。
加えて、合格すればすぐに認定されるという訳ではなく、満18歳になった誕生日から合格の効力が生じ、満18歳でなくとも大学入試を受験する年度内に満18歳になる予定であれば、大学入試の受験資格を得ることができます。
試験概要と試験科目
試験内容は4択のマークシート方式です。
すべての科目の中から8科目に合格すれば高卒認定となります。
国語、数学、英語は必修となっていますが、地歴公民と理科はいくつかの科目の中から自分の得意な分野を選ぶことができます。
教科 | 試験科目 | 科目数 | 要件 |
---|---|---|---|
国語 | 国語 | 1 | 必修 |
地理歴史 | 世界史A、世界史B | 1 | 2科目のうちいずれか1科目必修 |
日本史A、日本史B | 1 | 4科目のうちいずれか1科目必修 | |
地理A、地理B | |||
公民 | 現代社会 | 1または2 | 「現代社会」1科目または「倫理」及び「政治・経済」の2科目 ※いずれか必修 |
倫理 | |||
政治・経済 | |||
数学 | 数学 | 1 | 必修 |
理科 | 科学と人間生活 | 2または3 | 以下の①、②のいずれかが必修 ①「科学と人間生活」の1科目と「物理基礎」、「化学基礎」、「生物基礎」、「地学基礎」のうち1科目(合計2科目) ②「物理基礎」、「化学基礎」、「生物基礎」、「地学基礎」のうち3科目(合計3科目) |
物理基礎 | |||
化学基礎 | |||
生物基礎 | |||
地学基礎 | |||
外国語 | 英語 | 1 | 必修 |
出典:文部科学省公式HP 高等学校卒業程度認定試験 試験科目・合格要件・出題範囲
試験は年に2回(8月上旬と11月中旬)実施されますが、1回の試験で8科目すべてに合格できなくても大丈夫です。
最終的に8科目合格できれば高卒認定となるので、一度に8科目も勉強するのが辛いという場合には2回に分けて合格を狙うこともできます。
難易度と合格率
高卒認定試験は各科目ごとにA、B、Cという三段階の評価が出されます。
Aは100~80点、Bは79~60点、Cは59点~合格最低点という割り振りになっており、合格最低点は大体40点くらいだと言われています。
合格最低点は毎回変動するため40点あれば絶対に合格できるとは言い切れませんが、50点取れば合格の可能性はかなり高く、60点ならほぼ確実に合格できると言っても過言ではないでしょう。
合格率は40%前後と言われており、この数字だけを見るとかなり難易度が高いように感じてしまうかもしれませんが決してそんなことはありません。
高卒認定試験は最終的にすべての科目に合格すれば良いため、1度の試験で8科目すべての合格を目指さない人も多いためです。
また、出題される問題は中学卒業から高校1年生程度のものなので、特別難しいということはありません。
内容も基礎的なものが多くマークシート方式となっているため、しっかりと勉強すればそこまで合格は難しくないと言えるでしょう。
「高卒資格」と「大検」
大学受験をする場合においては高卒認定試験に合格し「高卒認定」を受けるだけで問題ありませんが、普通に高校を卒業して得られる高卒資格と高卒認定は根本的に違います。
高卒認定はあくまでも「高校卒業程度の学力がある」と認定するものであり、高卒認定を受けたからと言って最終学歴は中卒のままで高校卒業になるわけではありません。
ただ、高卒認定でも就職において高校卒業と同等に扱うという企業もたくさんあります。
高卒認定はかつて「大学入学資格検定制度(旧大検)」という名前でしたが、大学入試だけでなく就職の場や資格取得でも活用できるようにと現在の名前に変更になりました。
高卒認定をどのように扱うかは企業によって様々ですが、就職の場でも役立つことがあるということは頭に入れておきましょう。
旧大検との違いは以下の2点です。
- 受験資格から中学卒業という部分が削除された
- 家庭科が必修ではなくなった
こうした違いについても、しっかりと把握してくとよいでしょう。
中卒から大学へ!
ここまでご説明いたしました通り、高卒認定試験に合格すると中卒であっても大学受験が可能となりますが、中卒から大学受験をすることにどのようなメリットや注意すべき点があるのでしょうか。
ここからは、中卒から大学受験をするメリットやデメリットについて詳しく解説します。
中卒から大学受験をするメリット
中卒から大学受験をするメリットは以下の3点です。
- 学士を取得すれば就職の幅が広がる
- 生涯年収が上がりやすい
- 専門的な学びが得られる
やはり、最終学歴が中卒から大卒になるだけで将来の幅が広がったりと、魅力的なメリットが多く考えられます。
メリットについてもう少し細かく見ていきましょう。
就職の幅が広がる
1つ目のメリットは、大学受験のチャンスが得られて就職の幅を広げられることです。
高卒認定試験を受けて大学入試に合格して大学を卒業すると、履歴書の最終学歴が中卒ではなく大卒になります。
教員などの一部の職種は、大卒でなければ資格を取得できず、医師や歯科医師、薬剤師などは大学だけではなく大学院も修了しなければ、資格を取得できません。
大卒の資格が取得できれば、中卒で就職活動を行うよりも、より希望の職種に就職しやすくなります。
生涯年収が上がりやすい
2つ目のメリットは、生涯年収を上げやすくなることです。
生涯年収とは、学校卒業後から60歳までフルタイムの正社員で勤務を続けたときに得られる賃金の合計(退職金を含む場合もある)です。
【生涯年収】
男性 | 女性 | |
---|---|---|
中学卒 | 1億9,400万円 | 1億4,610万円 |
高校卒 | 2億500万円 | 1億4,960万円 |
高専・短大卒 | 2億960万円 | 1億7,2500万円 |
大学・大学院卒 | 2億6,190万円 | 2億1,240万円 |
出典:労働政策・研修機構
中学卒と大学・大学院卒の賃金格差は、男性で6,790万円、女性で6,630万円もあるため、中卒のままでいるよりも高卒認定資格を取得して大学に入り、卒業したほうが生涯年収を増やせます。
専門知識を深く学べる
3つ目のメリットは、専門知識を深く学べることです。
高校までの学習では、幅広い科目を学びますが一つひとつの科目の内容を深く学ぶものではありません。
一方、大学では自分が興味を持っている分野についてより深く学べます。
たとえば、高校では「化学」はひとまとめにされて教えられますが、大学に入ると分析化学・合成化学・高分子化学・生物化学などのように専門分野ごとにより深く勉強できます。
大学の学部での研究で物足りなければ、大学院でさらに深く研究することもできるでしょう。
自分の興味関心がある分野について徹底して学びたいのであれば、高卒認定資格を取得して大学に進学したほうがよいでしょう。
中卒から大学受験をするデメリット
先ほどは、就職の幅が広がる点や生涯年収を上げやすくなる点、専門知識を深く学べる点など中卒から大学受験をするメリットについて解説してきました。
しかし、残念ながらデメリットも存在します。
メリットだけではなくデメリットも理解することで、今すぐに大学受験を目指し、大学に通うのか、もう少し後に大学受験を目指すのか、現在の環境にあわせて検討することができるでしょう。
ここからは、中卒から大学受験をする際のデメリット・注意点について解説します。
中卒から大学受験をするデメリットは以下の3点です。
- お金がかかる
- 大学受験のための勉強は必要
- 大学卒業までは時間がかかる
お金がかかる
大学進学で一番のネックとなるのはお金で、合格発表から1~2週間以内に収めなければならない入学金や授業料、施設設備費などを用意しなければなりません。
入学金や授業料、初年度納付金は以下のとおりです。
入学金 | 授業料 | 初年度納付金*1 | |
---|---|---|---|
国立大学 | 282,000円 | 535,800円 | 81万7,800円 |
公立大学 | 382,631円 | 534,431円 | 91万7,062円 |
私立大学 | 259,890円 | 971,664円 | 162万2,634円 |
*1)私立大学は施設設備費を含む
参考:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」
旺文社 教育情報センター「2023年度 大学の学費平均額|旺文社教育情報センター」
国立大学の4年間の学費は約242万円、公立大学は約252万円、私立大学で約414万円となります。
大学進学にかかる費用は、決して安い金額とは言えないため資金計画や4年間で通いきれるかなどを慎重に判断して大学受験に臨む必要があるでしょう。
受験勉強のための時間が必要
次にネックとなるのが受験勉強にかなりの時間が必要だということです。
高校卒業認定は、あくまでも高校卒業と同等の資格であり、大学を受験するための最低限の条件をクリアしたにすぎません。
大学受験に合格し、4年間を経て卒業しなければ高卒認定を取った意味は半減してしまいます。
つまり、高卒認定に合格するための勉強と大学受験に合格するための勉強という2つの勉強をする時間が必要となるのです。
高卒認定に合格する他の勉強は、取得する単位やその人の状況によってかなり異なりますが、大学受験の勉強については一般的な目安があります。
一般受験で大学合格を目指す受験生(現役高3生・9月)の平均勉強時間は1日平均4.5時間とされており、受験直前期の12月には1日平均5.4時間の勉強時間を確保しています。
大学に入るためにはかなりの時間を確保しなければならないことがわかります。
大学卒業まで時間がかかる
最後のネックは、卒業するまで4年かかってしまうことで、たとえば、20歳で高卒認定資格を取得して同年に合格したとすると、卒業するころには24歳になっています。
働きながら大学に通うこともできますが、大学で勉強する時間が少なくなれば思うように単位を取りにくくなるため、卒業までより長くかかるかもしれません。
長くなった分だけ学費も必要となるため、なるべく最短の4年間で卒業したいところです。
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高卒認定試験の難易度は中1〜高1程度といわれているため、基礎から学んでいけば着実に合格可能です。
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中卒から大学受験するためには?|まとめ
中卒から大学受験をするためには高卒認定試験を受けて高卒認定資格を取得するのが最もおすすめです。
試験自体は簡単で1度に全ての科目に合格する必要もないので、コツコツ勉強すれば合格は難しくないでしょう。
しかし、その後に大学受験をするとなると結局高校3年間分の勉強をしなくてはなりません。
予備校などを利用しながら勉強していけば逆転合格は可能ですので、ぜひ諦めずに頑張ってみてはいかがでしょうか。