皆さんは実際に出題される数学の入試問題がどのようなものか見たことありますか?
「志望校は決まっているけど過去問を解くのはまだ早いかな 」、「入試問題って何を聞いてくるかわからない 」
しかし、数学の入試問題は確かに難しい問題であったり、時間的な制約が厳しい問題、計算が大変な問題など多種多様ですが、「公式を証明させる入試問題」というのが難関大を始め様々な大学で出題歴があります。公式は少なくとも一度学校の授業で触れている分、その証明過程を理解していれば、実際に「公式を証明させる入試問題」が出題された時に、他の公式暗記だけしている受験生に大きなアドバンテージとなりえます!
今回は公式の証明を出題した大学とその内容について紹介し、日々の勉強でいかに原理を理解することが点数に直結するのかを理解していただければと思います!
ただし、本稿は旧課程の学習指導要領に準じており、一部現行と異なる可能性がありますのでご了承ください。
数学Ⅰ
数学Ⅰの内容は数と式、集合と論理、二次関数、図形と計量、データの分析などが範囲です。
正弦定理を述べ、それを証明せよ。
[2008年 順天堂大学 医学部]
順天堂大学医学部からの出題です。この証明問題は前問に「円周角と中心角の定義を書き、その関係を述べよ」という中学範囲の数学からの出題があったのが特徴的でした。シンプルな問題文ながら、正弦定理という普段馴染みのある公式でもその証明をさせるというと、盲点を突かれるような問題だと思います。
同様に、余弦定理からも
という出題があります。余弦定理の証明は青チャートや基礎問題精講などの網羅系参考書で紹介されているので、しっかり学習できている人はどこかで見たことあると思います。
有名な解き方ですとベクトルを使ったり、座標に帰着させたり、図形的に処理する方法などがあると思います。重要なのは証明できる手段を数多く持ち合わせることで、特に図形問題を、文字が少なくなるように座標に置き換えることは、証明問題以外でも重要な解法になってきます。
数学Ⅱ
数学2の単元としては方程式・式と証明、図形と方程式、三角関数、指数対数関数、微積分が範囲となっています。公式証明入試問題としては図形と方程式、三角関数の問題からの出題が多いです。まずは相加相乗平均の公式から、
(1)0以上の2数α、βに対して、相加平均α+β2が相乗平均√αβ以上である事を証明せよ。
(2)a1,a2,a3,a4が正の整数であるとき、a1+a2+a3+a44≧4√a1a2a3a4が成り立つことを証明せよ
[(1)2009年 三重大学、(2)1964 京都大学]
三重大学と京都大学の入試問題で相加相乗平均の証明問題が出題されました。実は相加相乗平均はn個の変数においても成立します。つまり、自然数nにおいてa1>0,a2>0,...an>0とするとき、a1+a2++an
√a1a2...an
が成立する(等号成立はa1=a2...=an)。
という関係があります。
続いて三角関数に関しては、東京大学より、
(1) 一般角θに対してsinθ,cosθの定義を述べよ
(2) (1)で述べた定義に基づき、一般角に対してα、βに対して
sin(α+β)=sinαcosβ+cosβsinα
cos(α+β)=cosαcosβ+sinαsinβ
を証明せよ。
[1990年 東京大学]
という入試問題が出題されたことがあります。これは伝説の入試問題と言われるほど、当時の大学入試界に衝撃を走らせるものでした。加法定理は語呂合わせで暗記している人が多く、その証明をさせる入試問題はまさに盲点だと言えるでしょう。
他にも、三角関数からは多くの出題があり、
正弦、余弦の加法定理を用いることにより、次を示せ、ただしα>0、β>0、α+β<π2とする。
tan(α+B)=tanα+tanβ
1−tanαtanB
[2020年 お茶の水女子大]
cos2θ、cos3θをcosθの式として表せ。
[2023年 京都大学]
三角関数の加法定理またはド・モアブルの公式を用いて任意の角度θに対して次の等式を証明せよ
sin3θ=3sinθ+4sin3θ
cos3θ=4cos3θ−3cosθ
[2005年 熊本大学]
三角関数の加法定理を用いて次の公式を証明せよ
sin+cos=2sinα+β
2cosα−β
2
cosα+cosβ=2cosα+β
2cosα−β
2
[1987年 鳥取大学、1969年 京都大学]
m,nは自然数とする三角関数の加法定理を用いて、等式
2{cos(m−n)x−cos(m+n)x}
が成り立つことを示し、さらに次の積分Im,nを求めよ。
Im,n=∫−π
π
sinmxsinnxdx
[1978年 京都大学]
定数a,bに関してa2+b2≠0を満たし、asinθ+bcosθで表される時、
asinθ+bcosθ=√a2+b2sin(θ+α)
(cosα=a
√a2+b2,sinα=b
√a2+b2)の形に変形できることを証明せよ。
[2011年 佐賀大学]
xy平面において、点(x0,y0)と直線ax+by+c=0の距離dは
d=[ax0+by0+c]
√a2+b2
である。これを証明せよ。
[2013年 大阪大学]
という出題があります。複雑な公式ですので、原理をしっかり復唱できる人は少ないのではないでしょうか?教科書等では平行移動を駆使して証明していましたが、ベクトルを用いると比較的容易に証明が可能です。ただ、三角関数とは異なり、試験中に証明することは大変なので、原理を理解出来たら基本的には大丈夫です。
微積分からは平均変化率から微分の定義を問う問題もあり、センター試験2015でも微分の定義式から微分係数を求める問題の出題歴がありましたが、
次の等式を証明せよ。
(1) ∫α
β
(x−α)(x−β)dx=−1
6(β−α)3
(2) ∫α
β
(x−α)2(x−β)dx=−1
12(β−α)4
(3) ∫α
β
(x−α)2(x−β)2dx=1
30(β−α)5
[(1)2007年 岡山大学、(2)2006年 熊本大学、(3)1989年 九州大学]
と1/6公式の証明が出題されています。どれも丸暗記になりがちな公式ですよね!
特に理系難関大受験生は1/6公式の一般化として「β関数の積分公式」に関する問題が出題される可能性があります。ぜひ一度目を通してみてください!
数学B
数学Bは数列とベクトルが出題されることが多いです。どの分野も苦手な人が多いと思いますが、公式の丸暗記になっていないでしょうか?まずは平面ベクトルから、
⃗AB=⃗p、⃗AC=⃗qとするとき、△ABCの面積は
1
2√|⃗p|2|⃗q|2−(⃗p・⃗q)2
に等しいことを示せ。また、⃗AB=(x1,y1)、⃗AC=(x2,y2)とすると、△ABCは同時に、
を満たすことを証明せよ。
[前半:2000年 九州大学 後半:2008年 和歌山県立医科大学]
ベクトルを用いた三角の面積を求める公式です。この公式は数学1で学習した三角比を用いた三角形の面積の公式から証明できますが、数1の方の証明もできるようにならなくてはなりません。
続いてベクトルのパラメータ表記に関して、
(1) 平面内で3点G,P,Qが同一直線上にあるための条件を述べよ。
(2) 空間内で4点G,P,Q,Rが同一平面上にあるための条件を述べよ。
[1997年 九州大学]
入試問題でベクトルの問題を解くときには基本的な事項であっても、丸暗記している場合が多いと思います。
また、数列に関しては特に 公式からの出題が多いです。
(1) 等式 ∑k=1
n
k=n(n+1)
2を証明せよ。
(2) 和12+22+...+n2をnに関する多項式で記せ。また証明も記せ。
(3) 和13+23+...+n3 nに関する多項式で記せ。また証明も記せ。
[(1)2006年 佐賀大学、(2)~(3)2010年 九州大学]
(1)初項a,公差dの等差数列[an]に関して、
a1+a2+...+an=n(2a+(n−1)d)
2
となる事を証明せよ。
(2)(i)nは自然数とする。この時、
1−xn=(1−x)(1+x+...+xn−1)
が成り立つことを数学的帰納法を用いて証明せよ。
(ii)初項a,公比rの等比数列[an]に関して、(n=1,2,3...)
a1+a2+...+an={na(r=1のとき)
a(1−rn)
1−r(r≠1のとき)
となることを証明せよ。
[2009年 佐賀大学]
まとめ
いかがでしょうか?予想以上に公式を証明させる入試問題が出題されていることが分かりましたね!
日々の数学の学習の中で、「なぜそうなるのか」を常に意識しながら勉強することによって始めて獲得できます。また、今回紹介した問題の出典は難関大が数多く占めています。
もし、1つでも志望大学からの出題があったら、過去問を通じて傾向の把握を確かな物にしていきましょう。
今回の記事を通して、これを見てくださった受験生の今後の勉強の指針となっていただけると幸いです。
無料受験相談受付中!
志望校の話、文理選択、科目選択、勉強方法などなど
入塾の意思を問わず、どんな悩みや相談にも無料でお応えします!!
「何から始めればいいかわからない」
「勉強の仕方がわからない」
「全然成績が上がらない」
という方は、ぜひ受験相談にお越しください!